喧嘩
私、星月夜翡翠は天花様と共に死神三傑の2人を倒したところだった。
その戦いで助けてくれた人にお礼を言おうとしたところ、その人がれみさんによく似ていて、思わず尋ねてしまった。
「ごめんなさい。髪の色とかもう戻らないのよ」
そのれみさん似の人は自分の髪を触りながらそう言った。
「凱阿?……さん」
天花様の言葉に、その人は頷いた。
凱阿さんって確か、二代目魔法屋店主で、柘榴神に体を取られて……えっと、つまり、れみさんの体だった人。
「そうだよね、不思議だよね?どうして生きてるのって感じでしょ」
凱阿さんは私の思考を見透かしたのかそう言った。
柘榴神に体を乗っ取られた時点で意識は消滅するものだと思ってたけど、違うのかも。
「私もよく分からない。でも、多分……その、れみちゃんって子が助けてくれたからだと思う」
れみさんが暴走してみんなで戦った直後……というか戦争終了前に、私は何故か人間界に行ってしまっていた。瓦礫運びなら手伝ったけど……
れみさんってどうなったんだろう?消えてしまったって聞いたけど……
「松浦れみの体は消滅した。あなたの体はなんなのよ?」
天花様が興味津々に尋ねる。
「分からないと言ってる」
凱阿さんが急に冷たい口調になり、天花様を睨んだ。
その視線に天花様は萎縮……するわけもなく。
「質問するのは自由じゃないの?嫌なら答えなければいいだけでしょ?」
天花様はそう言って凱阿さんを思いっきり睨みつけた。
あ、バチバチ……
「そうね、その通りよ。もしあなたが最低限の気遣いすら出来ない愚かな人だったらだけどね」
凱阿さん、なかなか棘のある言い方を……
「自己中な人の言葉じゃ参考にならないわね」
天花様も大概だけど……
せっかく協力出来て死神を倒せたのに。
「落ち着いてください、天花様も凱阿さんもありがとうございます」
私は2人の間に割って入る。バチバチで怖かったけど、時間がたてばたつほどヒートアップしそうなので。
「うるさ……」
凱阿さんがそう言った。そんなに天花様との喧嘩が大事なんですか!?
「黙りなさいよ」
天花様……お前もかよ!?
放っておくか。
まだ周囲に死神がいるかもしれないし、一応警戒しておこう。
「これだから……己の顔の良さに甘えて来たんだろう?」
「その強さがあれば人生苦労しなさそうね」
お互いほめてる……?
とにかく、喧嘩?はしばらく続きそうだ。
この後は死神山へ行って、身体狩りに多少なりともダメージを与えて魔法屋での戦いの負担を軽くする。それは決定事項だ。
完全に存在感が薄くなっていたけれど、凱阿さんは未だにメロディー先輩を抑えているし、元々一人で行くつもりだったけれど天花様が来てくれたし。
メロディー先輩を連れていくわけにはいかないから、どっちかにメロディー先輩を安全な場所まで送ってもらって、どっちかに付いてきてもらうことは出来ないだろうか?私としても誰かいてくれた方が心強い。
「あの、これから死神山へ行くんですけど……」
私は天花様と凱阿さんに思いついたことを提案した。
「なるほどね、私がメロディーちゃんを連れて帰ろうか?」
凱阿さんがそう言ってくれた。
「いや、それは天花様がやるわよ」
しかし、天花様がわざわざ突っかかった。
「……本当は死神山へ行きたかったの、引っかかってくれるような弱者でいてくれてありがとう」
でも、凱阿さんはそう言った。どっちなんだろ……
「ふ、ふんっ!天花様がこっちをやりたかっただけなんだから」
天花様はそう言うと、メロディー先輩の手足を凍らせ、そのまま浮遊させてメロディー先輩を運び、ここから立ち去ってしまった。
「凱阿さん、本当はどっちがやりたかったんですか?」
私の質問に答えが来ることはなかった。




