27話 帰省②
地元に帰ってきました。
「お待たせ」
「遅くなってすみません」
襖を開けて居間に入ると、5つの顔がこちらを向く。
「え!? 忍ちゃん!?」
「ちょっと待って、そのちっちゃい子、誰!?」
「もしかして、ついに結婚した!?」
そのうち3つが特に騒がしい。
どこからどう見ても、母譲りだろう。
「お前らうるさい。違うから。とても社会人とは思えない騒がしさだな」
康がため息をつきながら彼らをにらむ。
「えー、でも兄ちゃんちょっと顔赤くね?」
「うわ、ホントだ。よくそんなんでばれてこなかったよな」
「っていうか、そもそも俺はまだ高校生だから」
「黙れ!」
そう、このやり取りを見てわかるように、彼らは康の弟たちだ。
つまり、全員私の幼馴染でもある。
小さい頃、よく一緒に遊んだけど、それはそれはわんぱくな子供たちで、正直、毎日彼らの面倒を見てる康を、小学生なりに尊敬していた。
私は、いつの間にか私の脚に隠れていた結にこそっと耳打ち。
「康の弟たちだよ。あいさつ、できる?」
「……みんなちょっとだけ、こうににてる」
「ふふ、そうだね」
素直な結の言葉に思わず笑ってしまう。
結はキュッと私の手を握ると、そのまま私を引っ張り康の弟たちに近づいた。
「えと、あの……」
「うおっ、どうした、ちびっ子! っていうか、いやホントにこの子誰の子?」
1番近くにいた次男の陽君とその隣の四男、想君が結の頭をなでながら聞いてくる。
関係ないけど、この兄弟ほんと人との距離感を詰めるの速いよね。
「えっと、私と血はつながってはいないんだけど、うちの子だよ。ちょっと色々あって引き取ることになったの」
「へー。養子ってこと?」
「いや、実はまだ手続きはしてない。預かってる感じかな」
私と陽君が話している横で、想君が結に笑いかける。
「名前、なんていうの?」
「し、しまだゆいです」
「結ちゃんかぁ。何歳?」
「5さい……」
手をパーにして年を表す結の頭を、想君はニコニコしながらなで続けていた。
「ちょっと2人ともずるくね? なんでおれ1人だけが康兄に怒られてんの?」
少し不貞腐れた表情で間に入ってきたのは三男の燈君だ。
久々に会ったけど、3人とも全然変わってないし、結の言う通り、康も含めなんとなくみんな似てる。
「さあさ、喧嘩は後にして、先にご飯食べましょ。料理が冷めちゃうから。ほら、忍ちゃんも結ちゃんも座って座って」
おばさんに促されて、とりあえず用意されていた、康のお父さんの隣の席に座った。
「おじさん、お久しぶりです」
「……ああ」
麦茶を飲んでいたおじさんは私にちらりと目を向けただけだ。
「あら、お父さん、忍ちゃんが来るって聞いたときはあんなに喜んでたのに素直じゃないわねー!」
おばさんが元気よくツッコむ。
おじさんはむせたらしく、ゲホゲホとせき込んだ。
「か、母さん、やめんか」
「あらあらホントのことじゃない。さ、いただきましょ」
「いただきまーす」
おじさんを軽く流したおばさんの声にみんなで手を合わせる。
咳ばらいをしたおじさんも、大皿に盛りつけられていた料理を取り始める。
毎度思うことだけど、この夫婦、ほんとに性格が正反対だよね。にぎやかなおばさんと寡黙なおじさん。
2人ともお互いのそういうところが好きになったっていつの日か惚気られたけど。
「忍」
「はい」
おじさんに呼ばれて顔を向ける。
おじさんは前を向いたまま、ぼそっと一言。
「……よく来たな」
思わずクスッと笑ってしまった。
「今日から数日、お世話になります」
私は深々と頭を下げた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
谷川家全員集合です。
まだまだ続きますが何卒よろしくお願いします。