怪しい少女
「ゾメッチ、翡翠ちゃんは魔法学校のいる可能性が高いってこと?」
魔法学校へ向かう道中、私、虹蝶望初は珠夜にそんなことを聞かれた。
「いいえ」
私はそう言い切った。
「あれ、じゃあなんで魔法学校に……」
珠夜が首を傾げているわ。説明が必要かしら。
「魔法学校の生徒にも協力してもらって捜索をしたのだから、あの子がいる可能性は限りなく低いわ。だけど、犯人の情報が魔法学校で見つかる可能性は高いもの」
魔法学校の生徒全員に仕組まれていたら何も言えないけれど……
「その可能性、全然あるよ」
思考を読まれたのか、珠夜に指摘される。
「どうして……?」
珠代の目は真剣、適当に言っているようには見えない。理由を聞いてみたいところね。
「魔法学校の生徒会長、おかしいくらいに生徒からの印象が悪いの。あんなにいい感じの人なのに」
確か、生徒会長は闇空帆野歌。話していて悪い印象はあまりなかったけれど……
珠夜が言いたいのは、闇空帆野歌が何らかの魔法で生徒たちの自分への印象を操作できる可能性と、それを用いた大規模な仕掛けがあったかもしれないと言うことね。
「魔法学校自体の信用もあまりないものね」
呪莉さんから聞いた話だと、魔法学校が希望学校との連絡を絶ったことが原因で希望学校が孤立したから、魔法屋に死神三傑が来るなんていう異常事態になっていたというわ。闇空帆野歌とは別問題で、魔法学校を信じられるかと言われればそうでもないのよ。
「やっぱり2人でもう一回、魔法学校全体を探さない?」
珠夜の提案に頷いた。本人がいなかったとしても、必ず手掛かりは見つかるはずだもの。
もう直ぐ魔法学校へ辿り着く。
「でも、珠夜、一旦生徒会に殴り込みに行ってもいいかしら?」
私の提案に珠夜が真っ黒な笑みで頷いてくれる。
少し、ストレスも溜まっていたのよね。だって希望学校が死神撃墜に利用された感が強かったのだもん。逆恨みだとしても、ストレスは溜まっちゃうのよね。
「何用でしょうか?」
生徒会長、闇空帆野歌のその一声で心臓が跳ねるのを感じたわ。
珠夜に背負ってもらって全速力で息を潜めてここまで来たのに、認知が早すぎる。
まあ、見つかったなら仕方ないわね。
「改めて、翡翠ちゃんのこと本当に知らないの?」
珠夜が高圧的に話している。
「申し訳ない……」
闇空帆野歌は本当に悔しそうに俯いている。
「他の人は?」
この部屋のいるのは闇空帆野歌だけじゃない。闇空帆傘もレンレンも、あとメイド服の少女もいる。だから私は一応他の人にも尋ねた。
「知りませんよぉ」
闇空帆傘は鬱陶しそうに話す。
「今、姉に探してもらっているのですが……」
レンレンの姉って……ユェンユェンね。心強い。
「……ふふっ」
メイド服の少女は何も言わずにただ笑った。明らかに怪しい態度をしているけれど、どうなのかしら。
「何か知っていることがあれば、なんでも教えてほしいのだけど」
ということで、私はメイド服の少女に詰め寄った。
「あ、すみません。みんな嘘がうまいなと……」
このメイド服の少女が犯人の可能性が高いわね。レンレンが言ったことが嘘だとするとおかしい。レンレンの話はユェンユェンに聞くだけで確かめられる。
そんな脆い嘘をつくレベルでしか結束力がないとしたら、魔法学校の生徒総出で捜索した時の時点でボロが出ているはず。
レンレンが超愚かな可能性はなくもないけど、見た感じだとしっかり戦術的に動ける人だったはずよ。
「あなた、何者?」
だから私はメイド服の少女を問い詰め続けた。
「魔法学校の生徒会の一員ですよ、メイと申します」
聞きたいのはそれじゃないのだけど……上手くはぐらかされたわね。
「ゾメッチ、その人怪しいの?」
珠夜の問いに私は頷いた。
「どうして私なんかに……私はみんなみたいにすごい魔法なんて使えないのに」
メイは悲しげな声で話す。
でも他の生徒会のメンバーはメイを庇おうとはしない。
「庇えないのよ、この子は死神と戦ってないし、私たちが証言できるアリバイがないから」
思考を見透かされたのか、闇空帆野歌が答えてくれた。
まあ、そういうことなら徹底的に問い詰めましょうか。
「メイ、あなたは何者?」
私がそう言うと、メイは突然立ち上がった。
「これ以上は往生際が悪すぎるかな」
メイはそう言うなり、部屋の外へ走り出した。
「固有魔法、風属性、俊足」
でも、珠夜の方が圧倒的に速い。
珠夜はメイを抜き去って立ちはだかる。
メイの速度が鈍ったので私が後ろから取り押さえた。
「逃げることこそ、往生際が悪いんじゃないかしら?」
これでゆっくり話を聞け……
メイの体が消えかかっていた。
この子、自殺を?
ダメ、止められないわ。
次の瞬間にはメイの体は完全に消えていた。




