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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
属性奥義
120/177

飢饉

「校長先生?」

 魔法学校の生徒会長、闇空帆野歌(やみそらほのか)は校長先生と言われる存在との連絡を試みていた。

 連絡装置である水晶玉に向かって話しかけている。

「校長先生?」

 しかし、何度呼び掛けても返事は返ってこない。

 不思議なことだ。今までは必ず即座に返事が返ってきていたというのに。

 その上、闇空帆野歌への校長先生の力が弱まっている。魔力制御の援護と効果範囲の拡大を行ってもらっていたのだが、それが消えかけてしまっているのだ。

 魔法学校の最高機密。それは闇空帆野歌の印象操作を校長先生が補助する形で展開された魔法。霊界では空腹を感じないようになっているが、それはその魔法の恩恵だ。

 この魔法が解けてしまえば、今まで食事をせずに過ごせていたはずの霊界で、突然全員が食べ物を欲するようになる。

 そうすれば大飢饉となってしまうのは想像に難くない。

「校長先生、応えてください……いえ、応えなくてもいいので、魔法の補助を……」

 闇空帆野歌は今、ほとんど一人でその大規模な魔法を維持している状態であり、肉体的にも精神的にも限界である。

「お姉さま!」

 そんな闇空帆野歌の横に、一人の人物が駆け寄ってきた。妹である闇空帆傘(ほがさ)だった。

「なんてことを……どうしてよぉ!」

 闇空帆傘は涙目でそう言った。限界ギリギリな闇空帆野歌は、魔法学校の生徒にかけていた自分を悪質な人物であると思わせる印象操作の維持が出来ていなかった。

 印象操作の解けた闇空帆傘は、姉を慕う健気な妹である。

「ばれちゃったか……私が悪役になれば生徒は団結できるからね。私、自分の魔法にものを言わせて楽してたよ……」

 苦し気ながらも闇空帆野歌は嬉しそうだった。妹と再び分かち合えたのはとても喜ばしいことであるらしい。

「私にくらい言ってくれたって……とにかく、今は援護するからぁ」

 闇空帆傘はそう言って、姉に寄り添い、その背中に触れる。そこに自身の魔力を注ぎ込む。

 本来他人に魔力を譲渡するのはかなり難易度の高いことであるが、血縁関係などがあれば魔力の質が近いため、簡単に出来る。

「……それにしても、校長先生は何をやってるんですかぁ?お姉さまにこんな無茶させてぇ。最低ですぅ」

 闇空帆傘は終始、校長先生への悪態をついていた。


 そんな姉妹の努力むなしく。

 大規模な魔法が壊れるのは時間の問題だった。




 

 珠夜(たまよ)さんに謝ることしか私、星月夜翡翠(ほしづくよひすい)には出来なかったけれど、結局大丈夫って言われて押し切られてしまった。

 ユェンユェンと日生蓮(ひなせれん)は大丈夫そうだし、一応落ち着いた。

『校長先生?』

 そして、さっきから頭に声が響いてくる。

 校長先生って何?

 なんとなくだけど、霊魂制御が暴走?しちゃってる気がする。

『校長先生?』

 また聞こえたよ。

 みゆさん、もしかしたらこの魔法を使って誰かと連絡を取ってたのかもしれないな。ってことはみゆさんどっかの校長か……すごいな。

 霊魂制御を別のことに使っちゃえば止まるかな。ということで、意味もなく周囲の気配を探った。

 これ以上は声が聞こえなかったから、止まったんだと思う。

 でも、次にはさらに不思議なことが起きた。

「お腹、すいた……」

 そう言えば、ここ数日どころかずっとご飯を食べてなかった。でも、空腹感は感じてなかった。

 どうして今になっていきなり……?

「翡翠ちゃん……なんかお腹すかない?」

 珠夜さんも同じことになっているらしい。

「そうね、今まではすかなかったの?」

 首を傾げる望初(のぞめ)さんも……なんかいつの間にかいたけど、気配消すのうますぎないか?

 何が起きているの?

「印象操作が解けたんだぁよ……はぁ」

 よく分からないけど説明してくれた呪莉(じゅり)さんも気だるげだ。

 腹が減っては戦が出来ないとか言うけど、本当にその通りだ。これじゃあ誰も戦えない。

「……私は大丈夫、ひなせ?」

 ユェンユェンは常に暗めな表情をしているから、よく分からない。やせ我慢してなければそれでいいけど……

「我も問題ない」

 日生蓮も大丈夫なようだ。この差は何?

「死神は本当に食事がいらないんだぁよ。ユェンユェン、君は元死神だぁね?その仲間である日生蓮もねぇ」

 ユェンユェンが元死神である可能性は前から考えていたけど、本当にそうだったのか……

 というより、それってまずいよね。空腹を感じていない元気な死神が攻めてきたら、私達迎え撃てないよ。

「我が、元死神 ……」

 日生蓮が鎌を取り出して、納得したように頷いている。物騒だからしまってください。

「食堂の位置は分かるねぇ……?空腹が辛いのは分かるが、絶対に行ってはいけないよ。今頃争奪戦が始まってるだろうからねぇ」

 呪莉さんがそう言ってどこかへ歩いて行ってしまった。方向的に牢屋の方だけど……

 今の言葉の意味は、空腹を感じているのは私たちだけじゃなくて、希望学校の生徒全員だからってことだ。

 このままじゃ敵との戦いどころか食べ物の奪い合いで内戦になっちゃうから行くな、って呪莉さんは言いたかったんだよね。

「だとしても、食料がないのは困るよね……」

 珠夜さんが不安げに話す。

「そうは言っても、争ってエネルギーを使って、余計に空腹になるのも得策じゃないわよ」

 望初さんがそんな珠夜さんをなだめる。希望学校の生徒って普通に超強い人も混ざってるからね。

 でも、一体……

「翡翠、来てほしいんだぁよ」

 呪莉さんが戻ってくるなり、私の手を掴んで強制的に引っ張ってきた。とりあえず素直についていく。

 うぅ、何が何だか……


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