訪問者
「何をしに来たのか聞かせてほしいんだぁね」
珠夜さんに呼ばれて私、星月夜翡翠は望初さんと共についていくと、呪莉さんが誰かともめていた。
根元は水色だけど、毛先は赤という不思議な髪色。綺麗な紫の目を持つその人の頭には虹色の蝶がついていた。
もしかして、虹蝶みゆさん?
「呪莉には関係ないでしょ?」
みゆさんかもしれない人が気丈に言い返す。
「どういう状況ですか?」
とりあえず、近くにいた遡楽さんにそっと聞いてみた。
「私も、よく分からないけど……とりあえず、虹蝶みゆが来てる。ほぼ確実に何かヤバいことが起きる、警戒を怠らないで」
やっぱりあの人みゆさんなんだ。それにしても、怖いな。
「ヤバいことってどんな……?」
私はさらに尋ねてみた。
「分からない。でも、凱阿さんを……2代目魔法屋店主を柘榴神にしたのは、みゆだよ」
なんか意味が分からないことを言われた。
柘榴神ってれみさんじゃ……?
「やっぱり、そうだったんだ……」
珠夜さんが胸に手を当てながら、神妙な顔で呟く。
「当たってほしくない推測だったけれどね」
望初さんは辛そうに話す。
いや、私完全に置いて行かれてるけど……
今さ、世界の根幹にかかわるレベルの超重要情報がさらっと言われた気がするけど、何も理解できない。
「だとすると、虹蝶みゆの目的は……可能性が高いのは珠夜とあなた」
望初さんがそう言って私を見る。
「その通りだね、呪莉さんに意識が向いているうちに……結空」
遡楽さんが結空さんに合図を送る。
私と珠夜さんを逃がすつもりのようだ。
「了解です、固有魔……」
「ばれてないとでも?」
しかし、結空さんの詠唱は途中で遮られた。みゆさんによって。
「時間遡行」
遡楽さんがそんなみゆさんに即座に魔法を放つ。
でも、みゆさんは微動だにしない。効いてない……わけじゃなかった。
最初から遡楽さんが狙ったのは、みゆさんじゃなかった。
結空さんに魔法がぶつかり、時間が巻き戻る。詠唱を止められる直前まで。
「固有魔法、無属性、空間結合」
結空さんの魔法が発動した……はずだった。
「無意味」
みゆさんによって魔法が打ち消された。具体的にどうやって止めたのかは全く分からないけど。
「もう狙いが君たちであることは明白……こうなったら……走れ!」
遡楽さんに促されるまま、私は逃げた。重力制御で浮いてスピード出してるだけで、全然走ってないけど。
「固有魔法、風属性、俊足」
珠夜さんも別方向へ逃げたようだ。
でも、最低でもどっちかは捕まるだろうね。だってみゆさんなんかヤバいもん。
今できるのは逃げるだけ。余計なことは考えず、それに集中しよう。
最強の逃げ場はどこだ?
人間界の行っても普通に追いつかれる気がするし、死神山は普通に危ない。魔法学校もよく分からないし。
今まで困った時は店主の間へ行ってた。でも今回はそれが出来ない。
どうしよう……?
そんな風に思って来たのはここ、澄ちゃんのいる寮。
事情を説明すると、澄ちゃんはすぐに理解してくれた。
「鍵閉めないとなんだよ」
澄ちゃんがそう言って扉に向かって行ったその時、外から扉が開かれた。
……もうみゆさんが!?
「……やっぱり、翡翠、いた」
ユェンユェンだった。もう、心臓に悪いよ。
澄ちゃんが改めて鍵をかけ、私たちは話し合う。
「今この瞬間は大丈夫だけど、ずっとここにいられるわけじゃない」
私の言葉に澄ちゃんもユェンユェンも考え込む。
本当にどうしよう。
そもそもみゆさんに捕まったらどうなっちゃうんだろう。
さっきまで望初さんと魔法について話し合ってたはずなのに……目まぐるしいよ。




