異常事態
私、虹蝶望初は世界への反逆者と戦い始めていた。舞羽珠夜、闇空帆傘も一緒だ。
「あんなこと言ってごめんなさいですぅ、これは無理ぃ」
帆傘が逃げまどっている。日生蓮から。まあ、そうなるわよね。
「日生蓮は強いよ。でも、絶対倒せないってわけじゃないはず」
珠夜はそう言っているが、冷や汗が止まらない様子だ。
「コンのこと、忘れないでほしいコン」
挙句の果てに幻術が介入してくるという絶望的状況。
「珠夜、日生蓮は文字通り住む世界が違う気がするの。こっちも相応の力をもちださないとダメよ。それこそ、神レベルの」
私の言葉に珠夜が俯いた。やっぱり、隠していたわね。私に心配をかけないためかしら、言ってくれて全然良かったのだけれど。
「固有魔法、柘榴神、重力制御」
珠夜が詠唱した。日生蓮の動きが若干鈍ったように見えるわ。これなら魔法を当てられるかも……
「うぅ……れみ……」
とはいえ、珠夜も無限に力を使えるわけではなさそうね。使いすぎると柘榴神に乗っ取られるといったところかしら。
「固有魔法、翡翠神、結界奥義……え?」
私の魔法で現れた結界が日生蓮を取り囲む。
あら、私は属性奥義しか使えなかったはずなのに。
まあ、今なら一気に倒せるわね。好機は利用しないと。
「超級魔法、水属性、蒼海乱舞!」
「超級魔法、風属性、爆風神刀!」
帆傘と珠夜が日生蓮に思いっきり魔法を打ち込んだ。
「固有魔法、翡翠神、属性奥義」
私は後ろにいる小狐丸鈴に向けて魔法を打った。
日生蓮は小狐丸鈴を守ることを優先したようで、帆傘と珠夜の魔法をくらいながらも、結界を破り、私の魔法をはじいた。
本当にでたらめね……
「一旦撤退、異常事態が発生している」
「固有魔法、火属性、蜃気楼・幻だコン」
見失ったわね。追跡防止に幻で姿をくらましてからの撤退……なかなか手ごわいわね。
一応、しのぎ切ったということでいいのかしら。
それにしても異常事態って……
「いや、異常事態しか起きてないわよぉ。柘榴神の魔法を使う人なんていないし、翡翠神まで出てきちゃったんだからぁ」
帆傘がそう言っているけれど、本当にその通りだわ。
私たちからすると日生蓮の強さの方が異常だけれど。
「それにしても、結界奥義って翡翠ちゃんが使ってた魔法……」
珠夜の言う通り、あれがどうして発動したのかは私にも分からないわ。
「でも、私にあの子の魔法が使えたの、確かに変 ……」
そう言った瞬間、頭の中に最悪の事態がよぎった。既にあの子が殺されている可能性。
「行って、実際見てみなきゃわからないよ」
珠夜の頭にも最悪の事態が浮かんだのか、珠夜の表情が険しい。
「もう少しこのあたりで、世界への反逆者の拠点を探しましょうか」
そうして私たちは捜索を再開した。
ーー
ここは?
私は……なんだっけ?
そう、私は星月夜翡翠。
確か、炎帝さんが死んで、強くなりたいって思って、メイさんについていって。
それで、その後……分からない。
「こんにちは、そしていただきますなの~」
目が開かない。何が起きているのか分からない。
なんか、額を触られている。
この声は繭羽先生?いや、ちょっと違う気もするけど。
「あれれ~?」
目の前にいる人の困惑だけが伝わってくる。
状況が全く理解できない。
「琴羽様、大変コン。虹蝶望初が翡翠神が持っていたはずの魔法を使ったコン!」
望初さん?どうかしたのかな?
というかこの声、小狐丸鈴?
「なるほどね~。魔法が自動的に逃げちゃった感じね~」
うん、誰か説明して。それかせめて目を開けられるようにしてほしいな。
「我も確認した。その上、虹蝶望初の同行者が柘榴神の魔法を」
あれ、なんか日生蓮いる?まずくない?
だって日生蓮ってユェンユェンのお墨付きのとんでもない強さじゃん。
「どうするん?次はうちの番か?」
あれ、この声は夜光ミチヨ?ツェンツェンがちゃんと捕まえてたはずだけど……
本当に今どういう状況?
「うん、どうしようかな〜。虹蝶望初も、その柘榴神の魔法の同行者も殺さずちゃんと捕まえてほしいから〜。いいこと思いついたの~」
柘榴神の魔法……多分珠夜さん。使えるようになったんだ……
「ミチヨ、わざと負けて、この場所晒しちゃって。それなら確実に捕まえられるの~」
望初さんたちが危ない。よく分からないけど、夜光ミチヨをここから出しちゃいけないんだ。
干渉制御。
重力制御……
結界奥義?
だめだ、発動しない。
なんだろう、体から魔法を使っていた感覚も全部抜けちゃった感じ。
どうしたら……
『翡翠』
君は私。私は神だ。
あれ、この感じ。初めて干渉制御を使った時と一緒……
立て、動け!
なんかまた意味分からないこと言われてるな。
あ、そういうことか。
干渉制御が使えないということは、人間界の存在である私が霊界にいること自体がおかしいんだ。
つまり、簡単に脱出可能。
今は、霊界から私に干渉していることになるけれど、大した力じゃないはずだ。
そう、立って動くんだ。
干渉の力の穴を狙って。
そう思ったら私は何も見えないまま適当に走っていた。
考えれば何も見えない理由も単純だ。光に干渉できていないのだから。
逆に考えると、他の人からも私は見えていないかもしれない。走り回っても邪魔されないということはその可能性が高いだろう。
琴羽様?みたいな人はよく分からないけど。
音が聞こえるということは……空気?
それなら適当に走り回ってどこかの壁にめり込んで空気に触れない場所に行ければいいのかな。
無事どこかの壁にめり込めたのか。
気が付けば目が見えるようになっていた。
見えた景色は人間界のものだった。




