再会
体が、重い。
目もあんまり見えてない……
誰かの足音だけがはっきりと聞こえる。
ここは、どこ?
私は……星月夜翡翠、これは流石に分かるよ。
今、どういう状況なのかな?
足音が止まった。その足音の主はすぐ近くにいる気がする。
攻撃かも、防御、しなきゃ。
「お久しぶりです、と、れみは、れみなりに挨拶をします」
この声、れみさん?
「お疲れのところ申し訳ないですが、れみに、れみだけにできることをやらせてください」
待って、れみさん?どこにいるんですか、一緒に帰りましょう!珠夜さんもきっと会いたがってる。
言いたいことがたくさんあるのに口が動かない。
れみさんに伝えたいことは全て、私の心の中だけで響いては消えさった。
「れみは、れみとして動けるのはごく僅かな時間です。れみの心は申し訳ない気持ちですが苦しんでください」
れみさんがそう言った時、私の額に何かが触れた。おそらくはれみさんの手だ。
……!!!
口が動かないから悲鳴は出なかった。
でも、声が枯れるまで叫び通してしまいそうなほどの頭痛が走った。
「これで、れみと同じように、れみが過ちを犯したように……」
そこでれみさんの声は途絶えた。大事な情報は何も聞けていない上に、頭が痛すぎるんだけど。
でも、なんとなく分かった。頭痛が教えてくれた。
私も、翡翠神として暴走できる。
どこかられみさんが来て、どうしてこの力を私に渡したのかは分からない。でも、れみさんは余計なことで私を苦しめたりするような人じゃない。
だとすると、この力はどこかで必要になる。
だんだん視界が良くなってきた。空が見える。私、寝っ転がっていたんだ。
相変わらず体が重い。
なんとか右手を動かして、伸ばしてみる。
「は?」
動かなかったはずの口が動いた。それほどまでに、今見た光景は衝撃的だった。
とんでもない頭痛も吹き飛んだ。
伸ばした右手から、血が垂れてきたのだ。それも大量に。まるでさっきまで血の水溜りに手を突っ込んでいたかのように。
体は重いけれど、斬られたような痛みはない。
痛覚がなくなってる?
いや、それなら体の重さすら感じないはず。
なら答えは一つ。これは私の血じゃない。
視線をを動かす。
私の身体の方へ。
そこで私は見た。
見てしまった。
どうしてれみさんが出てきたのか、どうして体が重いのか、どうして血が付いていたのか。全てに説明がつくその光景を。
「が……が、いあ……さん」
そう、心臓を貫かれた凱阿さんが、私の上に乗っていた。
その血は私の身体をぐっしょりと濡らした上で水溜りを作っている。
凱阿さんの体から柘榴神であるれみさんの残滓が剥がれたみたいな感じだろうか?だとすると凱阿さんの命は?
でも、確か死んだら身体って消えるんだよね、だとしたらまだ……
私は凱阿さんをそっと退かして立ち上がった。助けを呼ばなきゃいけないのに……
「凱阿さん!」
叫んでも何もない。
次の瞬間、凱阿さんが消え始めた。
「ああ……」
何もできなかった。私のために一緒に死神山まで来てくれて、一緒に戦ってくれたというのに。
『ユェンユェン、ちゅうい』
地面に書いてあったその文字も、凱阿さんと共に消えていく。
ユェンユェンは部屋が一緒の仲間だった。
凱阿さんも一緒に戦った仲間。
仲間が仲間を殺した。
「いやぁー!!」
思いっきり叫んだけど何もない。でも、状況が受け入れられなくて、叫ぶしかなかった。
「あぁー!!」
意味もなく叫ぶ。なんで叫んでるのか分からなくなるまで、ずっと。
ずっと、叫んでいたい。
もう暴れちゃって、全部滅ぼしてしまいたい。
暴走……
暴走すれば……




