珠夜の説明②
マヨタンは今、魔法学校の目の前にいる。頑張って走ったのはいいが、生徒会長さんに会うとなるとやっぱり緊張するな。
スーハー
思いっきり深呼吸する。迷ってなんかいられない。メロディー先輩だって急いでいた。マヨタンは思い切って来校者用のインターホンを押した。
ピンポーン
インターホンの音が鳴り響く。すぐに返事が来た。
「はい、魔法学校生徒会、連のレンレンと申します。どのようなご用件でしょうか?」
生徒会。魔法学校の生徒会には四人が所属している。校長先生とコミュニケーションが取れる唯一の存在『生徒会長』、生徒の能力を把握し軍事力を管理する『連』、主に校則などの規則を管理する『臣』、各クラスや個人単位で生徒会への不満が起こらないよう治めていく『造』がある。
つまり、生徒会にいるだけでとても偉いのだ。マヨタン、カチコチに緊張しちゃう。でもしっかり返事しないと。
「この度は、生徒会長様にお願いがあってお伺いさせていただきました。生徒会長様に面会できないでしょうか?」
なんか敬語メチャクチャな気もする。
「承知致しました。少々お待ちください」
そう言われて、インターホンから聞こえる音が少し途切れる。
スーハー
もう一回深呼吸しておこう。
「お待たせ致しました。魔法学校生徒会、生徒会長の闇空 帆野歌と申します。
とりあえず要件を具体的にお伺いしますので、校内に入っていただけないでしょうか?」
話は聞いてくれそうだ。
「分かりました。ありがとうございます」
マヨタンがそういうと、インターホンが途切れた。そして、門をあけてくれた人がいた。すごい連携。この会話の間に人を派遣したのか。
「魔法学校生徒会、臣のメイと申します。生徒会長様の下までご案内致します」
その人は、なぜか魔法学校の制服、セーラー服ではなくメイド服を着ていた。
生徒会、またきたぜ!さらにガチガチマヨタン!
「ありがとうございます」
とはいえ、しっかりしないと。緊張していることを悟られないようにしっかり頑張る。
マヨタンは臣のメイさんに案内されて、魔法学校へ入った。そして、『生徒会室』と書いてある部屋に案内された。絶対生徒会全員が集まってるパターンだこれ。
「生徒会長様、来客の案内を完了致しました」
メイさんは部屋に入っていく。マヨタンは頑張って背筋をピンと伸ばしている。
「希望学校より参りました。舞羽 珠夜と申します。この度は、生徒会長様との面会をお許しになっていただき誠にありがとうございました!」
ガンバレマヨタン!イケイケマヨタン!
精一杯頑張った敬語。うまくできているのか、マヨタンには分からない。ここは神様にたのもぉ〜。
生徒会室の中には三人の人がいた。
一人は深く蒼い長い髪を顔の左側にお団子にして結び、一部を垂らしていた。深紅の瞳は、全てを燃やし尽くすような壮絶なプレッシャーがかかっている。
「改めて、魔法学校生徒会、連のレンレンと申します。本日は遠方からはるばるお越しいただき、誠にありがとうございます」
最初にインターホンに出てくれた人だった。レンレン?と言うらしいが……
他の一人は雨が降っていない日に、しかも室内で黄色のカッパを着ていた。紺地にオレンジ、白、黄色とかいろんな色で星が描かれている傘まで持っている。水色の前髪が、カッパの帽子の下からチョコンと見えている。暗黒の瞳は、見たもの全てを吸い込みそうな神秘的な輝きを放っている。
「闇そ……危ねぇ、これってちゃんと順序あるんだよねぇ。いらないけどぉ。魔法学校生徒会、造の闇空 帆傘ですぅ」
まだあっていない初対面の人だ。
最後の一人は明らかに放つ気配が全然違った。稀代の大天才って感じだ。水色の髪を一本の三つ編みにして、右の方から下ろしていて、藤黄の瞳をした人だった。
「帆傘、無礼がすぎますのよ……本日は、魔法学校にご来校いただき、誠にありがとうございました。改めて魔法学校生徒会、生徒会長の闇空帆野歌と申します。本日はどのようなご用件でございますか?」
はっ!あまりの圧にボッーとしてたぜ!危ねぇ。なんか内心がテンパって口調荒いけど気にするなっての。
「本日はお願いがありまして、星月夜 翡翠ちゃんの希望学校への入学についてなんです。了承はいただけないとしてもとりあえず、返事だけいただきたいと言う感じなのですが……」
うまく喋れているかな?緊張しまくりマヨタン!でも、メロディー先輩は頑張っているんだから、マヨタンだって頑張らなきゃ。
「分かりました。『星月夜 翡翠』でございますね」
藤黄の瞳に見つめられて、さらに緊張UP!頑張れマヨタン!2文字でいい。
「はい」
よくやったマヨタン。
「分かりました。結果はこちらから希望学校へ伝えておきます。あとは帆傘、挽回しなさい」
闇空 帆傘さんが立ち上がる。そういえば、この人は生徒会長様と同じ苗字だ。瞳の色こそ違えど、髪の色は同じ。姉妹なのでは?まあそんなことは置いておいて。
「では、出口へご案内いたしますわぁ」
と言うことで、ささっと部屋から出て行ってしまう。マヨタンは急いで追いかける。
「舞羽さんでしたっけぇ?お姉様はうざったらしいですよねぇ。帆傘の方が魔法も勉強もできるのにぃ、
ちょっと先に生まれただけで偉そうにしているんですよぉ」
この人、やっぱり生徒会長様の妹のようだ。しかし、姉は嫌いらしい。
「帆傘の愚痴ぃ、少し聞いてくださいぃ。無視していればそれでいいんでぇ。ありがとうございますぅ。返事してないぃ?返事とか聞きませんよぉ」
自分勝手な人だ。でも、どんどん喋るため口を挟む隙がない。
「お姉様って雑魚いんですよぉ。持ち前の威圧で押し切ってますけどねぇ。真っ直ぐ戦ったら連のレンレン先輩やぁ、臣のメイ先輩にもボコされるんですよぉ。努力もたいしてせずにぃ、持ち前の才能だけで高い地位についてどう言う気持ちなんでしょうねぇ。帆傘には想像もできないわぁ。だってお姉さまは人類最高のクズなんですからぁ」
すっごい罵倒だ。ここまでいくと、この子にもそれなりの事情があるように思える。なんだか心配になってきた。思い切ってマヨタンは一つ言ってみた。
「また、マヨタンで良ければ愚痴は聞くから。普段何かに苦しんでない?無理していない?ね?」
その子ー帆傘ちゃんは驚いていた。しかし、
「約束だよぉ〜」
めちゃくちゃ乗り気だった。
そんな会話をしているうちに校門までたどり着いた。
「約束だよぉ。またねぇ」
「バイバイ!」
そういって帆傘ちゃんと別れた。なんかちょっと怖い子だったな。とりあえず、生徒会長にお願いできたことをメロディー先輩に伝えるために希望学校へ帰ることにする。
「固有魔法、風属性、俊足」
マヨタンは全速力で希望学校へ向かった。
マヨタンは何事もなく希望学校へたどり着いた。待ち合わせ場所のR3の49室へ急ぐ。すぐにそこへ辿り着く。
教室に入ろうとした。しかし、中から声が聞こえて思わず立ち止まった。
「お話の最中失礼致します。魔法学校生徒会、生徒会長の闇空帆野歌と申します。魔法学校の代表として、皆様にお知らせがあります。校長先生からお言葉を頂戴致しました。星月夜翡翠の希望学校への入学を認める、とのことです。では、失礼致しました」
生徒会長様。翡翠ちゃんの入学の許可を得ているということから、マヨタンが生徒会室を出てから校長先生と会話し、それから希望学校に向かったということになる。にもかかわらず、マヨタンより先に希望学校へたどり着いている。
マヨタンだって、ずっと俊足で移動して最速で希望学校へ向かったつもりだ。にもかかわらず、だ。帆傘ちゃんの話だと、生徒会長様に大した力はないように感じるが、侮れない。マヨタンは今一度気を引き締めた。
生徒会長様は話すべきことを話し終わったのか、マヨタンがいる方とは別の扉を使って、すぐに教室から出てきた。マヨタンに背を向けて歩き出す。
マヨタンのことは認識してないのかな?ほっと胸を撫で下ろそうとしたその時……
生徒会長様が勢いよく振り返った。ばっちり目が合ってしまう。藤黄の眼光に射抜かれ、全身から力が抜けた気がした。侮れない。もとより侮ってなどいないが。一切の油断が許されない。胸を撫で下ろそうとしたその手をスッと下ろし、こぶしを握り、さらに気を引き締めた。
生徒会長様は去っていった。しかし、あの時感じた威圧だけは一生消えることがないような気がする。そんなふうに思うほどに、頭も心も何か大きなわだかまりができたかのようにズッシリと重かった。体も金縛りにあったように動かなかった。
「舞羽さん、ありがとうございます」
「感謝なのです」
そんななか、明里先輩と幽依先輩の声が聞こえた。
そっか、思いっきり自覚する。マヨタンは一人じゃないんだね。なんだが、体が解放されたような感覚になった。今度こそほっと胸を撫で下ろし、教室に入った。
翡翠ちゃんは明らかに困惑している。教室にはれみもいた。れみ、久しぶりだね。マヨタンはれみの方を見て、にっこり笑う。れみもにっこり笑って返してくれた。
「珠夜さん!でも、どうしてここに?」
そんな翡翠ちゃんの言葉に、私は満面の笑みで、こう応えた。
「翡翠ちゃん!無事でよかった。まあ色々あったんだよ。ゾメッチが心配していたからちゃんと魔法屋にも行ってあげてね!」
翡翠ちゃんはゾメッチについて話してくれると思った。ゾメッチと結構仲良くなれていた気がするしね。しかし、
「珠夜さん!ちゃんと説明してください」
と言われた。マヨタン、なんか意味不明なところあったか!?まあ、仕方ない。思わずため息は出てしまったが。
「分かったよ」
そう言って、色々説明することにした。




