修復完了
「こんにちは、失礼します」
店主の間に帆野歌さんが到着した。
私、星月夜翡翠はすぐに帆野歌さんへ駆け寄った。遡楽さんが大分きつそうだったから。
「すみません、すぐに魔法を……」
無茶ぶりだと思うが、遡楽さんに無茶ぶりしまくった後のような状態だし……
「もちろんです。固有魔法……」
帆野歌さんも分かっていたのか、すぐに詠唱を始めてくれた。ちょっと待って早すぎる。急いでって頼んだのは私だけどさ。
「固有魔法、翡翠神、霊魂制御!」
「無属性、印象操作」
さっきみたいに、魔法の範囲を拡張するイメージでやれば大丈夫なはずだ。
「いい感じです」
帆野歌さんもそう言ってくれてるし、多分できているのだろう。
これで飢饉の問題は解決するはずだ。
「ふぅ」
遡楽さんがその場にへたり込む。かなり無茶をしていたんだと思う。見た目が幼女なのもあいまって、なんか罪悪感が湧いてくる。
「本当にお疲れ様です、すみませんでした」
そんな遡楽さんに帆野歌さんが頭を下げる。
「気にしないで、仕方がないことでしょ?」
対応は超大人なんだよな。不思議だな、遡楽さんって。
「お腹、すいてないです。すごいですね」
私は帆野歌さんに話しかける。
「騒がせちゃって申し訳ないわ。これからも魔法を維持し続けなければいけないけれど、大丈夫?」
ずっと維持って言われてもイメージが湧かなくて不安だけど、頷く。帆野歌さんだって大変なんだから。少しでも帆野歌さんが安心できるように。
「それにしても、急に校長先生が魔法の維持をやめた上に連絡が途絶えたし、繋がったと思えば別人だし……一体なにがあったの?」
帆野歌さんがどこまで知っているのか分からないけど、みゆさんのこと、全部話すべきだよね。
「校長先生って虹蝶みゆさんなんですけど……」
私がそう言いかけたところ、帆野歌さんが目を見開いた。
「そうなの!?それってつまり……」
まだこれしか言っていないのに帆野歌さんは考えこんでしまった。かなりの衝撃的事実だったらしい。
「ごめんなさい、聞かせてもらえないかしら?」
みゆさんが突然店主の間に来て私と珠夜さんを追いかけまわしたこと、みんなで戦って捕まえて、今は牢屋にいること、みゆさんから体を翡翠神に明け渡すことを条件に霊魂制御の魔法を貰ったこと、突然空腹になったこと、遡楽さんとなんとか応急処置をしていたこと……話したらすごく長かったよ。
「……」
帆野歌さんは黙り込んでしまった。帆野歌さんにしてみれば勝手な話だ。勝手に争って、勝手に魔法を放棄された。
何か失ったものもあるのだろうか?その表情は暗かった。
「まあ、これからよろしく。無茶な戦いで魔法が解除される可能性があるから、平穏に生きて」
帆野歌さんはしばらくするとそう言って去っていった。
「あまり気にするな、やりたいことをやるべきだし」
遡楽さんはそう言ってるけど……
でも世界の重要なものを背負っている状態なわけじゃん。そんなこと言われても気楽に動けなくなっちゃったよね。
今回世界への反逆者の拠点に行ってもらったけど、毎回こんなふうにするわけにはいかないし、強くならないと。
結局これじゃん。どんだけ強くなったって上限とかないから満足は出来ないし。はっきりしてて、すごくいいね。
ここにはユェンユェンがいる。日生蓮も。
私は2人の元へ急いだ。特訓をお願いするために。




