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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
霊魂制御
156/177

役割

「なかなかやるじゃん……はぁぁ~……」

 そう言いながら静まり返った魔法屋に訪れたのは、藤原玲菜(ふじわられいな)だ。

「……」

 魔法屋にいたユェンユェンが口を開くことはない。

「それにしても、凱阿(がいあ)だっけ……いいや、めんどくさい」

 藤原玲菜は壁にもたれかかった。

 言われずとも、ユェンユェンには質問が理解できた。

 どうやって虹蝶(にちょう)凱阿を殺したのか聞かれているのだ。霊界と人間界が生まれるよりも前のこと、虹蝶凱阿は有名だった。その硬い防御で。

 虹蝶凱阿の魔法による防御は簡単に破れるものではない上に、何層も重ねることが出来たから、ほぼ無敵だった……そうユェンユェンは記憶していた。

 実際、その通りだった。鎌をぶつけても刺さる気配がないどころか、むしろカウンターが飛んでくる。

 なぜ虹蝶凱阿をそんな状況で殺せたのか。

 そんなの、答えは一つしかないだろう?

 凱阿の自害。ユェンユェンの鎌はその道具に過ぎない。

 あの瞬間の凱阿の狂ったような声も、苦し気な表情も、ユェンユェンの記憶から消えることはないだろう。

『飽きたわ……呪莉に使われるの……ふふっ、あはははっ』

 その声はユェンユェンの脳裏に今でも鮮明に蘇ってくる。

 だけど、それを他人に語る必要はない。

 凱阿は死んだ。それで十分だ。

「で、どうする……はぁぁ~……」

 その藤原玲菜の言葉に答えることなく、ユェンユェンは魔法屋から出た。

 行き先は分かっている。死神として、分かっていなくてはいけないから。

「死んで」

 でも、ユェンユェンは死神としての何もかもを無視してそう言い放ち、鎌を持った。藤原玲菜に向けて。

「はぁぁ~……」

 宣戦布告を受けたにもかかわらず、藤原玲菜は壁に寄りかかったまま気だるげにため息をついている。

 動かない藤原玲菜に向けて、ユェンユェンは容赦なく鎌を振り下ろす。

「余計なことを……」

 そこで、ようやく藤原玲菜が動いた。その動きはユェンユェンよりも遥かに遅かった。そうであるにも関わらず、ユェンユェンの鎌を確実に回避する。それができるくらいに、無駄のない動きだった。

「……攻撃は苦手だけどさ……逃げるのは……はぁぁ~……完璧なわけ」

 ユェンユェンの鎌が空振り、床に刺さってしまった。

 その隙に藤原玲菜は攻撃……するわけもなく再び壁に寄りかかっていた。

「はぁぁ……無駄なことはするな……もういいや……翡翠神の魔法持ってるから絶対避けれるから無駄だから休ませろ……はぁぁ……」

 その言葉に、ユェンユェンが目を見開いた。そして、両手を上げた。

「……殺せない」

 ユェンユェンはそう言って鎌を置いた。

「はぁぁ~……そんなに今の翡翠神が大切か……」

 藤原玲菜が呆れたように呟く。藤原玲菜を殺すと、その魔法が自動的に星月夜翡翠(ほしづくよひすい)へと移ってしまう可能性が僅かながらある。順当にいけば藤原玲菜の身近な人へと移るので何も問題はないが、今、万が一星月夜翡翠に魔法が移ってしまえば翡翠神が完成してしまう。

 それは、ユェンユェンにとって避けたいことだった。

「……なるべく、犠牲は出さない」

 ユェンユェンはそう言って魔法屋から出た。死神として、行くべきところへ行くために。

「……は?」

 意味が分からないものを見る目でユェンユェンの背中を見つめ、藤原玲菜はそう言った。

「……今まさに私を犠牲にしようとして」

 藤原玲菜は納得がいかないようすで言葉を紡ぎだしたが、面倒になったのか途中で止めた。

 藤原玲菜は攻撃が苦手だ。だから、ユェンユェンの代わりに魔法屋を占拠し、ユェンユェンが藤原玲菜の代わりに攻める。

 それが、総大将からの指示だった。


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