鎧
「ひなせ……お願いがあるの」
希望学校にて、世界への反逆者と交戦していたユェンユェンが突然、日生蓮にそう言った。
「なんだ?」
ユェンユェンも日生蓮も戦闘に余裕があるようで、会話が始まる。
「……」
ユェンユェンが気まずそうに目を伏せ、言い淀んだ。そして、あからさまに戦闘に没頭した。その様子に日生蓮はただ首を傾げていた。
「どうかしたのか?」
しばらく経った後も何も言わないユェンユェンに日生蓮はそう尋ねた。
「……魔法屋が大変なことに、なってる」
ユェンユェンがようやく重い口を開く。
「死神が攻めてきているらしいぞ」
日生蓮も店主の間で既にその情報は耳にしていた。
「……うん、だから……私が何とかする。だから……その……」
もったいぶるユェンユェンだが、日生蓮は黙ってユェンユェンの言葉を待ちつつ襲ってきた敵を鎌で吹き飛ばす。
「妹たちを……お願い。魔法学校のレンレンと……」
ユェンユェンはそう言って真上を見上げる。
「ツェンツェン……だよな」
日生蓮も同じように真上を見上げてそう言った。
二人の視線の先には激しい空中戦を繰り広げるツェンツェンがいた。靴底を変幻自在に操り、ばねの形に伸ばして飛び上がったり、相手に直接ぶつけたりと、風の魔法で浮遊している相手に武術?で真っ向から対抗している。
風魔法での浮遊は繊細な制御が必要なかなり難しい技で、それを使っている敵も相当の魔法の使い手であるはずだが、ツェンツェンはそんな敵を軽く追い詰めていた。
「……あそこまでちゃんと飛べるの、すごい……でもツェンツェンの方が、もっとすごい」
ユェンユェンはそう言ってツェンツェンから目を逸らす。ツェンツェンの成長に満足したらしい。
「でも、どうして……」
日生蓮はなぜユェンユェンに妹たちのことを頼まれているのか不思議だった。
「……死神に戻る、ごめんね……ひなせは戻っちゃダメだよ」
そう言ったユェンユェンがそこら中の敵を全て軽く躱し、そのままどこかへ走り去っていった。
「……総大将、分かっててやってる……ひなせと私が戻るように」
ユェンユェンは呟いた。ユェンユェンは魔法屋に押し寄せている死神がただの人形ではないことに気がついていた。
「……だから今、私が戻る……ひなせは……ダメ」
そう言って、死神山へと向かって行った。
ユェンユェンは総大将の笑い声が聞こえた気がした。
やばい。
何がやばいのか?
凱阿さんが強すぎることだよ。
私、星月夜翡翠は凱阿さんと藤原玲菜の戦いをただ眺めているだけだった。
「当たらなければ問題ないよね」
凱阿さんがそう言って果敢に攻めている。誰か、似たようなことを言っていた気がするな。
「はぁぁ〜……当たれば終わるけれど」
藤原玲菜もそう言って負けじと鎌を振り回す。
「雷凱」
鎌が凱阿さんに当たりそうになるが、その直前に魔法を発動し、鎌を弾き飛ばしている。その上、鎌を伝って雷のダメージを相手に与えている。
見たところ、氷凱とか炎凱とかいろんな種類があるようだ。
今のところ凱阿さんがカウンターでダメージを与えているので、そっちが優勢だ。
でも藤原玲菜は一撃必殺だからなんとも言えない。
私に何かできることは……
凱阿さんの守りが完璧なら、凱阿さんごと巻き込んで藤原玲菜に攻撃っていう手もあるんだけど。
「凱阿さん、巻き込みますね!」
うん、そうしよう。私はそう言って、属性奥義を思いっきり撃った。
「了解……虹凱」
凱阿さんがどこからともなく虹色の蝶を取り出し、魔法を発動した。凱阿さんだって魔法屋店主なんだから持ってて当たり前か。
まあ、なんか強そうな魔法だし、凱阿さんの心配はせず攻撃をしよう。
ということで追い討ちでさらに数発属性奥義を撃ち、さらに重力制御で思いっきり重力をかけた。そして空気への干渉を外して2人に近づいて、また空気に干渉して爆発も起こしておいた。
何も見えないけど、倒せたかな?
死神二冠が強いのは分かってるけど、流石にこれだけやったら倒せてほしいよね。
次の瞬間、視界が一気に晴れた。誰かがその辺に舞っていた粉塵を全て吹き飛ばしたのだ。
「ふぅっ……!?」
凱阿さんがお腹を抑え、後ろへ飛んだ。私、やりすぎた?
「け、警戒して。何かいる。名前狩り以外の何か」
凱阿さんが早口で捲し立てた。
敵が増えたってこと!?
霊魂制御で辺りを探る。藤原玲菜と凱阿さん以外の気配は感じない。ユェンユェンが近くにいる気はするけど……
霊魂制御でも見つけられない敵ってなんなんだ?
で、藤原玲菜の気配があるってことは倒せてないじゃん!
まだまだ気の抜けない戦いが続くね……




