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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
28/61

28話 帰省③


「いやー、ところで忍ちゃん、いい加減聞いてもいいかな?」


 山のようにあった料理もだいぶ減り、つきない話に花を咲かせていたそんなとき。

 不意に陽君が覗き込むように私を見た。


「いいけど、何を?」


 私、今日は割とたくさん話してると思うんだけど。

 まだ何か近況で話してないことあったっけ。


 首を傾げると、陽君は一瞬康をチラリ。


「忍ちゃんはさー、ぶっちゃけ、兄ちゃんのことどう思ってんの?」

「え?」

「ごふっ」


 急にどうしたんだろうか。


 思わず聞き返したのと同時、向かい側では康がせき込み、その背中を燈君がバシバシたたく。


「だってさー、話を聞いてる限りじゃ、忍ちゃんと1番よく一緒にいるのは兄ちゃんじゃん。さすがにまだただの幼馴染ってわけじゃないでしょー?」

「ッおい陽! お前酔ってんな! 忍、答えなくていいから!」


 へらッと笑う陽君を康がにらんだ。

 そう言う康も、顔が赤い。


 答えなくてもいいって言われてもなぁ。

 たしかに康はただの幼馴染ってわけじゃないけど。


「康は頼れる幼馴染の友達って感じかな……」


 ぼそっと1人小さな声でつぶやく。


 ふと視線を感じて顔をあげると、おじさんと目が合った。

 若干、哀しげというか、複雑な視線を向けられている。


「……何ですか?」

「……いや」


 おじさんは首を振って、私から視線を外した。


 ……いや、ほんとに何なんだろう。

 じいっとおじさんを見たその時。


「しのぶー! そうくんがおりがみおってくれたー」


 急に視界が赤くなり、何も見えなくなってしまった。


「ほらみてみて! そうくんすっごくじょうずなの!」

「うーん、この距離じゃ近すぎて見えないなー」


 結を膝に乗せ、赤い折り紙で折られた鶴を見せてもらう。


 たしかにまっすぐな折り目にキッチリ折られていてきれいな折り鶴だ。


「しのぶ、しのぶ、このつる、ただのつるじゃないんだよ! ほら!」


 結が折り鶴のしっぽを引っ張ると、鶴の羽がパタパタと動く。


「おおー、すごいね想君。折り目ピッタリだし、羽も動くなんて」

「いや、これ教えてくれたのは忍姉ちゃんだろ」


 結に渡された鶴をパタパタさせながら想君を見ると、彼は苦笑いで結の頭をなでた。


 …………。


「想君ってもしかして、小さい子好き?」


 最初に結に声をかけたのは想君だし、ご飯を食べ始めたときから、ずっと結をかまってくれてるし。


 私の問いかけに、想君は結を優しい瞳で結を見ながらうなずいた。


「俺は兄弟の1番下だから、弟か妹欲しかったんだよね」

「いやあげないよ?」

「そういう話じゃないんだけど」


 「忍姉ちゃんちょっと変わった?」と、想君が笑う。


 変わった……のかな。

 たしかに結と暮らすようになってから、周りの反応とかそういうのからなんとなく、自分が変わった気がしなくもない。

 わからないけど。


「あ、そういえば想君、高校楽しい?」

「唐突!」

「ゆいもねー、ようちえんたのしいんだよー! れいちゃんがね、いじわるするおとこのこやっつけたんだよ!」

「誰だれいちゃん」


 それからしばらく、私と想君は、主に結の幼稚園での話を聞いたり、たまに自分たちの話もしながら、楽しい時間を過ごした。 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

次話もよろしくおねがいします。

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