救いの手
「翡翠ちゃん!?」
るるの声が聞こえた気がした。
ここは?
私は?……星月夜翡翠か。
「死神は撤退させたんだぜ、大丈夫か?」
操乗ちゃん……?
「……血が止まった」
夢叶さん……?
「びっくりしたんだよ、操乗さんから翡翠ちゃんがいるって聞いて会いにきたら刺されてるんだもん」
視界もはっきりとしてきた。るるが、泣いてる?
「あいつ、5体くらいズタズタにしてきた。夢叶いないと死んでた、やり手だったんだぜ」
操乗ちゃんが戦闘を思い出してか冷や汗を浮かべている。
それにしても、どうやって藤原玲菜を追い返したのか気になるけど……
「……無事で何より」
夢叶さんは安堵しているように見えた。
そっか、私、助かったんだね。
みんなに助けられたんだね。
「助け、もらってば……り、私、ダメ……ね」
心が口から漏れてしまった。
まだはっきりしたと声は出ない。
「そんなことない、翡翠ちゃんが普段……」
るる、そこで言い淀まないで……
「今、助けて……らうだけ。だから、いつか……んなを助けられるように……」
口から出るのは願望ばかりだよ。ずっと強くなりたいとかならなきゃとか言ってるけど、結局これじゃん。そもそもこの3人は何も関係なかったはずなのに、私が巻き込んでしまったというのに。
私が霊界に興味を持って魔法屋を探したりしなければ、こんなことにはならなかった。
操乗ちゃんのロボットだって壊れちゃったっぽいし、迷惑ばっかりだよね。
もう、やめたいな……
出来もしないのに強くなるとか言うの。
でもやめられないな。
だって、強くならなきゃいけない理由がたくさんあるから……
足にあんまり力が入らない。それでも立ち上がる。
敵を倒すより増える方が早くて、大変だけど、1人ずつ倒して乗り越えていかないとね。
「霊界、いくの?」
るるの問に私は黙って頷いた。
「光輝も会いたがってたけど……止めはしないぜ」
天宮さん、元気かな?
私も会いたい気持ちはあるけど、急がないとね。霊界から急に消えた行方不明者って感じになってる気がするから、誰か探してるかも……いや、私なんかを探す人はいないか。
魔法屋の気配は大体分かる。
「みんな、ありがとう」
最後にそれだけ言って、私は重力制御で空を飛んだ。
魔法は、強いはずなんだけど……チート級に。
重力制御でそのまま魔法屋に飛び込んだ。
それはいいけど何も見えない。
干渉してないからかな。
干渉制御でいろいろ干渉した。
「わっ!」
びっくりしたように後退ったのは魔法屋店主の勇輝さんだった。
確かに、急に現れたら驚くよな。
「怖いわ!」
ん、怖いって言われた……
「だって、今あなた死神一体爆発四散させたんだよ。それってさ、私が内側から爆ぜる可能性もあったじゃないか」
早口で一気に捲し立てられた。
あれ、私さりげなくやばいことしたのかも。
まあ、勇輝さんは無事で、私も霊界に来れたから大丈夫か。
「ゾメッチ!」
珠夜の声、ね。
私、虹蝶望初は倒れていたのよね。衝魂を使ったから。
「世界への反逆者の拠点、抜け出せたよ!ゾメッチが日生蓮を倒して警戒されたのか、誰も来なかった」
それは朗報ね。
「はぁ、はぁ……全ての人が涼しい顔でこのペースで走れるわけではぁ」
帆傘が苦しげながらもしっかりとついてきている。
珠夜、私のこと背負ってる上に、全然本気で走ってない気がするけれど、それでもついていくにはだいぶ速いわね。
「着いた、希望学校!」
ここなら安心ね。あの子は結局見つからなかったけれど、確実に進展はしたし、良かったんじゃないかしら。
「ここ、わたし入るんですかぁ?」
帆傘が引き返そうとするが、珠夜寂しげな目をしたので辞めたようだ。
「一旦、店主の間行くよ」
その珠夜の言葉に帆傘が絶望感を露わにしたのは言うまでもない。




