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4-8 項垂れる私

 悲鳴を上げて、クロードにしがみついているのは随分小柄な……まるで少女のように見える女性だった。


 フワフワとしたオレンジブラウンのロングヘアー。紫色の瞳の女性は可愛らしい顔立ちをしているが、今はその顔に恐怖の色が浮かんでいる。


「ホワイト!どうしてここに!?」


 クロードは慌てた様子で私を見た。しまった!私は随分怖がらせてしまったのかもしれない。


「キュゥ〜ン……」

(ごめんなさい……)


 ガゼボの入り口直前で足を止めると、その場にお座りして項垂れた。


「クロード様……こ、この犬は……?」


 尚もクロードにしがみつきながら、じっと私を見つめている少女。


「この犬は『ホワイト』って言うんだよ。1週間位前から飼い始めたんだよ。大丈夫、身体はとても大きいけど大人しくて賢い犬だから」


 え?賢い?私のこと賢いって言ったの?

思わず顔を上げて、じっと私はクロードを見つめる。


「そ、そうなのですか……?」


「大丈夫だよ。コーネリア。試しに頭を撫でてあげてご覧?」

 

 クロードが少女に語りかける。おおっ!やはりこの人がコーネリアだったのね?


「で、でも……こ、怖いわ……」


 未だにコーネリアはクロードから離れない。う〜ん……そんなに怖がらなくてもいいのに。

 城には私を怖がる人は一人もいないのに?もっとも最初の頃は怖がられたこともあったけどね。


「本当に怖くないから。ほら、頭を撫でてあげごらんよ」


 しかし、コーネリアは激しく首を振って涙目で私を見る。


「い、嫌です。無理です!」


 ガーンッ!!

 そ、そんな……そこまで怖がるっ!?


 すると、クロードはコーネリアの頭を撫でながら私を見た。


「ごめん、ホワイト。コーネリアが怖がっているから、向こうへ行っててくれないかな?」


「ワオン……」

(そんな……)


 けれど相手は怖がっているし、何より恩人のクロードを困らせるわけにはいかない。

 クルリと背を向けて、項垂れながら私はその場を後にした。後ろ足に尻尾をからませながら……。




****


 クロードの元を離れから……空は茜色にそまり、ついには夜になってしまった。


 結局この日はクロードはコーネリアにつきっきりで私は彼に会うことが出来なかった。


 彼女の名前はコーネリア・ブライス。現在17歳の侯爵令嬢で……クロードの幼馴染だということだった。……と言っても、5歳年下らしいけれども。


「なるほどね〜幼馴染だったのね。てっきり婚約者か何かと思ったけど。安心したわ」


 誰もいないクロードの部屋の床に寝そべり、ポツリと呟く。

 うん?私……今、なんで安心したと思ったのだろう?まさか本気でクロードのことを好きになっていた……?


「はは、まさかね〜」


 主のいない、明かりも灯されていない部屋で月を眺めながら乾いた笑いをした時……。


「サファイア、今度は犬になったんだね?」


 突然背後で魔法使いの声が聞こえてきた――。


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