33話 帰省⑧
大変長らくお待たせしました!
今回で帰省編最後です。
「それじゃ、忘れ物はないわね?」
「はい。お世話になりました。お土産も、いっぱいありがとうございます」
おばさんからいただいたお土産を持ち直し、笑顔を向ける。
楽しかった里帰りもこれで終わり。
家に帰る時がやってきてしまった。
「仕事頑張ってなー」
「結ちゃん、また遊ぼうね」
「たまには連絡してねー」
玄関まで見送りに来てくれた燈君たちが声をかけてくれる。
ほんと、去年まではこんなお盆休み過ごすなんて思ってもみなかったのに。
色々話を聞いてもらったり、自信をつけてもらったからか、なんだか清々しい気分だ。
「……正月、また帰ってこい」
おじさんがボソッとつぶやいた。
すかさずおばさんが同調する。
「ええ、ええ、そうね。お正月、また帰っていらっしゃいな。ごちそう作って待ってるから」
「はい。ありがとうございます」
温かい家の温かい人たち。
この人たちに会えてよかったって改めて思った里帰りだったな。
「あのね! ゆい、おてがみかくよ!」
私の隣で結が元気よく手をあげる。
「ゆい、みんなにいっぱいおてがみかく!」
「お、じゃあ俺も書こうかな。手紙待ってるよ」
「うん!」
想君との微笑ましい会話にほっこりしていると、不意に肩をたたかれた。
「忍、そろそろ出発しないと、電車に間に合わなくなるぞ」
ヒョイッと康が顔を覗き込んでくる。
「……っあ、うん、わかった。じゃ、そろそろいこっか」
……び、びっくりした。
昨日の花火大会からまともに康の顔が見れないんだよね。
ほら、だって……いや、ちゃんと本当の意味は分かってるんだけど、その、男の人からす、「好き」とか言われたの初めてだし……。
な、なんか、気まずいというか……。
「……? 忍、固まってるけど大丈夫か?」
「え!? あ、うん、大丈夫! ちょっとボーっとしちゃってただけだから!」
「そうか?」
「そうそう! ほ、ほら、結、ちゃんとあいさつして。皆さん、本当にお世話になりました!」
わたわたと頭を下げる。
あーもー絶対不自然に思われてる!
「……しのぶ?」
「……絶対兄ちゃん忍ちゃんになんかしたよな」
「間違いなく」
「ちょっとは進展あったみたいだな」
結まで心配そうな顔でこっち見てるし、陽君たちはなんかヒソヒソ話してるし、おばさんはニヤニヤしてるし! おじさんは無表情だけど。
「あー……じゃあとりあえず、行くか。母さん、父さん、また正月に来るよ」
「ええ。待ってるわよ」
「……ああ」
「おじゃましましたー!」
結の明るい声を最後に、私たちは康の実家を出た。
セミが鳴いて陽炎が揺らめくのどかな風景。
夏。
今までと少し違うお盆休みが、終わろうとしていた。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次回も期間が空くとは思いますが、気長にまっていただけると嬉しいです。