魔法の誘い、異世界の門
マリアは一晩中眠れなかった。古びた本棚から見つけた一冊の魔法の書が、彼女の心をとらえて離さなかった。それは言葉の意味を知らぬままに詠唱され、あたかも眠りに誘うようにして彼女の意識を奪った。そして、目が覚めるとそこには広がる草原と、広大な異世界の市場だった。
「あれ? ここはどこ?」マリアは自分の声を聞きながらも、何か違和感を感じた。この広大な風景は一体どこなのか、そして自分はどうしてここにいるのか。彼女は周りを見回すが、それでもなお疑問は解けないままだった。
異世界の市場は、多彩な色と香りに満ちていた。マリアは驚きと興奮を抑えきれなかった。それぞれ異なる形状と色合いのテントが立ち並び、その中から人々が出入りしている。商人たちは独特な言葉で商品を説明し、購買意欲をそそるようなジェスチャーを交えていた。
「これが異世界の市場なの?」彼女はつぶやいた。地球のどこかで、こんな風に活気に満ちた市場が存在するなんて夢にも思わなかった。しかし、ここにいる自分が夢を見ているのか、それとも現実なのかを確かめる手立てはなかった。
市場の中心には魔法使いの店があった。その店には古びた本棚がずらりと並んでおり、その中には数々の魔法書が収められているのが見えた。マリアは一歩踏み入れると、その中に漂う特有の香りが鼻腔を刺激した。
「本当に魔法が使えるんだろうか?」彼女は心の中で疑問を抱きながらも、興味本位で本棚を眺めた。古びた書物の中に眠る知識が、彼女の新たな冒険を始めさせるのかもしれないと思いを巡らせた。
その時、店の奥から老魔法使いが現れた。彼は灰色の髪を頭の後ろにまとめ、深いしわが刻まれた顔を持っていた。しかし、その目には知識と経験に満ちた輝きが宿っていた。
「ようこそ、若き旅人よ。我が店へ。」老魔法使いは低い声で言葉をかけ、マリアを招き入れた。
「あ、はい、ありがとうございます。私、ここが初めてなんです。」マリアは少し緊張しながらも笑顔で答えた。
「初めてなら、尚更興味津々でしょうな。さあ、見よ、我が店に収められた魔法の本の数々を。そして、君自身の魔法の才能を見出すのだ。」老魔法使いは誇らしげに手招きし、マリアを本棚の前に導いた。
その瞬間から、マリアの異世界での冒険が始まったのだ。