3話.フィアナとエルマ
「ここが貴方のお部屋ですわ」
アルミナが手で示したのは、高価な物で埋め尽くされた、広い部屋であった。
「そう…なんで私をこんな
貴族が住むようなところへ?」
「デルゾート様の血縁者ですから」
エルマがアルミナを見つめて聞くと、そういった答えが返ってきた。
「デルゾート、ね…別にその子孫だからって何で
歓迎する必要あるんだか…」
ぼそりと小さな声で呟くと、それは聞こえていたようで、返事が返ってきた。
「デルゾート様はこの地を作り出した
6人のうちの1人ですかね」
「6人…って守護の六神?」
「いいえ、違いますわ…
デルゾート様と、勇者パーティー御一行
そして、守護の六神をまとめる、
この世界を作り出した、
創造主『マゼラン・ディダウィード』
この6名で作り出したのが『リオガチオ』
ですから」
深く『リオガチオ』の歴史を知り、エルマは困惑する。その神が作った都市であらば、なぜ【最悪】と呼ばれるのか…その訳を―
「長話しすぎましたわ、この部屋で少々待って頂けません?貴方、吸血鬼なら血が必要でしょう?傷も癒えているわけではありませんし…だから少々時間を」
その言葉だけを置いてアルミナはエルマの部屋を去った。
〝コンコンコン〟
扉をノックする音が聞こえる。
ベットに寝転がっていたエルマは起きて、扉を開ける。そこにはアルミナと赤髪で緑色の瞳をして、白色のネグリジェを着た15歳前後の少女が立っていた。
「これが貴方の体の元になる、【血】を
吸うことのできる人間ですわ」
その少女の背中をアルミナは押して部屋から出て行った。
「あの、わたし…フィアナって言うのです
よろしくなのです…」
少女…フィアナはそう言った。
「そう、私はエルマよ、よろしくね」
そう言ってエルマは頭で考える。
血は必要だ。だが、ミリアム以外の血を吸ったことがない。第一フィアナから血を貰ってもいいのかを。
「飲み、ますか?」
フィアナは長い髪を結んで、エルマの前に座る。
「いいの?痛いけど。耐えられる?」
「大丈夫なのです。慣れているので…」
フィアナのその言葉とその引き攣った笑みに違和感を覚えるが、エルマは近くのベッドへフィアナを押し倒し、優しく唇で首に触れる。
「ふ…」
フィアナはそのような吐息を吐いて目を瞑る。
「痛くしないようにするから」
「はい…」
牙を首に立て、傷口から血を飲む。静かな部屋では、エルマがフィアナの血を飲む音だけが流れていた。
「んっ…ぁ」
そう目を瞑りながら、足を小さく動かして、フィアナは声を出す。
「終わったよ、痛くない?大丈夫?」
「はい、全然…むしろ前の人より優しい」
はい、まではエルマに聞こえるように言って、そのあとは小さな声でそう言った。
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