治療不可
魔法を撃って、撃って、撃ちまくって。
それなのに……
私、星月夜翡翠は疲労と焦りを感じていた。呪莉さんの方に行かなきゃいけないから、セーラさんはさっさと仕留めなきゃいけないのに。霊魂制御で気配を探っているけど、セーラさんが倒れる気配はない。強すぎません?
「舐めてもらっちゃこまるんですけどぉ」
それどころか、さらに速くなったセーラさんが魔法の中から脱出してきた。なんか、禍々しくもなった気がする。
そのままセーラさんは明里先輩に襲い掛かっていく。回復役から潰そうってことだね。明里先輩なら大丈……
「えっ……?」
明里先輩が攻撃を受けた。その右半身はほぼなくなっていた。断面から溢れる血しぶきは止まらない。明里先輩が治療の魔法を使っているにも関わらず、だ。
おかしい、いつもならすぐ治っているはず。
これが、セーラさんの力?治療不可の攻撃?治癒魔法の使い手はほぼいないから、使いどころが限定的すぎるけど、ものすごく厄介だ。だって、明里先輩は攻撃を避けなかったから。治療できるから。なのに、治療できない。そうすると、確実に一撃が決まる。
でも、最初に受けた怪我は治せてたよね?だとすると、攻撃を受けたことによってセーラさんが纏った禍々しい気配が原因か。
とにかく、今のセーラさんは何ができるのか分からない。明里先輩の無事を祈りつつも、自分が攻撃を絶対に受けないようにしないと。
セーラさんが次に狙ったのは天花様だった。だから、天花様とセーラさんの間に出来るだけ多くの結界を張った。
それじゃあダメだった。
「何これ、甘すぎるんですけどぉ」
セーラさんが結界の後ろまで回り込んだ。私は結界を解除した。天花様の回避動作の邪魔になってしまう。
「固有魔法、魔法屋店主、蝶ノ舞」
天花様は魔法で回避していく。そのまま、どこかへ誘導するかのように移動していった。
「絶対零度」
ある程度移動したところで天花様は魔法を発動し、飛び上がった。セーラさんは魔法を防ぐことなく突っ込んだ。しかし、視界が悪くなっていたため天花様が飛び上がったところまでは見えていない。そのまま正面に攻撃を仕掛ける。
え、私は何で見えてるのかって?見えてるわけないよ、ただ霊魂制御で気配を探ってるだけ。
「はぁ!?」
その先にいたのは謀さんだった。同士うちの状況を作り上げたのだった。流石過ぎる……
「……」
謀さんが怒ったのを感じた。私たちそっちのけでセーラさんに算盤を投げつけまくっている。
「そっちがそこにいるのが悪いんですけどぉ。まあ、戦えれば誰でもいいのでぇ」
セーラさんも怒ったのか、それともヤケになったのか、謀さんに殴りかかっている。
今のうちに呪莉さんと明里先輩を。
「アカリン、しっかりするのです」
明里先輩のそばで、幽依先輩が懸命に声をかけていた。
それなら一旦呪莉さんに。
あれ、呪莉さんどこ行った?
……状況は思ったよりもさらに、さらにまずいことになっているのかもしれない。




