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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
属性奥義
131/177

洗脳

 私、星月夜翡翠(ほしづくよひすい)は考える。今ならここで紡琴羽(つむぎことは)を仕留めることが出来る。危険な思想を持っているだけで殺すのは良くないことだが、今まで紡琴羽が犯してきた罪を考えれば、絶対に野放しには出来ない。

「琴羽……」

 繭羽(まゆう)先生が口を開いた。俯いてしまっているため、表情は見えないが、その声は震えていた。

「本当に、そんなこと思ってるの~?」

 繭羽先生がその言葉と共に顔を上げる。その表情に恐れも殺意も憐れみも一切なかった。

繭羽先生はただ戸惑っているのだ。

「どうしてそんなこと言うの~?誰も迫害されない世界を目指してるのに、誰かを排除するのは矛盾するよね~。琴羽はそんなに頭が悪くないと思ってたんだよ~」

 その言葉を紡琴羽は黙って聞いていた。

「洗脳されている人がいると言っていたねぇ?君自身はどうなのか気になるんだぁよ」

 呪莉(じゅり)さんがそう言って繭羽先生の隣に立つ。紡琴羽自体が誰かに洗脳されている可能性を疑っているってことだよね。

「洗脳、そんな簡単に出来ることじゃないはず……」

 珠夜(たまよ)さんがその場で考え込む。

 そうだよね。洗脳なんて全然見たことなかった。それこそ、炒菜椿(いりなつばき)の人形みたいなくらいしか……

「呪莉さん。そんなにたくさんの人を洗脳なんて、可能なんですか?」

 その問いに、呪莉さんは黙ってしまった。おそらく、方法に心当たりはあるんだろう。

「私は~、私は~?」

 紡琴羽は頭を抱えてしまった。縛られているので、実際に頭を抱えているわけじゃないけれど、そう表現するのが適切なくらいに混乱し、自問自答を繰り返している様子だった。

「難しいことになっとるね」

 栄華(えいが)さんは思考放棄気味なのか、その辺を適当にぶらついていた。

「ごめんなさい、私も状況がよく分からないわ」

 そう言う望初(のぞめ)さんは本当に申し訳なさそうな様子をしていた。そっか、記憶がないから何も知らないもんね。仕方ない。

「私は……洗脳されてなんかない」

 しばらく悩んだ末、紡琴羽はそう言った。

「そっか~」

 繭羽先生が残念そうに、そして辛そうに目を背けた。

「まだ琴羽に聞きたいこと、ある人いる~?」

 繭羽先生の問いに、全員が首を横に振った。私含めてみんな、紡琴羽は話が通じないヤバい思考の持ち主だと思ってるし……聞いても話にならない気がするから。倫理観が違いすぎるって感じだね。

「それなら、みんな帰っちゃって~、後は私が終わらせるから~」

 繭羽先生が具体的にどのような終わりに向かわせるのか分からない。幽閉するのかもしれないし、説得するのかもしれない。あるいは……

 でも、繭羽先生に任せるのが適切な気がした。ずっと前から紡琴羽を知っていて、実の姉であるから。

 というわけで、私たちは世界への反逆者の拠点から出た。倒した世界への反逆者のメンバーたちは結空(ゆあ)さんに頼んで牢屋に入れてもらった。

 私たちも結空さんに頼んで一瞬で帰るって言う手もあったけど、そうはせず、近くを歩き回っていた。

 まだ近くに世界への反逆者のメンバーは残っているかもしれない。そんな中、繭羽先生を置いていくことなんてやっぱりできないから。かといって、紡琴羽と繭羽先生の2人の時間を邪魔したいわけではない。

 だから、繭羽先生のもとへ誰も向かわないように見張りをして回っているといった感じだ。

 繭羽先生、何事もないといいけど……

 今はただ、何とか全てが綺麗に収まって、うまくいくことを祈っているだけだった。

 


 でも、結果は予想と違う方向へ向かった。

 繭羽先生は、紡琴羽に逆に説得された。

 そして、そのことを黙って普段通り振る舞った。

 つまり、内部スパイ的な感じになったのだ。

 私はそれに気が付いていた。でも、誰にもそれを言えなかった。

 受け入れられなかったから。認めたくなかったから。

 だから、始まってしまったんだ。


 世界全体を巻き込んだ大戦争が。


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