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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
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番外編 子守歌

本編再開前に、2話番外編を挟みます。

今回の話は忍と結が出会って、1ヶ月くらいの話になります。


 とある夜のこと。

 家に持ち帰った仕事を片付け、私が布団にもぐりこんだのは夜中の12時を過ぎたくらい。


 結と暮らすようになって、私の就寝時間、早くなったよなぁ……。


 就寝時間だけじゃない。

 1日3食ちゃんと食べるようになったのも、シャワーだけじゃなくて湯舟にもしっかりつかるようになったのも、結と暮らし始めてからだ。


 暗い天井をぼんやり眺めながら考える。


 結の母親になるなんて宣言をしてからしばらく経つ。

 私は結に、ちゃんと何かをしてあげられているのだろうか。

 どちらかというと、私が結にしてもらってばかりな気がする。

 康にも頼ってばかりだし……


「しのぶ?」


 その声に、いつの間にか閉じかけていたまぶたが反射的にパチッと開く。

 もぞもぞと隣の布団が動いていた。


「結? まだ起きてたの?」

「だって、ねれないんだもん……」


 少しぐずったような声が返ってくる。


 あー……本当は寝たいのに、なんでか眠れないやつか。

 私にも経験がある。このまま朝になっちゃうんじゃないかって不安になるくらいなかなか寝付けないこと。

 ずっと目を閉じてたら大体いつの間にか熟睡していたけど。


 でも、もうしばらくこのままというのは少しかわいそうだ。

 なんとかしてあげたいけど、どうすれば……


『忍、まだ起きてたの?』


 不意に頭に響いた声に、ハッとする。

 遠い昔の記憶。

 私がまだ小さい頃に他界した、母との数少ない思い出だ。

 あまり覚えていなかったのに、それは突然鮮明に蘇ってくる。


『忍、まだ起きてたの?』

『ねたいけどねれないぃ……』

『あらら、お昼寝しすぎちゃったかな?』

『うー……』

『しかたない。忍が良く眠れるように、お母さんが魔法をかけてあげよう』


 ささやくような小さな声で、ゆっくりとした心地良いメロディーを口ずさむ。

 母が私の祖母に教えてもらったという子守歌。

 思ったよりも覚えているものだな。


 結は急に歌いだした私に一瞬目を大きくしたものの、数十秒後には目を閉じて、すやすや寝息を立て始めた。


「おやすみ、結」


 結の頭を2、3度撫でて、私は布団をかぶりなおす。

 目を閉じると、何とも言えない心地良さに包まれて、気が付けば眠りに落ちていた。


 その日、私は母の夢を見た気がする。

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