問いかけ
私、星月夜翡翠は希望学校へ戻ってきた。
なぜかメルちゃんが死神山へいた上に、るるがそれを使って話しかけてくるという謎すぎる状況だったけど……
せっかくあんな言葉をかけてもらったし、頑張らないと。
でも、希望学校には世界への反逆者はもういなかったし、魔法屋の様子を霊魂制御で探ったけど、そっちも戦っている様子はない。死神はユェンユェンがなんとかしてくれたのかな?
やる気で来たので拍子抜けだけど、平和であるに越したことはない。
「翡翠ちゃん!」
珠夜さんが声をかけてくれた。
「戦い、収まったんだね。よかった!」
私はそう返す。
「そうなんだよね。それ自体はいいことなはずなんだけど……大きな攻撃のための戦略的な撤退?みたいなのの可能性が高いって呪莉さんが言ってて……」
珠夜さんは不安そうだった。
確かに、私が楽観的過ぎた。あれほどの戦闘が無条件に収まる方が不自然だよね。
「そうだよね、私に出来ることない?」
何でもしたい、そんな気持ちでそう言った。
「魔法屋に向かうべきね。今のところそこが一番戦力不足だし、死神が来るならほぼ確実にそこを取るから」
珠夜さんの背中にぴったりくっついている望初さんがそう言ってくれた。望初さん、記憶喪失だった気がするけど、普通に珠夜さんと仲良さそうに見える。
「分かりました。行ってみます」
私は魔法屋へ向かった。
私は今、目を背けていた。この二人に出会った瞬間に、魔法屋店主の誰かに仲介してもらう様に頼まなくてはいけなかった。
凱阿さんのこと、報告しなきゃいけないのに。
言えなかった。
どうしてか、はっきりとは分からない。
たぶん、自分の中でも凱阿さんの死は受け入れられていないからだとは思うけど……
ちゃんと、誰かに言わないと。
魔法屋へ向かえば、きっと誰かいる。
そこで出会った瞬間に何も言えなかったら、もう二度と話す機会はなくなる。
そんなのは、ダメ。
そう思うと、魔法屋へ向かう足取りは重くなる。
逃げちゃだめだよね。
るるが言ってたよ。諦めないでって。
そんなことを考えつつも、魔法屋へはすぐについてしまう。
干渉制御で壁をすり抜けて入る。
考えることはみんな同じらしく、そこには魔法屋店主が集まっていた。呪莉さんや天花様もいる。呪莉さんがリーダー的な感じでみんなをまとめてるっぽい。
「呪莉さん!」
言うしかない。私はとりあえず叫んだ。絶対に呪莉さんに聞こえるように。
「どうしたんだぁよ?」
突然壁をすり抜けてきた私に呪莉さんを含め、周囲が怪訝な目を向けていた。気にしたら負けだよ。
「凱阿さんが……」
言わなきゃ。
「死んでしまいました」
言えた。
言ったからって、凱阿さんが戻ってくるわけでもないし、何の解決にもならないけれど。
でも、これは絶対に言わなきゃいけないことだった。
「は?」
呪莉さんから聞いたことのないような声が漏れた。常に冷静にいるように見えていた呪莉さんだが、この時の呪莉さんは……言い方が悪いけど、本当に間抜けな表情をしていた。
「あいつ……」
天花様が悔し気な表情を浮かべている。
「……」
呪莉さんがその場で頭を抱えて崩れ落ちた。
『誰が殺した?』
頭の中に声が響いてきた。
『誰が殺したか聞いてるんだが?』
ちょっと待っ……
『答えろ!』
頭痛が走る。痛い。
『答えろって言ってるだろう!』
おそらく、呪莉さんが。通信できるのってかなり高度な魔法だと思うけど、その上頭痛まで……
余計なこと考えている場合じゃない。
凱阿さんを殺したのはユェンユェンだ。
私は答えることができる。
でも、今答えたら、呪莉さんはどう動く?この様子から見て、呪莉さんはユェンユェンを殺しに行ってしまうだろう。
それでいいのだろうか?
答えても、いいのだろうか?
『早くしろ!』
知らない、そう言ってしまいたい。
でも、呪莉さんの圧力はそれを許さない。
ユェンユェンが死神の攻撃を止めてくれたんだよ……
『答えてくれ!』
頭も痛い。辛い。
いったいどうしたらいいんだよ!




