死神山へ
私、星月夜翡翠は死神山へ向かっていた。
よく考えずに一人で突っ走るのは良くないって昔学んだはずだけど……
だからと言って、何もせずただ見ているだけなのはもっと良くないと思ったから。
それに、あんなに死神が密集してしまっている中を通り抜けて魔法屋を出れるのは私しかいなかったから。手を繋いで連れてくるっていうのも有りだったけどね。
死神に魔法屋が攻め落とされたら希望学校がまずいことになる……すなわち魔法屋を通る道が希望学校から死神山への最適ルートであるはずだ。
別に死神を倒す必要はない。少しでも……少しでいいから揺さぶることができれば、あとはその隙にみんなが何とかしてくれるはずだ。
死神山が見えてきた。
それと同時に、丸められた鎌がフリスビーみたいに飛んできた。
この攻撃、見たことある……ミレイユ?
確か、死神三傑の一人だ。昔、希望学校まで侵略してきたよね。
それにしても、前よりなんだか飛んでくる鎌が速くなっている気がする。私が少し強くなったとか思っている間に、みんなも強くなっているんだね……
干渉制御が効かなかった気がするし、これはなんとしても避けないと。
避けれるやつは避けて、厳しいやつは重力制御で落とした。私の重力制御、もしかして威力上がってる?
「あらら、久しぶりね。今日は一人?」
耳元で声がした。いつの間に接近されていた?
でも、霊魂制御で気配を探ったけど、ミレイユの気配はまだ少し遠くにある。
声だけした感じか、テレパシー的なことだよね?戦闘中に意識が削がれちゃうからなかなか厄介だな。
「ふふっ、びっくりしたでしょ。お姉さんは魔法を逆流させられるの」
なんかあっさり重要な話をしてくれちゃった。死神ってなんかいつもこんな感じだよね。
なるほど、魔法の逆流ね。霊魂制御で私が誰かと通信できるのを利用したみたいな感じってことだろうな。
だとすると、干渉制御も何かされてるってことか。だから鎌が当たっちゃうんだな。完全に魔法の制御が乗っ取られちゃうようだったら重力制御で鎌を落とすこと自体出来ないはず。何か条件か制限があるはず、見極めなきゃ。
「すごいです……これじゃ……」
私はとりあえず相手をほめて、ピンチを装う。
死神は割と会話には乗ってくれる傾向があるから、何か聞き出せるかも。
「そうでしょう?まあ、万能なわけではないけどね」
ほら、なんか話してくれそう。
「万能ですよ……強すぎますってぇ!?」
私はそう言いながら鎌をギリギリで避ける。調子に乗らせちゃおう。
「それがね、制限時間があるのよ」
理解した。切れた瞬間を狙えば何の心配もなく攻撃できるってことだ。そうは言っても、どれくらいの時間魔法が使えるのかとか全く分からない。油断は絶対にダメだね。
「ふーん、油断しないんだ。可愛くない」
次の瞬間、ミレイユの気配が変わった。
えっ?
そういうことか。私もまた、会話によって誘導されていたんだ。だとすると、ミレイユの話がどこまで本当か分からなくなってくるぞ。
制限時間なんてないのかもしれないし、そもそも魔法を逆流させるなんて出来ないのかもしれない。
会話作戦じゃダメだった。
でも、だったら正面からぶつかるだけ。
私は結界奥義でミレイユを真っ二つにしようとした。地面と平行に結界を展開した。私自身はしゃがむことでその結界でミレイユの鎌を防ぐ。
でも、私がしゃがんだことで狙いがばれてミレイユにもしゃがまれてしまった。これじゃ意味ない……
属性奥義の魔法を真上に放ってみた。ただのハッタリだが、見た目は派手なので何か大がかりな攻撃への予備動作に見えるはずだ。
狙い通り、ミレイユは上を警戒してくれている。上にミレイユの視線がいった瞬間を狙って、ミレイユを重力制御で真上に吸いつけてみた。
「……!?」
ミレイユの体が浮きあがり、私が指定した一点で静止する。
このまま倒そう。
さっき打った属性奥義も重力制御で引き付けて、ミレイユにぶつける。
その上でさらに、結界奥義を何回も打った。それはもう、ズタズタにできちゃうくらいに。
倒した、かな?




