話し合い
勝った。私、星月夜翡翠はそう確信していた。
しかし、そう一筋縄じゃいかないのが留年生。辛い修行をしてきた者なのだろう。
三人が、無傷で立っていた。そう、三人が。全員が。
とは言え、私と戦っても勝てないと分かったというのも事実なのだろう。
「話を、しませんか……?」
明里先輩がそう言った。
そもそも思い出すのだ。私が希望学校にもう一度来たのは、れみさんに謝るため。戦っている場合でないのは事実である。
「わかりました」
私は素直に肯定した。
三人ともその言葉に安堵したようだ。ホッとため息をついている。
「もちろん、これは私たちの降伏と思っていただいて構わないのです。よって、私たちはあなたに有利な条件を提示したいと思うのです」
幽衣先輩が魅力的なことを言っててくれる。
「何なりと言ってください。その代わり希望学校に危害を加えないことを約束してほしいんです」
明里先輩もだ。
私がしたいことってなんだろう。条件は、複数提示しても問題ないはずだ。色々考えてみる。
まず、とりあえず、れみさんに謝りたい。それから……
「二つお願いします!一つ目は、松浦 れみさんに会うことです。二つ目は、この希望学校に通いたいということです!」
そう、希望学校に通いたい。私の魔法を極めたい。強いし、応用もたくさんできる。だから、もっともっと強くなりたい。そして、魔法屋に残って、望初さんと珠夜さんと子栗鼠ちゃんと一緒に戦いたい。だから、強くなりたいから……
メロディー先輩が口を開く。
「一つ目については〜い、い、よ。でも、二つ目は〜き、つ、い」
幽依先輩が補足する。
「一つ目は問題ないのです。二つ目は、私たちの権限では難しいということなのです。学校の入学者は校長先生が管理しているのです。校長先生にお願いすることはできるのですが……」
明里先輩がさらに補足する。
「全て校長先生の判断となってしまうため、私たちで絶対に確約することが出来なくって……すみません」
まあ仕方がないかな。
「二つ目はできたらでいいです。でも、できるなら一つ目は今すぐにお願いします」
謝る。その行為をするのはできるだけ早い方がいい。
幽依先輩が指示を出す。
「アカリン!松浦 れみを確保してほしいのです。メロディーは教室を一つ占拠してもらいたいのです。私はこの方を学校に連れていくのです」
「「分かったわ」」
明里先輩とメロディー先輩が同時に返事をして走り去っていく。
「出発するのです」
幽依先輩はゆっくり歩き出す。私は慌ててついて行く。
そうして、希望学校の校舎に向かう。
私はすっごく小声で詠唱する。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
明里先輩への干渉を外す。全身に浴びていた返り血が私の体を透けて地面に落ちていく。私の体は綺麗になる。血が全身についているなんて、恐ろしいからな。
幽依先輩は振り向かず進んでいく。真っ直ぐに。
あれから20分ほど歩いた。道中では幽依先輩と一言も喋らなかった。
そして、今私は教室の机の一つに座っている。私と向かい合わせになるように設置された机にはれみさんが座っている。私たちの周りには幽依先輩、明里先輩、メロディー先輩がいる。
「何のご用ですか?、とれみは、れみの身のために、れみ的に、尋ねてみます。不審者さん?」
開口一番がそれだった。私は不審者らしい。
明里先輩がれみさんを宥める。
「確かに不審者であることには変わりませんが、気軽に喧嘩を売って良い相手ではありません」
れみさんは納得したように俯く。一回ぶっ飛ばされているからな。
でも、私はとりあえず本来の目的を果たす。
「ごめんなさい!」
「はい!?、とれみが、れみですら、れみだって、ものすごく驚いています」
れみさんにとても驚かれた。先輩方三人も驚いている。説明しないと。
「はい!私が普通に何も知らずに探検していて、不審者に見えるのは当然なんです。それなのに、私が追いかけられた被害者であるように振る舞って大爆発を起こし、私の、私の事情にれみさんを巻き込んでしまいました。本当にごめんなさい!!」
れみさんはまだ驚きを隠せていないが、話を聞いてくれる気にはなったようだ。
「れみも、れみでも、れみが、早まって不審者であると決めつけたことはよくなかったです。ごめんなさい!、とれみは、れみも、れみが、誠意を込めて謝ります」
れみさんが私の言葉に納得してくれた。れみさんに謝ることができた。よかった。
その様子を見て、幽依先輩が声をかけてくれる。
「もう大丈夫なのですか?そうしたら、とりあえず解散にするのです」
もう大丈夫。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
メロディー先輩と明里先輩が外の扉を見た気がした。
どこからか複数の足音が聞こえた。
そして、教室の中に誰かが入ってきた。水色の髪を一本の三つ編みにして、右の方から下ろしていて、藤黄の瞳をした人だった。右目の下にほくろがあり、威圧があるように見える。というか、普通にすごい気配を感じるんだが……服はセーラー服の形のどこかの制服を着ている。
「お話の最中失礼致します。魔法学校の生徒会長の闇空 帆野歌と申します。魔法学校の代表として、皆様にお知らせがあります。校長先生からお言葉を頂戴致しました。星月夜 翡翠の希望学校への入学を認める、とのことです。では、失礼致しました」
どこまでも敬語で去っていった。魔法学校の生徒会長さんかぁ。すごい人に会ってしまった。
って、今生徒会長さんなんて言った!?希望学校への入学を認める、って言ってなかった!?ヤッタァー!
「舞羽さん、ありがとうございます」
「感謝なのです」
明里先輩と幽依先輩が誰かに向かってお礼を言っている。
舞羽?さん。聞き覚えがあるような。
生徒会長さんが入ってきたのと別の扉から人が入ってくる。
赤い髪を高い位置でツインテールにしていて、橙色の目をした人が入ってきた。
そう、珠夜さんだった。思わず名前を呼ぶ。
「珠夜さん!でも、どうしてここに?」
珠夜さんはにっこり笑って答えてくれる。
「翡翠ちゃん!無事でよかった。まあ色々あったんだよ。ゾメッチが心配していたからちゃんと魔法屋にも行ってあげてね!」
色々あったのか……全然分からない。
「珠夜さん!ちゃんと説明してください」
珠夜さんは困ったようにため息をつく。
「分かったよ」
珠夜さんの説明が始まった。




