2-26 お友達になりましょう
「ほら、彼って顔だけはやたらめったらいいじゃない?それでつい、騙されてしまったのよね〜」
「はい!確かにそれは分かります!滅多に眼鏡を外さないですけどね。でも助かってますよ。あの顔を見たら言いたいことも言えなくなってしまうので」
羽をバサバサ広げながら私はエメラルドさんと女子バナで盛り上がっていた。
「全く、その通りよ。私達気が合うじゃない?もしよければ友達になりましょう?」
エメラルドさんがバチンとウィンクした。
「ええっ?!本当ですか?!まさか偉大なドラゴン様が私のお友達になってくれるなんて!」
嬉しさのあまり、私はフクロウの本能?で身体を上下に激しく揺する。
「ぷっ!何?その姿……すっごく可愛いじゃない?」
チョンとエメラルドさんが私の頭を突く。
「ありがとうございます!」
その時……。
ピカッ!!
突然私の身体が強く光り輝いた。
「きゃあ!な、何?!」
エメラルドさんが腕で顔を隠しながら叫んだ。
「あ!こ、これは……!」
私は瞬時に察した。この光は……!
途端に身体から漲る力が抜けていくのが分かった。
「アハハハハハ……ど、どうやら時間切れのようです……」
「え?時間切れってどういうこと?」
「はい。魔法使いに強化魔法をかけてもらったのですけど……1時間しか効果がない魔法でして……」
「ええ?そうなの?」
「はい、なのでこれから元の場所へ戻るとなると……大分時間がかかりそうです」
私ははるか遠くに見える森を見つめてため息を付いた。今やただのフクロウと化したこの身体で城を目指すのは至難の業だ。
「あら、だったら私がお城の近くまで連れて行ってあげるわよ」
「ええっ?!ほ、本当ですか?!」
喜びのあまり、目が細くなる私。
「ええ、お安い御用よ。それに私が引き止めてしまった責任もあるしね……」
エメラルドさんの身体が一瞬、緑色に光り輝く。思わず眩しくて目を閉じた次の瞬間、頭の中に声が響いてきた。
<さ、それじゃ行くわよ>
恐る恐る目を開けると、そこにはシロナガスクジラサイズのドラゴンに姿が変わっている。
「……」
あまりの大きさに、思わずクチバシをカパッと開けたままエメラルドさんを見つめる私。
<あら?どうかしたの?>
「い、いえ……あの……ま、まさかそのサイズで空を飛ぶつもりですか?」
<ええ、そのつもりよ>
「で、ですが……そのサイズではかなり目立ちます……よね?」
こんな巨体が空を飛んでいれば、あっという間に人々にバレてしまってドラゴンハンターに(そんな者がいるかは不明だが)狙われてしまうのではないだろうか?
<う〜ん。言われてみればそうよね……なら、身体の大きさを変えればいいだけよ>
「え?!そのようなことが可能なのですか?!」
<当然よ、私を誰だと思っているの?>
言ってるそばから、スルスルとエメラルドさんの身体が縮こまり……恐らく熊?ぐらいの大きさにまで縮こまった。
<さて、それじゃ行きましょうか。あ、その前に……>
エメラルドさんは前足?でブチブチと『シルフィー』を引き抜くと差し出してきた。
<ほら、これを採りに来ていたんでしょう?>
「あ!そうです!どうもありがとうございます」
私は右足でしっかり『シルフィー』を握りしめた。すると、突然エメラルドさんは私の身体をいきなり右前でガシッと掴んだ。
ひぃいいい!
突然のことで驚いた私の身体が半分ほど細くなる。
<よし、それでは行くわよ!>
そしてエメラルドさんは大きな羽を広げ、風を巻き上げながら猛スピードで城を目指して飛び始めた――。