戦略
「タッちゃん……だよね?」
隣で茫然としたように呟いているのは希望学校の生徒。
私の名前は闇空帆野歌。魔法学校の生徒会長。
エリカが必ず舞羽珠夜を説得して柘榴神を目覚めさせてくれるってあのヤバいひ……虹蝶みゆに言われたから、印象操作を使ってで隠れて様子を見ていたけれど、流石にこれは介入していいはず。
今は暴走している柘榴神を誤魔化して攻撃を散らしている状態だけれど、いつ魔法が解けるか……
この場にいるのは私にエリカに日生蓮、それから死にかけの虹蝶望初と、救援に駆けつけた希望学校の生徒が一人。
エリカだけなら連れて離脱できる。日生蓮も見た感じ強そうだったし、自分で何とかしてくれるだろう。
問題は瀕死と生徒。虹蝶望初は置いていくべきな気がするね、どうせすぐ死ぬだろうし。この生徒の戦闘力は未知数だ。ある程度自分の身を守れるなら連れていけるだろうけど、今はそれを確かめている余裕もない。
私のそばにいたいって無茶言ってた帆傘を気絶させて正解だったわね。
「生徒会長、すみません。少し疲れまして……」
エリカの言葉に、私はエリカにかけていた印象操作を解いた。エリカは優しい、あんな冷酷なセリフを思いつくわけがない。なのに境遇が近いってだけで虹蝶みゆはこの役をやらせるように命じてきやがった。
だから印象操作でいろいろ援護してたわけだけど、この方法だとエリカにも疲労がたまる。連れていけるか?いや、エリカだけは連れて行こう。
固有魔法を二つも操るエリカはかなりの戦力になるはずだ。
いつから私はこんな薄情になったのだろうか?帆傘とまた仲良くなれて、それ以外はどうでもよくなっちゃったのかも。
まあ、いい。嫌われ者の役には慣れているから。
「エリカ、辛いかもしれないけれどついてきて。日生蓮、あなたなら離脱できるから一人で走りなさい。虹蝶望初は諦めて。あなたは勝手にして。印象操作!」
適当に指示を出して、私はエリカの手を握った。
「は、はい。分かりました」
印象操作の影響で今のエリカには私が恐ろしい怪物か権力者に見えているはず。だから、逆らえない。
それから他三人の存在感を強めて私たち2人の存在感は弱めた。悪いけれど残りのみんなには囮をやってもらう。
冷静に考えなくても最低な行為だと分かるが、戦争中ならこんなもんでしょう?
「ちょ、え……あっ、超級魔法、水属性、蒼海乱舞!」
狙い通り、枝はほか三人を襲い始めた。ありがたく離脱させてもらった。
「え……」
私、星月夜翡翠は空を見上げていた。何か青いような、白いような、そんなものがたくさんが降ってきていた。それは雪のようにゆっくりと落ちてくる。
ふと天花様を見た。天花様は私の意図を察してか首を横に振った。雪系といえば天花様だと思ったんだけどな。
「そもそも無理にでも琴羽とかいう奴に戦わせればよかったんですけどぉ」
「うるさ、勝手に暴れといて何?」
セーラさんと謀さんが本格的に戦い始めた。結構激しい。
なんか申し訳ないけど、潰しあってくれるのは普通にありがたいな。
「これは、攻撃なのですか?」
幽依先輩が訝し気に空を見上げている。ふと見ると、明里先輩が無事に復活していた。セーラさんの注意が逸れたからか?とりあえずよかった。
「よく、分からないわ。あれ……羽?」
明里先輩が降ってきたもののうちの一つを手で捕まえた。希望学校で鳥なんて見たことがないけれど、どうして羽が?
「あっ……」
明里先輩が慌てた様子で羽を捨てた。
次の瞬間、羽を持っていた明里先輩の腕が消えた。まるで空気に解けるかのように。
「固有魔法、無属性、超治癒回復」
すぐさま治療されたからいいけれど。この羽、そんなに危険なの!?
「白魔結晶」
羽の危険に気が付いた天花様が私たちの頭上から羽を散らしてくれる。
「私たちも降ってくる羽に触れていたのです。おそらく、短時間なら問題ない……戦いで動き続けてたから無事なのですね」
今までも羽に当たっていたわけだし、降ってきたのが触れるレベルの時間なら大丈夫なのかも。よく見ると、羽は地面に落ちたら消えてるし。少し警戒しておけばあんまり脅威じゃないみたい。
そう言えば、この羽はいつから降っていたんだろう。結構透明だし、魔法に混ざっちゃってたし、全く気が付かなかったよ。
とりあえず問題はなさそうだし、羽は定期的に散らせばいいか。謀さんとセーラさんが争っている間に世界への反逆者の拠点の奥を目指すべきだよね。
でも、その前に呪莉さんがどこに行ったのか……
あれ……?
へたり込んじゃって動けなかった呪莉さん。
長時間触れていると体が消えてしまう羽。
頭の中で点と点が繋がった気がした。でも、そんなのって……?
呪莉さんがこんな簡単に……どこかに呪莉さんは隠れているはず、見つけなきゃ。
「呪莉さん!!」
返事を求めて、私は叫ぶ。
「あなたさ、分かってるんでしょう?」
天花様がそう言った。
「何のことでしょうか?」
私は笑顔でそう答えた。この時の私の笑みはすごく引きつっていたと思う。
救いを求めて幽依先輩と明里先輩を見る。でも、2人はただ俯いただけだった。
「絶対に呪莉さんを見つけますから。そしたらみんなで世界への反逆者を倒しましょう」
私は今、すごくやる気がある。なんだってやってやる。どんな困難だって実現させるんだ。
「面白いことになってるナ☆椿様も混ぜて貰いたいんだゾ☆」
だけど、そんな声が聞こえてきた。新たな脅威が現れたっぽい。
呪莉さんを倒すためにも迅速に、倒さないとねェ!




