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召喚されました!?

掛け持ち作品です。

話は思いつき次第更新していきます。

まだまだ初心者なので応援よろしくお願いいたします。

 ──世界が平等でないことはきっと、産まれたときから知っていた。


 二十三年という長くも短い時間を共に過ごしてきた親友の友愛(ゆあ)と誕生日を祝うためにお互いに好きなイチゴのケーキを買ってルンルン気分で家に帰る。


 友愛とはたまたま同じ日に、同じ病院で産まれた。そこで親同士が仲良くなり必然的に私達は親友になったのだ。


 友愛は日本人の両親でありながら透き通った青い瞳を持っている。宝石のように綺麗で、もちろん容姿だって負けてない。


 背は高いほうではないけど可愛くて甘え上手。異性からしたら守ってあげたくなる。


 それに比べて私は同じく背は低く顔は平凡。悪くもなければ良くもない。


 体型は……ぽっちゃり。小学生の頃から見た目からまん丸のマルとアダ名をつけられた。


 それはいい。その通りだし。


 悪意ある意地悪だったとしても、やめてと言えるほど私は自分という存在を知らないわけでもない。


 友愛はそんな私と親友だと言ってくれて、いじめらているときは庇ってもくれた。


 まさに絵に描いたような完璧少女。


 そんな友愛と出会えたことは私の人生で一番の幸福。


「ケーキ楽しみだね」


 箱を顔の前に持ってきてキュンとする笑顔を浮かべた。


 今日は誕生日だからちょっと贅沢して外食。その後に街角ケーキ屋さんのイチゴショートを食べるのが毎年の恒例。


「そうだ……ねぇェェェーーー!!?」


 家に帰りつきドアを開けた瞬間、穴があることに気付かずに足を踏み入れてしまった。


 当然のように私達は落ちるわけで。


 二人して穴に吸い込まれるように為すが術ない。


 暗く長い穴に終わりが見えるように光が差す。

 この勢いで激突したら間違いなく死ぬ。


 人って死ぬ直前に走馬灯を見るって聞くけど、そんな余裕全くない。


 ギュッと目を瞑って覚悟した。


 ……って、あれ?落ちた割りには痛くない。


 ──いや、何事!?


 目を開けるとそこにはコスプレした集団に囲まれていた。


 派手な服装だな。


 見慣れない彼らは「おお……」と何かに感動していた。


「カイザー様の妃となられるお方が現れた!!」

「なんと愛らしいのだ」


 あ、なるほど。異世界召喚ってやつですか。


 理解すると、さっきまでの死の恐怖が拭われた。


 まだ手は震えているけど、死なないのであれば冷静さは取り戻せる。


 理解はしても状況の整理はついていない。


 周りを見渡していると、炎のように真っ赤に燃える髪をしたイケメンは友愛の手を取り


「結婚しよう」


 プロポーズをした。


 現実には存在しなさそうなイケメンに友愛はプチパニックに陥りながらもどこか嬉しそうだった。


 そりゃそうか。こんなイケメンからのプロポーズは誰だって嬉しい。


 現在、友愛には付き合ってる男性はいない。だからプロポーズをすることにも問題はなかった。


 でも、異世界に飛ばされたばかりの女性に、顔が良いだけ(かもしれない)男性からのプロポーズはどんなに嬉しくても戸惑うものである。


 友愛の顔からも喜びが徐々に消えていく。


 交際期間もなく結婚は、ハードルが高い。


「あのー。盛り上がってるとこ悪いんですが……」


 なるべく空気に水を差すようなことはしたくないけど、どうしても確認しなければならないことがある。


 彼らは私を見るなりヒソヒソと話し始めた。


「何だあの太った豚は」

「婚約者様が飼われているんじゃないか?」


 ──聞こえてますけど?


 せめてもっと小声で話してくれないかな。


 あと私は人間です。その失礼な態度は改めて欲しい。


 カイザー様とやらは私に目をやると友愛と比べて鼻で笑った。


 その反応は現世でも散々されてきたから慣れている。


 自分が可愛くないことも重々承知。


 そういうのは一旦置いておいて、これからどうしようというのが第一。


 感じ的に私はお払い箱。帰れないとなると追い出される可能性しか残っていない。


「家に帰りたいのですが」

「は?帰れるわけないだろ」


 ですよねー。お約束パターン。異世界召喚にありがち。


 カイザー様は特に何も言わない。


 それどころか早く引き上げろと神官達に促した。


 私を残して。


 なるほど。


 ここで私は人として扱われないのか。


 衝撃的すぎる事実に開いた口が塞がらない。


 なんだろうな。


 軽い絶望みたいなのを味わった。


 勝手に連れて来ておいてこの仕打ち。


 横暴にも程がある。


 こんな訳のわからない部屋で餓死するまで待てというの?


 もし私が死んだらこの国そのものを呪ってやる。


 そんな恨みを抱いていると突然、私の体が眩い光に包まれた。


 本人より他の人達のほうが驚いてるんだけど。


「変わらんな。この国は」


 どこからか声がする。


 部屋を見渡しても声の持ち主はいない。


「誰?」

「我が名はシェイド」

「どこにいるの?」

「おい女!!誰と喋っている!?」


 みんなにはこの声が聞こえてない?


「名を呼べ。私が守ってやる」

「守る?私を?」

「そうだ」


 もう何が何だかわからないけどとにかく呼んだ。


 大きな声でシェイドと。


 すると白銀の長い髪をした男の人が宙に浮いていた。


 ──はい…………?


 そっか。異世界だから魔法とかだね。


 うんうん。じゃないと説明がつかない。人が浮くなんて。


「お、お前まさか精霊王シェイドか!!?」

「気安く呼ぶな。人間風情が」


 私も一応は人間に分類されるんですけど。それとも精霊王?からしたら私は人間ではなく豚に見えてるの?


「私を呼んでいい人間はこの者だけだ」


 細くしなやかな手が頬に触れた。その手はとても優しい。


 彼の漆黒の瞳に映る私の姿が見えたような気がした。


 紛れもなく私を人として見てくれている。


 彼の中で私は人間だった。


 といことはいいんだ。私は名前を呼んでも。


 驚きのあまり腰を抜かす人がちらほら。


 シェイドと名乗ったその人は私を抱きかかえた。


「◎$♪×△¥●&!!?」


 お、おひ……お姫様抱っこ!?


 こんな細い人腕でそんなことしたらが折れちゃうよ!


 これでも私、そこそこ体重あるからね!?


 恥ずかしがって抵抗していると、気付けば色とりどりの花が咲き誇る花畑にいた。


 こ、これも魔法?幻覚?それとも瞬間移動ってやつ?


「やはりまだダメだな」


 私を下ろしたシェイドさんはフッと笑っては体は透けて消えていく。


 え?え?


 なんで!!? 私!?私を抱っこしたから!?それはほんとごめんなさいね!!


「一人にしてすまない。少しだけ待っててくれ」


 私の手を取ってそのまま甲に唇を当てた。


 消えゆく彼の微笑みは大きく胸を高鳴らせた。


「心音。誰も信用するな。あの女もだ」


 完全に消える前にその声と言葉はハッキリと私に届いた。


 その意味は消えるわけもなく私は一人ポツンと花に囲まれたまま。


 強めの風が吹いたせいで、花びらが舞う。

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