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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
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魔法学校にて

 私の名前は闇空帆野歌(やみそら ほのか)。魔法学校生徒会長。

 嫌われ者で、役立たずで、生徒からの不満も多くて、戦いも弱くて、みんなを引っ張る力もなくて、固有魔法も持っていない、運動もできない、頭も悪い、生徒会内でも嫌われていて、勝負じゃ必ず負けて、大したことなくて、うざったらしくて、頭おかしくて、ものすご〜く雑魚で、この世で1番なクズで、人類に含めたら全人類が可哀想な感じで…………

 アハっ!!完ぺきじゃぁないかぁ!!

 私は大天才なのではないかぁ!!

 完璧すぎて笑えてくる。まるで満月のように、欠けたところが無い!!

 全てが理想通りすぎる!!


 はずだった…………


 あいつと出会うまでは。


「あら、そこにいるのは帆野歌たんかしらぁ!アハぁ、そんな嫌そうな顔するのは失礼じゃないかしらぁ?」

 彼女の名前は強護(ごうもり)。下の名前は不明。濃い緑色の髪をした、萌葱の瞳を持つ少女。

固有魔法、魔力防護を持つ。自分にかかる魔力、かかった魔力も打ち消すというものだ。かなり強力であるため、たいていの魔法は彼女の前では何も無いに等しい。

 つまり、私の魔法が効かない存在、『魔法学園』唯一の存在なのだ。

 私の固有魔法は印象操作。嫌われ者の雑魚生徒会長であるという印象を魔法学校の生徒全員に植え付けている。

 しかし、彼女には私の魔法が効かなかった。私の魔法では彼女に及ばなかった。だから、彼女には私の本性がバレてしまっている。

「帆野歌たん、唯一秘密を共有できる友達として〜色々相談に乗ってあげてもいいのよぉ!」

 喋り方からして悍ましい。嫌悪感を覚える。

「お前に話すことはネェよ」

 だから思いっきり突っ放して、さっさと立ち去ろうとした。

「ひどいのかしらぁ。傷ついちゃうのよぉ。消せるのは魔法だけで、言葉は専門外なのよぉ。おっとぉ、逃げるのは無駄なのよぉ。あなたの悪ぅい噂の中で、運動ができないということだけは本当なのだ、ってことを私は知っているのよぉ?」

 バレてる。マジで運動は苦手。徒競争したら誰にでも負ける自信がある。だから私は大抵の場合自分は現地に行かない。そこにいる人たちに私がそこにいるという印象を与えるだけなのだ。しかし、彼女にはこの手が通じない。

 つまり、絶体絶命。

 頑張って、無駄でも頑張って、走るしかないのだ。

 時間稼ぎのために、無駄でも頑張って、魔法を放つしかないのだ。

「超級魔法、水属性、蒼海嵐舞!」

 激しい水の流れを生み出す。普通なら、これで相手を倒す、せめて時間稼ぎは余裕でできる威力。相手が雷属性ならちょっと話は別だが、彼女は別に雷属性ではない。

 しかし、彼女は普通ではないのだ。改めて実感させられる。

「あらあら、帆野歌たんついに奇行に走るようになっちゃったのかしらぁ?こんなの時間稼ぎにすらならないのは分かってるかしらぁ?固有魔法、無属性、魔力防護、なのかしらぁ!」

 魔法がかき消された。

 それでも、捕まったらどうなるのか分からないから。怖いから。

「超級魔法、風属性、爆風神刀!」

 普通なら、水属性の超級魔法に対抗できるのは雷属性を使う人だけだから、これで確実にやられる。

 何度でもいう、こいつは普通じゃない。異常だ。

「奇行がすぎるとちょっと怒っちゃうのかしらぁ。無駄なコツはやめるのかしらぁ。固有魔法、無属性、何度でも魔力防御しちゃうのよぉ」

 おかしいよぉ!!闇空 帆野歌は世の非情さに泣き叫びたいような気持ちになる。

 でも、いくらこいつでも、2〜3秒は稼げる。

 私の魔法は完璧。そのはずだった。満月のように。

 まだ、そう信じたい気持ちが残っていた。残ってしまっていた。捨てきれなかった。捨てなきゃいけないのに。あってはならないのに。

 だから、今。

「固有魔法、無属性!印象操作ァ!」

 その希望に縋ってしまった。

 すぐ先に分かれ道があるため、私は実際に行った方向と逆側に行ったような印象を植え付けて、引き離そうとした。

 致命的なミスだった。

「それは早く解除しないと厄介なのかしらぁ?まあどんな魔法も私にかかれば何も無いに等しいってちゃんと理解しているのかしらぁ?固有魔法、無属性、魔力防御はいい飽きたのよぉ」

 超級魔法は当たるとやばいため彼女を2〜3 秒停滞させることができていた。しかし、印象操作は相手に直接攻撃できない。つまり、ただの無駄。

 その隙に追いつかれてしまう。

 走馬灯が駆け巡るような感覚。妹ー帆傘(ほがさ)くらいには、悪い印象を植え付けずに仲良くしていたかった。そう思う。

 待て待て待て待て待てぇ!まだ死は確定していない。そもそも彼女の目的はなんだ。まだ話し合いの余地はあるかもしれない。こっちは運動能力はないが、生徒会長であるという権力があれば交渉も可能なのかもしれない。

 捕まる瞬間。

 私は両手を広げて振り返る。そして、すぐに叫ぶ。時間的余裕がマジない。

「話をしよう」

 彼女はようやくかよと言わんばかりのため息をつき、

「最初からそうすればよかったのかしらぁ」

 と言った。

 私は体から思いっきり力が抜けていくように感じだ。

 さっきまで、彼女に捕まれば全てが終わるように考えていた。希望が見えた。そのことへの安心感。

 思わずその場にヘタレこむ。

「私は悪い印象しかないあなたが心配なだけなのかしらぁ。本当は誰よりも魔法学校のことを思って、誰よりも頑張っているということも知っているのかしらぁ。それと、妹さんのことで悩んでいるかしらぁ?」

 図星。闇空帆傘は大切な妹。昔は仲が良かった。帆傘は私が印象操作を使って、生徒全体に悪い印象を与えることに誰よりも反対した。ずっと仲良くしていたいという思いはある。

 でも、この魔法学校も大切なのだ。今の魔法学校は、私という、全生徒共通の強大な権力を持つ敵がいることで、いろいろな争いが収まっている面が大きい。だからやめられない。

 悩むに決まっているよね。

 彼女ー強護に縋ったっていいのかもしれない。どうせ、どう頑張っても彼女に印象操作は効かないのだから。

 でも、私はそんなことはしない。実のところ、このような流れは初めてではない。数十回あったのだ。その度に振り切っている。

 甘い甘い誘いを。悪魔の誘いを。確実に彼女に魔法学校の方針が握られてしまうから。

「ありがたいけど……断る」

 だから、縋りたくても、手を振り払わねばならない。

「そっかぁ。でも、私は無理してまで強引にやる気はないのよぉ。まあ、協力して欲しかったらいつでもやってやるかしらぁ」

 そう言って彼女は去っていった。

 振り切った。

 やった。

 でも、私たちは致命的なミスをしていたのだろう。

 二人とも、このやりとりを最初から最後まで見ていた第三者がいたということに気がついていなかった。

 

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