表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

2. フランク・L・フォークナー

 フランク・L・フォークナー。


 フォークナー伯爵の息子であり、出来損ないの三男だ。


 ゲームにおけるフォークナーは相当な嫌われ者だった。


 貴族にあらずんば人にあらず、という考えのもとに平民を虐め、てっかてかに光った脂まみれの顔で、でゅふ、でゅふ、という気持ち悪い笑みを零し、ねちっこい性格でグチグチと嫌味を言う。


 これで好きになれという方が無理だ。


 平民の主人公を見下し、何度も突っかかり、そのたびに倒される噛ませ犬であった。


 嫌いなキャラランキングでも堂々の一位を獲得していたと聞く。


 そして俺は等身大を映す鏡で自分の姿をじっくり見ていた。


 そこにはゲームの時期よりも幾分幼いフランクが立っていた。


 ていうか、今の俺だ。


 ペタペタと顔を触ってみる。


「まさか、転生? いや、でもそんなことってあるのか?」


 と、思った瞬間、フランクの記憶が一気に頭の中に流れ込んできた。


「うっ……」


 激しい頭痛に襲われ、頭を抱える。


 そうして、痛みに耐えること約十分。


 俺は悟った。


 そう、俺はフランク・L・フォークナーに転生してしまったのだ。


「はははっ、アニメでは良く見たけど。まさか自分が転生するとは思わなかった」


 それも転生先は悪役の噛ませ犬だ。


 普通なら『主人公に倒されるのは嫌だ!』となるところだが……。


 あいにく、俺はそんなこと思わなかった。


「そもそも、フランクのような嫌われる行動をしなければ、主人公に倒されることもないもんな」


 ただ、一つ大きな問題がある。


 それは、


「俺が噛ませ犬役をやらないとゲームが進行しない……。つまり、主人公たちが成長できず、ラスボスに倒されるかもしれん」


 だが、そんなこと言われても倒されるのは嫌だ。


 というか、主人公なんだから(フランク)という障害なしでも勝手に成長していってくれ。


 ということで俺は自由に生きることにした。


 そう決めた俺は、将来について考えることにした。


 ゲームの世界に転生したと言っても、人生が勝手に進んでいくわけじゃない。


 というかゲームのように進んでいったら、主人公たちに倒される未来が待っている。


 この世界で自分らしく生きていく必要がある。


 ちなみに、貴族社会は長子相続制だ。


 伯爵家の三男である俺が爵位を継げる可能性は限りなく低い。


 となると、


「騎士になって武功を立てるか……もしくは、魔法を極めて、宮廷魔法士になるかだな」


 爵位を継げないとなれば自分で結果を残すしかない。


 と言っても、平民と比べると貴族はかなりイージーモードだ。


 まず貴族として生まれた時点で魔力持ちがほぼ確定している。


 魔力の有無はほとんど遺伝で決まる。


 貴族の大半は魔力持ちのため、貴族の子供は当然魔力持ちになるというわけだ。


 魔力を持っているだけで、職の幅が広がり、生きやすい人生になる。


 そして、当たり前とも言えることだが、貴族は平民と比べて色々と優遇されている。


 名門学園に通うのも、騎士団に入団するのも、王宮に勤めるのも、全て貴族のほうが有利に働く。


 さらには勤め先でも貴族のほうが出世が早い。


 かなりの人生イージーモードだ。


 それになんと言っても、


「フランクは才能だけはあるんだよな」


 ゲーム内での話だが、フランクは主人公パーティに一人で戦いを挑んでいた。


 そして、かなり主人公たちを苦戦させてきたのだ。


 フランクが十分優秀だとわかる。


 加えて、フランクが真剣に魔法を学んでいるシーンはなく。


 フランクは怠惰に過ごしていたにも関わらず、一人で主人公パーティと対等に戦えたことになる。


 フランクの潜在能力の高さが伺える。


 ここまで考えればフランク・L・フォークナーは性格さえ問題なければ、超絶優秀な人物だったと言える。


「顔だって、痩せていれば悪くなさそうだしな」


 今のフランクはまだぽっちゃり体型だ。


 ゲームで見た丸々に太ったフランクと比べればだいぶ可愛くも見える。


 暗めの茶髪に燃えるような赤い瞳。


 少しつり上がった目が悪役っぽくはあるけど、吊り目のイケメンはたくさんいる。


 色々と考えてみたところ、フランクに転生できたことは幸運なことだと思えてきた。


「ラスボスとかは主人公たちに任せるとして、俺は俺で自由に生きてみるか」


 と、そう決めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ