蹂躙
それからは一方的な戦いだった。
ユェンユェンが鎌で1人ずつ遠くへ吹き飛ばしていく。
抵抗すれば勝機がなかったわけではない。呪莉さんとか栄華さんとかすごく強い人たちもいるからさ。
でも、誰も抵抗しなかった。
ユェンユェンは誰も殺さず吹き飛ばすって言っていたから、それが合理的な判断なのかも……
呪莉さんまでも吹き飛ばされていく。さっきまでの戦いが嘘のように、あっさりと。
他に人が誰もいなくなって、ユェンユェンと目が合った。
私、星月夜翡翠の体が強張る。次はお前、って言われた気がした。
「ごめん、ユェンユェン」
私は攻撃される前に、重力制御で自分自身を後ろに引っ張ることで、自ら吹き飛んだ。
ユェンユェンのことだし、傷はほぼつかないようにしてくれるんだろうから体は大丈夫だろうけど、心は耐えられない気がしたから。
ユェンユェンに攻撃されるの、辛いよ。
「ユェンユェン……」
吹き飛ぶ寸前、動揺した様子でそう呟いた日生蓮を見た気がした。
あれ、ちょっと待って。日生蓮!?
不味くないか?このまま、日生蓮までもが死神になっちゃったらどうするんだよ?容赦なく全員虐殺されちゃう!
私は魔法を解除して慌ててユェンユェンの前に戻る。
「……何を……?」
日生蓮は怯えた様子で震えていた。こんなに強い人でも怖いものってあるんだ……
「……ひなせ、見ないで!」
ユェンユェンが叫んだ。ここまで必死そうな声を聞いたのは初めてかもしれない。
ユェンユェンはその勢いのまま日生蓮に攻撃を仕掛ける。
「……っ!レンレンやツェンツェンが襲って来たから様子を見に来たら……」
日生蓮は驚きつつもしっかりと攻撃を受け止める。
これ、またレベルが高すぎる戦いが始まっちゃう感じ?この2人だったらあんまり止める理由はないけど……他の勢力の介入があると面倒だよね。
なぜ虹蝶理恵さんが呪莉さんたちの戦いを止められたのかって考える。
呪莉さんと関わりがあるとかそういうことじゃなくて、そもそもなぜあのタイミングで魔法屋に来れたのかっていう話だ。
まあつまり、世界への反逆者が魔法屋付近とか……希望学校内部に潜んでいる可能性は高い。そして、漁夫の利で弱った日生蓮を連れ戻される可能性も。
なかなかまずい状況だな。
ということで、私は日生蓮の腕を握った。
「何をしている?」
首を傾げる日生蓮に腕を振り解かれる前に、私は吹き飛んだ。日生蓮と一緒に。
これでユェンユェンは魔法屋を占拠したことになるし、戦うこともないし、いいんじゃない?




