留年生戦
空が眩しい。周りの景色も今まで以上に美しく輝いて見える。ただ、これは私、星月夜翡翠の姿も他の人に見えるようになったということで……
三島 幽依先輩に秒で見つかる。
「貴方は何者なのですか?制服を着ていないということは部外者なのですよね」
金髪に桃色の目をした人………とりあえずアカリンさんと呼ぼう、も私に気がつく。
「ユイッチ、どうしたの?あら、部外者かしら?」
まずいな!
でもさ、負ける気がしない。完全な自惚れではないと思っている。
だって、この人たちは魔法屋店主じゃない。ここからは私の独壇場だ。だから、威勢よく喧嘩を売ってみる。
「やりますか?」
三島 幽依先輩がアカリンさんを庇うように一歩前に出る。
「アカリンはこのことをメロディーに伝えてください!ここは任せて」
アカリンさんはだまって頷き走り去っていった。
アカリンさんは、おそらく小石 明里先輩だろう。明里とアカリンだし。
まぁ、とりあえず……手合わせといきましょうか!あれ、なんでこうなった?
初手は私!
「固有魔法!翡翠神!干渉制御」
三島 幽依先輩全てへの干渉を外す。魔法への干渉は元々外れていたはずだ。
次は、三島 幽依先輩の番だ。
「得体の知れない固有魔法なのです。時差攻撃なのですか?まあ、とりあえず希望学校を相手に喧嘩を売ったことを後悔するのです!超級魔法、雷属性、雷電轟撃」
さすがは超級魔法。望初さんがやっていた中級魔法とは比にならない。マジな雷が10個ほど束ねられたようなレベルだ。
というか、固有魔法を使わないということは、なめられているってことかな………
まあ、いいけど……私は構わず突っ込むのだ。
三島 幽依先輩は当たらない魔法に驚いている。
「避けるのがうまいのですか?」
試したいことがある。空気が爆発できるなら〜
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
地面への干渉を外す。体がどんどん地面に埋もれていく。
「一体、どんな魔法を使ったのです!?」
いい感じに体が埋まったところで。
「固有魔法、翡翠神!干渉制御」
地面に干渉する。
ゴバッ
耳をつん裂くような轟音と共に地面が割れた。特大クレーターが出来上がる。クレーターの外でも、辺り一面にヒビが入っている。
三島 幽依先輩は、かろうじて耐えているが、ものすごく息が上がっている。
「ハァハァ、やけに強いのです。もしかして、魔法屋を突破した死神なのですか?」
今は私のほうが優勢だ。しかし、
「ユイッチ!大丈夫ですか!?ユイッチがこんな短時間でやられるなんて……固有魔法、無属性、超治癒回復!」
アカリンさんが周りに6つのピンクのハートを従えて戻ってきた…後ろに金髪でエメラルドグリーンの目をした人を連れて。
「ユイッチがこんなに……先輩は〜お、い、か、り!!」
そんな言葉を聞いているうちに、いつの間にか三島 幽依先輩が回復している。
「アカリン、メロディー、三人で戦いましょう」
多分小石 明里先輩が名乗る。
「希望学校留年生の小石 明里。いきます!」
「希望学校留年生のメロディアス・リズミック。先輩は〜つ、よ、い」
「希望学校留年生の三島 幽依なのです。絶対に負けないのです」
明里先輩、メロディー先輩、幽依先輩だ。要注意人物全員敵に回してしまったぜ。
倒せなくはない気がする。魔法への干渉も外れているし。
とりあえず、
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
明里先輩とメロディー先輩への干渉も外しておく。
「先手を取られたのです。アカリンは火属性お願いするのです。メロディーの時間は稼ぐのです」
幽依先輩が素早く指示を出す。
「任せて!上級魔法、火属性、焼焔!」
明里先輩が魔法を放つ。直径6メートルに及ぶような火の玉が飛んでくる。珠夜さんの超級魔法よりは弱いと思われる。関係ないんだが。
「固有魔法、無属性『きらきら星』」
メロディー先輩は虚空から杖のようなものを取り出し、突然『きらきら星』を演奏し始める。
構わず突っ込む。狙いは明里先輩。さっき幽依先輩を回復していたからだ。回復役を先に潰すのは鉄則中の鉄則だろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
同じ手は通用しない可能性もあるが、思いっきり地面に飛び込む。走り幅跳びの要領だ。そして、大体明里先輩の真下まで潜り込む。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
ゴバッ
地面がはぜて、特大のクレーターの完成です!明里先輩は危険を感じて回避したようだ。無傷とは言わないが普通に数メートル先に立っている。幽依先輩も、メロディー先輩もそれぞれ回避している。
「アカリン!回復を優先するのです」
幽依先輩、的確な判断。しかし、私には策がある。
明里先輩に向けて思いっきりダッシュ。
「固有魔法、雷属性!巫女舞頼龍!!」
幽依先輩が、明里先輩を守るためにお祓いの棒を両手に、雷の龍を召喚する。
しかし、私には関係ない。
構わず突き進む。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
空気への干渉を外す。明里先輩は、私に構わず魔法を放とうとする。それは致命的だ。
「固有魔法、無属性、超治癒か……」
明里先輩へ思いっきり飛び込む。空気抵抗がなくなり、猛スピードで突っ込める。そして
「固有、魔法、翡っす、い神、干渉制御!」
前回よりは慣れたが苦しい。でも、今回は空気じゃない。
明里先輩に干渉した。
明里先輩が内側から爆ぜる。血飛沫が舞う。恐ろしくあっさりと、消滅していく。あたりに残ったのは血痕のみ。
私は、地面にスライディングして、飛び込んだ勢いを殺す。返り血を浴びて、髪や制服が汚れる。
一人、撃破!
「こ、有、ま、ほう?ひぃすいしん!干渉制御」
空気へ干渉。ハァハァ結構苦しいな。
「アカリン!?」
幽依先輩に明らかな動揺が走る。そこで、雷の龍の軌道がおろそかになる。
「アカリンの仇よ!くらって、死になさぁいい!!リズミック・ジムナスティックス!!」
メロディー先輩は、狂ったように魔法を放つ。
恐ろしい数の彗星。空から降ってきた。数は余裕で100を超えるだろう。『きらきら星』を奏でていたのはこの魔法を放つためか。
そっくりそのまま跳ね返してやろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御、固有魔法、翡翠神、干渉制御」
高速で2回唱える。1回目で衝撃への干渉を外す。これ、普通に便利だわ。2回目で、メロディー先輩の魔法に干渉する。そして、右手を前に伸ばし、最初に到達した彗星の一つを、真正面から受け止めた。
「なっ」
相当自信のある技なのだろう。相当驚いている。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
体の中から何かがごっそり抜けるような感じがした。もし、MPがあるなら、相当消費したのだろう。
メロディー先輩の魔法ごと、重力への干渉を外したのだ。全ての彗星が、行き場を失ったように浮遊している。私の体も浮いてきた。
幽依先輩が、メロディー先輩の隣に立つ。
私は、彗星の群れを背にして向かい合う。最高の布陣。
「メロディーしっかりするのです!」
そんな幽依先輩の声とともに、雷の龍がやってくる。幽依先輩の位置から、私に向かってくるように。私をすり抜けると、ちょうど彗星の群れに突撃するような軌道で。すごい速度で。
待ってました。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
魔法への干渉を外す。
私は今までの戦闘で感じていた。幽依先輩は必ず私を仕留めにかかると。
そして、魔法は私をすり抜ける。そして、雷の竜は猛スピードで彗星の群れに突っ込む。
思った通りだ、雷の竜は彗星を従える。そうして、それごと、私に突っ込んできた。がら空きの背中。でも、それらは私をすり抜ける。
そして、その竜と彗星がどこへ向かうかというと……
「メロディー!御免なさいなのです!私の失態なのです。敵を見あまったし、大きなミスを犯したのです。避けきれないのです!」
幽依先輩が諦めたように立ち尽くし、叫ぶ。その表情は絶望。
「ここまで強い敵がいるとはね。先輩も敵に自分の魔法が利用されるなんて考慮していなかった。気にしないで〜ど、ん、ま、い……ね?」
メロディー先輩も諦めている。自分の魔法であるだけに、威力をよく理解しているのだろう。完全に観念した様子で、肩をすくめている。
そんな二人に、雷の竜と彗星の群れが直撃した。




