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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
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5話 決意


「ねえ結、私と一緒に暮らさない?」


 私がそう言うと、結は『え?』とまばたきを2回。


「ゆいが、しのぶとくらす?」

「うん。絶対に大事にするから。……あ、でも、お母さんの方が良かったら言ってね? ちゃんと結が元の生活に戻れるように謝って話を――」


 ふいに、結が私の手首をつかんだ。


「しのぶはゆいのこと、いるの?」


 真剣な表情でそう言われてキョトンとする。

 だけどすぐに意味が分かって、私は結に笑顔を向けた。


「『いる』とはちょっと違うかな。私は結と『一緒にいたい』。ま、私のわがままだけどね」


 少し残っていた涙を拭って言ったその時だ。

 突然結が私に飛びついてきた。


「うわっと……」


 よろけてしりもちをついて、今度は私がまばたきを2回。


「え、ど、どした?」

「ゆ、ゆいはしのぶといても、いいの? ゆ、ゆいがいたら、しのぶ、うれしい?」


 私を見上げた結の顔は涙にぬれていた。

 私はそっと結の頭をなでる。


「もちろん、うれしいよ。一緒にいてくれるの?」

「うんっ」

「そっか。……ありがとう」


 私は結の頭をなで続け、しばらくして結に言った。


「さぁ、一緒に帰ろう」


 この日、私は結の母代わりになることを決めた。

 なにがあってもこの子を守ると。




「結、今日からここが結の家だよ」

「たかーい!!」

「言うほど高くはないけどね、3階だし」


 玄関のドアを開けるなり窓にすっ飛んでいった結に苦笑する。


「結、いーい? ここはマンションだから、家を出たら静かにすること。他の家の人の迷惑になっちゃうからね」

「わかった!」

「それと、マンションの廊下とかエレベーターで誰かに会ったときはきちんとあいさつをすること」

「わかった!」

「よし。じゃ、何がわかったのか行ってごらん?」

「いえをでたらしずかにする! だれかにあったらきちんとあいさつする!」

「そう! 完璧! 結は賢いね。それじゃ、手を洗っておいで。今日の夕飯は結の好きなものにしてあげるから、結も手伝ってくれる?」

「やったー! 手伝うー!」


 頭をなでると、結はうれしそうに洗面所へかけていった。


「しのぶー! とどかなーい!」

「あ、そっか」


 結の声に、早足で洗面所へ向かい、結を抱える。


 台、買わないとな……。


 バシャバシャと手を洗う結を見ながら、私は聞いた。


「結は何が食べたい?」

「えっとね、カレー味!」

「は? 味?」


 どういうこと、と聞く前に結は手を拭いて、今度はキッチンへとかけていく。


「え、ちょっと待って」


 私はささっと手を洗い、結を追いかけた。

 


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

感想や誤字、脱字等あれば是非教えてください。

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