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2-6

「マジでいいの? ニック、ホントに死んじまうかもしれないぜ。いや、俺はべつにいいんだけどさ」

 祭具室から取ってきた、ミサ用のワインをクリスに渡す。グラスは金メッキのゴブレットじゃなく、バザーでレモネードを売るときのプラスチックカップだ。ダブルで注がれたそれをクリスが聖別する。

 カップを持ったやつの手が少し震えているように見えたのは、たぶん見間違いだろう。

「――アーメン」

 と言って、やつは毒でもあおるみたいに一気に飲み干した。俺とクリスは息をするのも忘れて見守った。

 ほんと言うと、もしやつが黒い血を吐いてのたうち回ったあげく灰になるんだとしたら、リビングの絨毯の上じゃなくて、キッチンのタイルの上でやってほしかったんだが。

「……どうですか?」

 片手で喉を抑えているニックにクリスが聞いた。

 ニックは手を放して、指先から腐って落ちていないかたしかめるみたいに、両手をゆっくり握ったりひらいたりしていたが、

「どこもなんともないな……」

 俺とクリスはがっかりしたが、

「だが渇きは消えた。ありがとう、神父」

 クリスの見送りを断って、俺はニックと外に出た。

「約束忘れるなよ」

「なんの約束だ?」

「それなりのお礼ってやつ。クリスは絶対断るだろうけどさ、この前あんたが来たあと、ずっと教会でお祈りしてたんだぜ。夜中までなんか調べものしてるし。クリスに倒れられたら、俺だって困るんだよ」

「そこは利害が一致するな」

「それから、今度から、来るときは連絡しろよ。この教会に相談に来るの、あんただけじゃないんだ。一般人パンピーと鉢合わせしたらマズいだろ」

「マクファーソン神父の携帯番号を教えてくれ」

 俺は黙って自分の番号を教えた。

「着信は残したから、私の番号だと伝えておいてくれ」

 言い残して、やつはマセラティの窓を開けたまま走り去った。あとに残ったフローラル系の芳香剤の匂いが薄れると、俺は芝生とポプラと、夜の甘い香りを吸い込んだ。


 ちなみに、ニックの野郎は約束を守った。教会宛てにやつの名前で小切手が送られてきて、クリスはちょっと怒ったような、困ったような顔をしていたが、ひとまず受け取った。


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