1. コンティニュー
カチャカチャとコントローラーを動かす音が室内に響き渡る。
俺は画面に向き合って、一昔前に流行ったゲームをやっていた。
ゲームはよくあるRPGモノ。
中世ヨーロッパ風の世界観であり、剣と魔法の異世界ファンタジーだ。
だけど、このゲームには一つ大きなバグがあった。
噛ませ犬キャラであるフランク・L・フォークナー。
三回も主人公に倒される悪役キャラなのだが、こいつが突然、不可思議な動きをすることがあるのだ。
ゲーム実況動画でその模様が配信され、バグのおかげで一時期大幅に売上が上がったらしい。
そして、俺はそのフランクと戦っていた。
物語の中盤。
フランクが主人公たちの前に現れ、立ち塞がっていた。
「くそっ、この! こいつめ!」
コントローラーをかちゃかちゃと動かしながら、フランクと戦う。
しばらくの戦闘の後、
「よし! 倒した!」
フランクを倒すことができた。
なかなか手ごわい敵だった。
と、達成感を得るが、
「あれ? どうした?」
違和感を覚える。
いつもだったらBGMと一緒に『Congratulations』の文字が画面に刻まれるはずになる。
それなのに、画面はずっとフランクが倒れている姿を映している。
「おいおい、フリーズか? 勘弁してくれよ」
フランクを倒すのはなかなか骨が折れた。
それに前回セーブしたのは1時間も前だ。
ここでゲームのデータが失われると1時間分の苦労が水の泡になる。
と、そう思ったときだ。
突然、フランクが立ち上がった。
「は? 復活!? そんなのは聞いてねーぞ」
俺は攻略サイトを見ながらゲームを進めている。
今後の展開を知っており、今の画面に映し出されている状況が異常だとすぐにわかった。
「もしかして、これがバグってやつか? うわー、めんどくさっ」
ゲーム実況者ではない俺からすれば、バグは面倒なだけだった。
こうなると、前のセーブからやり直しだ。
「しゃーない。この際だからバグ映像を目に焼き付けておこう」
バグは超低確率でしか発生しないため、見方によっては超貴重な映像とも言える。
テレビ画面の中ではフランクが主人公たちに向かって歩き始めた。
俺は主人公を操作できないか試してみたが、まったく動かせる感じがしない。
主人公たちはフリーズした状態でフランクだけが画面の中を動いていた。
そして、フランクがお得意の火魔法を唱えた。
次の瞬間、
「う、わっ!」
画面が一気に真っ赤に染まった。
そして直後に『ゲーム・オーバー』の文字が画面にデカデカと刻まれた。
「まあ、こうなるよな」
ゲーム実況でも同じようにゲーム・オーバーとなっていた。
続いて『コンティニューしますか? はい/いいえ』の文字が表れた。
俺は迷わず『はい』を押した、次の瞬間。
ぷつんと意識が途切れた。