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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
33/61

33話 帰省⑧

大変長らくお待たせしました!

今回で帰省編最後です。


「それじゃ、忘れ物はないわね?」

「はい。お世話になりました。お土産も、いっぱいありがとうございます」


 おばさんからいただいたお土産を持ち直し、笑顔を向ける。


 楽しかった里帰りもこれで終わり。

 家に帰る時がやってきてしまった。


「仕事頑張ってなー」

「結ちゃん、また遊ぼうね」

「たまには連絡してねー」


 玄関まで見送りに来てくれた燈君たちが声をかけてくれる。


 ほんと、去年まではこんなお盆休み過ごすなんて思ってもみなかったのに。

 色々話を聞いてもらったり、自信をつけてもらったからか、なんだか清々しい気分だ。


「……正月、また帰ってこい」


 おじさんがボソッとつぶやいた。

 すかさずおばさんが同調する。


「ええ、ええ、そうね。お正月、また帰っていらっしゃいな。ごちそう作って待ってるから」

「はい。ありがとうございます」


 温かい家の温かい人たち。

 この人たちに会えてよかったって改めて思った里帰りだったな。


「あのね! ゆい、おてがみかくよ!」


 私の隣で結が元気よく手をあげる。


「ゆい、みんなにいっぱいおてがみかく!」

「お、じゃあ俺も書こうかな。手紙待ってるよ」

「うん!」


 想君との微笑ましい会話にほっこりしていると、不意に肩をたたかれた。


「忍、そろそろ出発しないと、電車に間に合わなくなるぞ」


 ヒョイッと康が顔を覗き込んでくる。


「……っあ、うん、わかった。じゃ、そろそろいこっか」


 ……び、びっくりした。

 昨日の花火大会からまともに康の顔が見れないんだよね。

 ほら、だって……いや、ちゃんと本当の意味は分かってるんだけど、その、男の人からす、「好き」とか言われたの初めてだし……。

 な、なんか、気まずいというか……。


「……? 忍、固まってるけど大丈夫か?」

「え!? あ、うん、大丈夫! ちょっとボーっとしちゃってただけだから!」

「そうか?」

「そうそう! ほ、ほら、結、ちゃんとあいさつして。皆さん、本当にお世話になりました!」


 わたわたと頭を下げる。

 あーもー絶対不自然に思われてる!


「……しのぶ?」

「……絶対兄ちゃん忍ちゃんになんかしたよな」

「間違いなく」

「ちょっとは進展あったみたいだな」


 結まで心配そうな顔でこっち見てるし、陽君たちはなんかヒソヒソ話してるし、おばさんはニヤニヤしてるし! おじさんは無表情だけど。


「あー……じゃあとりあえず、行くか。母さん、父さん、また正月に来るよ」

「ええ。待ってるわよ」

「……ああ」

「おじゃましましたー!」


 結の明るい声を最後に、私たちは康の実家を出た。


 セミが鳴いて陽炎が揺らめくのどかな風景。


 夏。

 今までと少し違うお盆休みが、終わろうとしていた。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

次回も期間が空くとは思いますが、気長にまっていただけると嬉しいです。

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