割り込み
「アカリン……」
そう呟く心配そうな幽依先輩の視線の先には、何度も何度も粉々になっては再生している明里先輩がいた。
呪莉さんもユェンユェンも明里先輩を認識してはいるが、明里先輩が死ぬことはないし、邪魔になる程硬いわけではないので無視している。
私、星月夜翡翠も、流石に明里先輩が心配になってきた。
もし、明里先輩が魔法を失敗してしまったら?考えたくもない。
でも、何度も何度も繰り返していたら、いつかは起こり得ることだ。
明里先輩がこれだけやっても2人の戦いが止まないのだ。何か別の策を考えなくてはいけない。
魔法を打ち込んだところで戦闘の衝撃だけで弾き飛ばされちゃうだろうし。
いや、そんなことは気にしてられない。やれることは一旦全部やろう。それに、一つ思いついたし。
「属性奥義、結界奥義」
無属性の魔法を付与して結界を張った。これで2人とも強化されると思う。
「……あっ」
「これはどういうことか分かりかねるんだぁよ」
成功した。
この2人ほどレベルが高ければ、自分の体の使い方は完璧なはずだ。デバフにも余裕で対抗してくると思う。
じゃあ逆にいきなり強化したら?
結果はこの通り、動きすぎる体ゆえに2人とも攻撃を空振りして、2人とも相手から距離をとった。
戦闘が止まった。
急がないと、2人はすぐに適応しちゃう。
「待ってください!」
私は2人の間に割って入ろうとした。
でも、それよりも前に別の人が、2人の間へ割り込んだ。
「誰、なのですか?」
幽依先輩がそう言った。その通り、それは見たことのない人だった。
あれ、どことなく見覚えがあるような……?
「どちらが本物か分からないけど……」
明里先輩がそう言っている。どういうこと?
いや、目を背けちゃダメ。
日頃からちゃんと鏡を見てれば迷わなかったね。
「ここで争っても他の勢力への隙を作るだけです」
そうやって呪莉さんとユェンユェンを止めにかかっていたのは、私だった。
正確にいうなら、私とそっくりな見た目をした誰かだ。
奇妙なことになってるな……
「理恵……」
呪莉さんがそう言って俯いた。
あ、理解した。世界への反逆者の虹蝶理恵さんが私に化けてるのか。
なんで化けてるのかとか、なんで争いを止めようとしているのかとか、全く分からないけど。
でも、呪莉さんから怒りは消えているように見えるし、ユェンユェンもいきなり攻撃をしてくる様子はない。
虹蝶理恵さん、ナイス!
「分かったんだぁよ」
「……」
ユェンユェンは黙ったままだけど、呪莉さんは笛をしまった。
争いが止まると、私の見た目をした理恵さんがこちらへ歩いて来た。
「どうしても、先生に死んでほしくなかった。変装バレてて意味なかったけど……勝手に借りてごめんね」
そう耳元で囁かれた。先生って呪莉さんかな?
次の瞬間に理恵さんは走り出してどこかへ行ってしまった。世界への反逆者のメンバーだし、追いかけて捕まえるべきかと思ったけど、そういう気分にはならなかった。
なんだろう、不思議な気分。敵だとしても、利害によっては協力できるんだ。




