虹蝶みゆ戦
私、星月夜翡翠は仲間と共にみゆさんと戦っていた。
そして、今まさに吹き飛ばされていた。
「固有魔法、無属性、衝魂」
望初さんがその隙にみゆさんに魔法を打ち込んでくれる。
「あなたの魔法、不思議よね」
みゆさんがそう言いながら望初さんを避ける。
私は壁にぶつかった、早く戦線に戻らないと。
呪莉さんがどこからともなく取り出した笛を吹き始めた。
「あなた、どうして私の邪魔をするの?」
みゆさんが呪莉さんに尋ねる。
「後悔しているからだぁよ。昔、みゆを信じたことをねぇ」
笛を吹きながらどうやってしゃべっているのか全く分からないけれど、呪莉さんは淡々と答える。
「私が今回も酷いことするって思ってるってこと」
みゆさんが苛立たし気に話す。
「……」
呪莉さんは何も言えなかった。
そうだよな。虹蝶みゆってだけで私たちは逃げた。絶対にヤバいことになるって決めつけて。ただ遊びに来ただけかもしれないのに。
みゆさんの事情、結局何も聞いていないよね。私たち、勝手に悪い人だって決めつけて、逃げて、戦って……結構酷いことしてない?
「……落ち着いて、仕方がないから。死神倒すのと一緒」
ユェンユェンがそんな私の心を見透かしたのか、そんなことを言ってくれる。そうだよね、死神だって相手の事情とか聞かずに倒してたんだ。それと、同じなんだね。
それで、いいのかな?
「……いいんだよ」
ユェンユェンがそう言ったから、いいってわけじゃないと思う。これは、自分の中で答えを出さないといけないことだ。
でも、今は……とりあえず戦わないとやられちゃう世界にいるんだから。
ユェンユェンの言いたいことは分かる。相手が絶対悪いわけじゃないとしても戦い続けないと自分がやられる。だからこそ、強引にでも自分を正当化していないと身が持たない。精神的に病んでしまう。
昔もこんなことを考えていた気がする。成長、してないな。
目の前のことにまず集中する。それが、できてないんだと思う。
でも、今それが一番大切なことだと思う。
真っすぐにみゆさんを見る。どうやって倒すか、精一杯考える。
「くっ……」
今、呪莉さんの笛によるデバフ的なやつでみゆさんが若干苦しそうだ。
結界奥義も重力制御も干渉制御もあまり効果がない。属性奥義は避けられる。
だったら。
「結界奥義、属性奥義」
目指したのは、魔法が強化される結界。
呪莉さんの魔法も、みんなの魔法も強化して、一気に畳みかける。
でも、みゆさんの魔法も強くなっちゃっているから、気を付けないと。
「珠夜!」
望初さんが珠夜さんに指示を出してくれている。望初さんと一緒に魔法を確認したし、私の作戦は伝わったのだろう。
「……澄、やるよ」
ユェンユェンと澄ちゃんも魔法を構えた。
「超級魔法、属性混合、灼熱爆風」
「超級魔法、水属性、蒼海嵐舞だよ」
「……超級魔法、氷属性、絶対零度」
三人の魔法が同時にみゆさんに向かう。
「こゆ……」
みゆさんも詠唱して対抗しようとしたが、呪莉さんの笛はそれを許さない。
そっか、相手の魔法を封印すれば、強化されちゃってても問題ないんだ。
「……んっ」
みゆさんが苦し気に一歩下がった。
魔法が効いたようだ。
「固有魔法、無属性、衝魂」
そこで後ろに回り込んだ望初さんが、冷たい目でみゆさんを見つめながら魔法を発動した。
一瞬のことだった。
私たちまで魂が揺さぶられたような気がした。
それほどまでに強化された望初さんの魔法は強かった。
みゆさんは倒れた。それほどまでに魔法は強かった。
それが意味することは、反動がそれくらいに強いということ。
「ゾメッチ!?」
そこに気が付いてなのか、珠夜さんが望初さんに駆け寄る。
「うぅ……頭が痛い……ごめんなさい。あなた、誰かしら?」
望初さんの言葉に耳を疑った。
珠夜さんと望初さんは親友だったよね。たまに喧嘩してるけれど、それでも仲直りして、一緒にいたよね?
でも、私より珠夜さんのほうが驚いていると思う。珠夜さんの表情は固まっていた。
「……ただの魔法の反動じゃない、何かされてる」
ユェンユェンが淡々と呟く。でも、その視線は揺れていて、動揺が感じられた。
「ゾメッチ?マヨタンは舞羽珠夜だよ……」
珠夜さんは話す。苦しそうに、辛そうに。
「えっと……私が、その……ぞめっち?」
望初さんは本当に珠夜さんのことを知らないように見えた。記憶喪失だよね、これ。
「みゆにとって、衝魂は脅威だった。だから、記憶ごと魔法を失わせようとした可能性が高いんだぁよ」
呪莉さんが倒れたみゆさんを恨めしげに見つめている。
「タッちゃん……」
澄ちゃんが心配そうに珠夜さんを見ている。
「ゾメッチ……」
涙目になった珠夜さんには、誰も声をかけられなかった。




