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ハロウィンの夜に

 今夜はハロウィン。

 なんとなくいつもの習慣みたいに駅近くのコンビニへ入った。

 実は、ちょっと気になる新製品が発表されていたのだ。いわゆるコンビニ限定品。

 コンビニでしか販売しないため、割高なのが残念ではあるのだが、それでも「限定」と付けられると、ついつい手に取ってしまったりする。しかも、コンビニ限定品は、大概、期間限定品。迷って、次にしようとかは、後悔の素。その後、二度と会えないことも珍しくない。


 ネットニュースで気になっていたのは、ハロウィン関連のお菓子なので、もうこれは、超短期にしか出まわらない商品ということで間違いない。


 お菓子の棚へと向かうが、それらしい商品は見当たらない。

 慌てて、見逃したのだろうか?

 もう一度、ゆっくりと棚を見てみる。

 やはり、無い。


 ここは、店員さんを捉まえて、直接訊いた方が早そうだと思い、奥の棚の方で整理をしている学生バイトとおぼしき人物に声をかけた。


「あの、コンビニ限定だってネットニュースで見たのですが、これって置いてます?」

スマホの画像を見せつつ訊いてみた。


「あ、これですか? 午前中にはあったんですけどね。もう売り切れちゃったんです。期間限定で、入荷は今日の便が最後なんで。すみません。」

店員さんから、申し訳なさそうに謝られてしまった。


 でも、そういうことなら、まだ商品が残っているコンビニも、ひょっとしたら今日中に片付けられちゃうかもしれないっていうことだ。

 慌てて、店を飛び出し、大通り沿いの歩道を北上する。

 この通りだけでも、コンビニは数件あるはずだ。


 結果的に、100~200メートルくらいの間隔で同じ通りに並んでいるコンビニに入店しては、商品を見つけられず、気が付けば、通りの一番北側まで歩いてしまった。そこから先は急に細い道となり住宅街に入ってしまうのだ。つまりこれ以上北にはコンビニは無いと思われる。


 結局、目的の商品を直接目にすることはできなかった。くたびれもうけというヤツだ。


 通りの最も北のコンビニにもう一度入り直し、肉まんを買った。暖かくて、なんだかホッとした。


 もう人通りもまばらな時間になっていた。

 あまり行儀は良くないのだが、肉まんを齧りながら、自宅のある南側へと歩いた。

 コンビニ巡りのせいで、自宅を素通りしてかなり北側まで来てしまっていたのだ。


 こんな所まで来て、無駄足とか、ハロウィンのお化けのイタズラのせいじゃないかと思う。

 期間限定品なんて、実は無くて、何か幻でも見せられていたんじゃないだろうか?

 手に入らなかったのに、あまり悔しさも感じられない。

 狐につままれるってこんな感じなのかもしれない。


 夜風はかなり冷たくなっていた。

 トリックオアトリート。

 暗さのせいで知らない場所に迷い込んだような、心細さが襲ってきた。

 歩道の街灯は等間隔に立っていて近くを照らしているが、どうしてもそれぞれの中間地点は暗い。


 誰かが後をつけてきていたらどうしよう。

 唐突に不安になる。

 少し小走りになって歩くと歩道に靴音が意外なほどに響いた。


 夜の街に、トリックオアトリート。

 勝手に遠くまで来てしまい、勝手に怖くなった。

 魔女やお化けに出会わないうちに、家まで辿り着かなくちゃ。


 なんだか不思議な夜だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お菓子を買えなかったので、今お化けたちに遭遇したら見逃してもらえませんね。ちょっとドジでコミカルなところもありそうな主人公、可愛いです。
[良い点] ∀・)いやぁ……素直に主人公が「可愛いな♡」って思いました(笑)(笑)(笑) [気になる点] ∀・)これはもうリアルな猫らてさんとみたらいけないヤツなのかな(笑) [一言] ∀・)この話を…
[良い点] 夜の街を歩くときのどことない心細さ、非現実感が切り取られたような、感性に訴えかけてくるシャープな掌編でした。 畳みかけるように繰り返される「トリックオアトリート」が、深刻に暑くも寒くもない…
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