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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
8/60

8話 電話


 今日は花の金曜日。

 明日は仕事が休みだから、今日は思いっきり酒が飲める。

 

 うきうきと冷蔵庫からビールを取り出していると、スマホが鳴った。

 時刻は午後9時。こんな時間に誰だろうか。


 画面を覗き込み、表示されている名前に呼吸が止まる。


 『綿野忍』


 俺は慌てて画面をタップし、電話に出た。


 綿野忍は、俺、谷川康(たにがわこう)の幼馴染だ。

 ついでに言うと、俺の片思いの相手でもある。

 

「もしもし」


『もしもし、康?』


 久しぶりに聞く忍の声。

 向こうからかけてくるなんて珍しい。……いや、初めてじゃないか?


「おぉ、どうした?」


 ビールの缶に口をつけながら聞くと、驚きの返答が帰ってきた。


『えーっと、その、康にお願いがあって……』


「お願い?」


 明日は本気で隕石でも落ちてくるんじゃないのか?

 あの忍が人にお願いするなんて。


『あの、明日、康にうちの子の面倒見てもらいたくて……!』


 俺は飲みかけていたビールを吹き出した。


 ヤバ……器官に入った……!


『え、ちょっと大丈夫?』


 盛大にむせてせき込んでいる俺に、電話越しで忍が声をかけてくる。


「ゲホッ おい、それどういうことだよ!?」


『え? あ、ごめん、決してアンタの頭がどうとかいう話ではなく』


「ちげーよ! だから、その、うちの子って……!?」


『あ、うん、先にそっちの説明だったね。実は……』


 忍の話によると、忍は今日迷子の女の子に会い、仲良くなったが、その子の母親の我が子に対する扱いがあまりにもひどかったのでその女の子をひきとることにしたという。

 しかし、会社で何か問題が起きたらしく、明日は出社しなければならなくなった。

 土曜日なのでその女の子が通っている幼稚園が開いておらず、1人で留守番させるのは気が引ける。

 だから俺に、明日忍が帰ってくるまでその女の子を見ていてほしいとのことだった。


『せっかくの休みにごめんね。何か用事あった?』


「いや、特に何もねぇけど」


『じゃあ、引き受けてくれる?』


「いいよ。どうせダラダラするだけのつもりだったしな。それに、ちびっこの面倒を見るのは好きだから」


 うなずきながらそう言うと、ホッと息をつく音が聞こえた。


『よかった。さすが保育士。だてに4兄弟の長男やってないね。私、信用してる友達は康しかいないから断られたらどうしようかと』


「いや、俺以外の友達らも信用してやれよ」


『……まちがった。そもそも友達が康しかいない』


「つくれよ!」


『それがなかなか……あ、明日、8時までに来れる?』


「了解。8時前に行くわ」


『助かる。じゃ、また明日』


「おう。明日な」


 電話を切る。


 ……うれしさ半分、切なさ半分だ。

 信頼してるのは俺だけだと言ってくれたのはかなりうれしいが、あくまで『友達として』だ。

 微塵も恋愛対象として見られていない。


 俺は苦笑して、ビールを1口。

 まだまだ先は長そうだ。


 だが、さっきの電話の忍はいつもより話しやすかった気がする。

 前はもっと……


 俺は『綿野忍』という女について、1人思い返した。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

感想や誤字、脱字等あれば是非教えてください。

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