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陛下がお呼びです!?

「暇だ」


 グランロッド国とやらに召喚されて一週間が経とうとしていた。


 あれからシェイドさんも現れる気配はない。


 友愛の親友である私は一応はもてなされている。

 あくまでも一応。


 衣食住は用意されてはいるものの、誰とも顔を合わせることはない。


 みんなカイザー様の婚約者の友愛に付きっきり。


 早い話が放置。


 そして私がこの王宮に住まわせてもらっているのも友愛が私と離れたくないからと言ってくれたから。


 つまりは友愛に免じて追い出さないでやっているのだから、部屋で大人しくしていろ。このタダ飯食らいが、ってことだね。


 そこは感謝してる。


 こんな見ず知らずの場所で放り出されても生きてはいけない。


 この国には細い人しかおらず、無駄な肉が付いた私のような人間は煙たがられる。きっと働き口も見つからないまま餓死してしまう。


 それを考えるとどれほどの仕打ちをされても耐えられる。死ぬよりもマシだから。


 でもさ!!友愛と会うのも禁止なんておかしい。


 暇を持て余しすぎてフカフカベッドにダイブするという奇行を繰り返す。


「コトネ様。入らせて頂きます」


 ノックと共にピシッとしたメイドが入ってきた。


 ──は、恥ずかしすぎる。


 ノックするならせめて返事するまで待ってよ。


 やっぱり私ってここでは人間扱いされてないんだな。他の人ならちゃんとルールを守るだろうに。


 友愛は大丈夫だろうか。いくら王子の婚約者だからとっても、私と同じ異世界者。


 私は放置されているだけだと、もしかして私以上に酷い仕打ちを受けているんじゃ……。


 心配になってきた。


 メイドはだらしのない私を見ても表情を崩すことはなかった。呆れているんだろうな。


「陛下がお呼びです」

「あーはいはい。陛下……陛下!?国王陛下のこと!?」

「はい。すぐにご支度致します」


 淡々としすぎている。驚く私を他所に自分の仕事を全うしようとする姿には尊敬を覚える。


 待機していたのか他のメイドも入ってきて、そのまま着替えさせられた。


 王様に会うというだけあって化粧もさせられ髪もとかれる。


 こんなの漫画の世界だけだと思っていた。


 現世では絶対に着ないようなドレス。というか買えない。高級感溢れすぎている。


 庶民の私には手が出ない値段なんだろうな。


 鏡で自分の姿を確認すると顔が引きつった。


 ──ドレスに着られている。似合ってないなぁ。


 こういうのは友愛みたいに可愛い女の子のためのもの。


 私なんかに着られてドレスが可哀想。


 脱ぎ捨てたいけど、そういうわけにもいかない。


 あとちょっと苦しいな。


 メイドが道案内してくれるけど、私のことを気にかけることもなく自分のペースを崩さない。


 慣れないドレスにいつもより歩きずらかった。


 転びでもしたら一生陰で笑われそうで、必死についていくしかない。


 王宮なのに人がいないんだ。もしかしたら友愛と会えるかもって期待してたのに。


 後ろ指されて笑われたくないから有難い気持ちもある。


 自覚していても悪意ある言葉や態度はやはり傷つく。


 到着したのかメイドは立ち止まり振り返った。距離が空いていることにため息をつかれた。


 ──貴女が私に合わせてくれれば良かったのでは?


 文句を言える立場ではないからグッと言葉を飲み込む。


 扉の前にいた人はほんの一瞬、睨んだ。私ではなくメイドを。


 メイドはそんなことにも気付かず一礼して持ち場に戻っていく。


 大きな扉が開くと部屋の奥に高そうな椅子に座った男女と目が合った。


 あれ絶対に国王陛下と王妃様だよね?


 周りの人とオーラが違う。


 優しそうな顔立ちしてるな。美男美女の子供に生まれたおかげもあってカイザー様はイケメンなのか。


 ポカンと見とれていると二人は立ち上がり、そのまま頭を下げた。


 すると部屋にいた騎士?の人達も一斉に。


 この状況には頭がついていかない。


 私は今、謝罪をされているでOK?

 何に対しての謝罪?


「この度は我が愚息が大変失礼な態度を取ったそうで」

「息子に代わり謝らせて頂きます。コトネ様。無礼をお許し下さい」

「い、いえ。あの……頭を上げて下さい。私は気にしていませんから」


 醜態の目は慣れている。


 顔を上げた二人は本当に申し訳なさそうな表情をしていた。


 聞けば今回の召喚の儀は息子であるカイザー様が独断で行ったこと。


 花嫁を探すために。


 こちらの女性はお気に召さないとのこと。


 私からしたらこの国の人は顔面偏差値がそこそこ高いと思う。


 一体どれだけ高望みをしてるんだろ。第一王子として甘やかしすぎたと反省している。


 カイザー様が求める条件は世界で一番可憐な女。


 ん?それっておかしくない?


 召喚の儀で連れて来られるのは一人だけらしく、それなら友愛だけがここにいるはず。


 なぜ私まで?


 疑問をぶつけるように視線を向けると、気まずそうに宙を見る。


 それに関しては未だ調査中でわかり次第報告をしてくれると約束した。


「コトネ様。シェイドを……呼び出したというのは誠か?」

「呼び出したわけでは。なんか声が聞こえてそれで名前を呼んだだけで」


 空気がザワついた。


 変なこと言った?


 聞かれたことをそのまま答えただけなんだけど。


 陛下と王妃様は顔を見合わせた。


 その反応怖いんですけど!!


 まさかシェイドは魔王だったりする!?


 それを従えたとされる私は敵!?


 無理やり召喚されたとはいえ、この国を滅ぼすつもりは全然ないのに。


 処刑を言い渡されたらどうしよう。


 どうやったら私に害がないと証明出来るの。


「不安にさせてすまない。シェイドは我が国を守ってくれていた精霊王の名だ」


()()()()()()()()


 過去形?


「千年も前にその存在は消滅してしまった。原因は不明。以来、グランロッド国は精霊の加護を失った。だが信じ難いことにそのシェイドと君は繋がっている」

「私が何かしたわけじゃないですよ!?」

「それはわかっている。君はただの人だからね」

「カイザーは貴女のお友達であるユア殿に想いを寄せてしまったようで手に負えない状態です」

「は、はぁ……」


 王妃様は頭を抱えてうんざりしてる。


 あんな息子を持つと苦労するな。


 私なんかに頭を下げたくないとワガママでも言ったのだろう。でなければこの場にいないのはおかしい。


「あのー……。質問とかいいですか?」

「何かな」

「どうして私が“様”で友愛が“殿”なんですか」


 普通に考えれば王子に愛されれる友愛が特別扱いされるべき。


 オマケの私なんてここでの価値はない。


「おそらく君はシェイドの加護を受けた聖女だと思われる。そんな君を重宝するのは当然だ」

「私達への要望があったら何でも言ってちょうだい」

「そんなのはありません。私のような者を住まわせてもらっているんですから。あ、でも一つだけ。可能ならでいいのですが食事にスープを付けて頂けませんか。固いパンだけは食べずらくて」


 食文化に違いがあるのはわかる。


 衣食住を世話になってる身で贅沢を言うつもりはない。


 でも!!


 三食の食事が水一杯と固いパンだけでは味気ない。


 飲む用ではなくパンを浸して柔らかくする備え付けが欲しい。


 味とか細かいことも言わない。とにかく顎が疲れるのよ。あのパン。


「今から貴女様にはキース・リブロ騎士団長を付けよう」


 違う違う。


 私が付けて欲しいのはスープであって人じゃない。


 どんな聞き間違いをしたらそうなるの?


 まだ耳が遠い年齢ではないはず。


「コトネ様。これからはご用の際は全て私に申し付け下さい」


 広い空を思わせるような鮮やかな青い髪。


 この人もイケメンだな。


 むしろこっちが勝ってるかも。背景にキラキラしたものが見える。


 爽やかなイケメンって実在するんだ。


 生きてて良かった。


「陛下。侍女のラヴィを専属に付けたいのですが」

「全ての判断は任せる」

「承知致しました。コトネ様。参りましょう」


 もはや私に断る権利はないのか。


 パンの辺りから急に空気が変わった。もしかして余計なこと言った?

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