戦闘開始
「見つけたわよ」
聞こえてきたのはみゆさんの声。
待ってました。
私、星月夜翡翠は深呼吸して構える。全力で戦うだけ。
「全く、結局こうなるならば最初から逃げる必要などなかったのにねぇ」
呪莉さんが正論を言いつつ加勢してくれる。
「……ふふっ」
みゆさんが笑った。
それだけで、寒気がした。
「……上」
ユェンユェンに言われて上を見る。
「え……」
思わず声が出てしまった。
そこにあったのは目を見張るほど大きな魔法陣。これから何かとんでもないことが起きるのは簡単に想像がつく。
……お前は。
……翡翠じゃない。
!?
頭の中にノイズが走る。
「暴走しないように気をつけるんだぁよ」
呪莉さんがそう言っている。
暴走って……昔のれみさんみたいな?やばくない?
「うぅ……」
珠夜さんの頭にもノイズが走ったのか、苦しそうだ。
戦わなきゃ始まらない……!
一旦、重力制御をみゆさんにかける。効果はほぼないだろうけど、一応。
「……魔法陣への対処が最優先」
ユェンユェンがそう言って、飛び上がる。
呪莉さんがその言葉に頷き、笛を吹き始める。
ユェンユェンが魔法陣に触れたのと呪莉さんの笛の音色で、魔法陣が歪み始める。魔法陣の維持のため、みゆさんの意識がそっちへ向くのを感じた。
「中級魔法、無属性、超攻撃」
「超級魔法、水属性、蒼海嵐舞なんだよ!」
その間に望初さんと澄ちゃんがみゆさんに攻撃を仕掛ける。
なんだか頭のノイズも消えて、すっきりした。
私も属性奥義で攻撃する。
「超級魔法、火属性、灼熱絶火」
珠夜さんも魔法を放つ。元気になってそうで何よりだ。
すべての魔法が直撃した。
はい、知ってますよ。どうせ無傷なんでしょう?
「ふぅ……」
やっぱり、みゆさんは軽く息を吐いただけだ。これだけの魔法をぶつけたのに。
「……ないす」
でも、確かに効果があった。
今の魔法がぶつかった一瞬の隙で魔法陣が完全に壊れたのだ。
呪莉さんとユェンユェンのおかげだ。
「分かったわ、呪莉。あなたも凱阿みたいになりたかったのね?」
みゆさんは静かに話す。でも、その声からは怒りを感じた。
「そうだねぇ、凱阿みたいに強くなりたいとずっと思っていたけど、傀儡になりたいわけではないんだぁよ」
呪莉さんは淡々と応答する。
凱阿ってさっき遡楽さんがなんか言ってた人だけど、結局誰なんだろう。
「ヒッちゃん、澄もよく分からないんだよ。でも、戦うだけなんだよ」
澄ちゃんの目はいつも通り輝いている。その目には確かに希望が宿っていた。
そうだよね。余計なことを考える必要はない。むしろそんな場合じゃない。
「……くるよ」
ユェンユェンの声で身構える。
みゆさんは詠唱もしない。魔法を構えることすらしない。息をするように魔法を放ってくる。
だから、何をしているのか全く分からないのだ。
何もしていないように見えるけれど、さっきから寒気を感じている。
一体何をするつもりなのか全く読めなくて怖い。
「固有魔法、翡翠神、魂魄制御」
そんなみゆさんが、詠唱をした。
多分、詠唱なんていらなかったのだろう。でも、敢えて詠唱をしたのだろう。
私に魔法を見せつけるため。
私が強くなろうとして、翡翠神の魔法を手に入れようとすれば、必ず接触することになるから。
「……」
ユェンユェンは目を閉じて、黙っていた。でも、辛そうな表情だ。
「くっ……」
呪莉さんは何かから逃げるように動き回っていた。
みゆさんが魔法を打ったのはこの二人のみのようだ。
私と珠夜さんはともかく、望初さん、澄ちゃんも狙われてない。どうして?
「脅威だとみなされていないからでしょう、任せなさい」
望初さんが私の思考を読んだかのようなことをいい、どこかへ走り去った。
これは望初さんが後ろから回り込む的な作戦だな。
「澄は正面から行くんだよ」
澄ちゃんが望初さんを隠すためにも派手に魔法を放つ。
私も……
「固有魔法、翡翠神、結界奥義」
結界を使ってみゆさんを両断しようとしている。
敢えて私も詠唱した。挑発になるといいけど……
「がっ!?」
気が付いたら目の前に移動していたみゆさんに殴られた。びっくりするくらい体が吹っ飛んでいく。
挑発、効きすぎちゃった。痛い……
でも、この隙に……
望初さん、お願いします。




