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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
26/61

26話 帰省①


「あー、やっと着いた……」


 改札を出た私は、ググっと体を伸ばす。

 しばらく電車に乗ってたから、体が少し固まってしまった。


「しのぶ、ここが、しのぶとこうがすんでたところ?」


 結がつないだ私の手を引っ張る。


「そうだよ。ここで私も康も大きくなったの」

「しっかし、昔とあんまり変わらないよなぁ。もうちょっと変化してもいいと思うんだけど」


 答える私の隣で、康は苦笑いだ。


 と、いうわけで、今日からお盆休み。

 私たちは地元へと帰ってきました。


 といっても、私は実家に帰らず、康の実家にお邪魔させていただくんですけども。


「しのぶ、しのぶ、なんかいつもよりすずしいし、きもちいいね!」

「ああ、ほぼ山の中だからね。空気がきれいだし、静かでいいよね」


 結はこれが初めての旅行らしく、家を出たときからずっとソワソワ落ち着かない様子。


「康の家に着いたら、ちゃんとあいさつするんだよ?」

「うん!」


 いい笑顔。

 今日も今日とてかわいいです。


「よし、母さんたちには連絡したし、行くか」


 今の間に電話をしていた康が戻ってくる。


 私たちは、久しぶりに地元の大地を踏んだ。




「あらあらあら! いらっしゃーい! 忍ちゃん、よく来たわね! あっ、この子が結ちゃん!? まぁ、かわいい! 結ちゃんもよく来たわね、疲れたでしょう? アイス買ってきてるからあとで食べていいわよー! あ、あとね、」

「ちょちょちょ、母さんストップ!」


 マシンガンのようにしゃべる母親を、康が止める。


「母さん落ち着いて。忍も結も若干ひいてるから」

「あら、わたしったら。ごめんねぇ」

「……いえ」


 私は少し苦笑いで首を振る。

 玄関が開いた瞬間この連続トーク。

 結は驚いたのか、ポカンと口を開けて固まったままだ。


 私がツンツン肩をつつくと、結はハッとして、ペコリとお辞儀。


「し、しまだゆいです。5さいです。よろしくおねがいします」

「あら、かわいい。康のお母さんでーす。こちらこそよろしくねぇ」


 頭をなでられ、結はくすぐったそうに笑った。


「おばさん、今日から数日お世話になります」

「やだ、お世話になりますなんて、なんだか他人行儀よ。今更なんだし、自分の家だと思ってくつろいでいいからね、忍ちゃん」

「はい。ありがとうございます」


 変わらない、優しい笑顔。

 その笑顔に、私もつられて笑う。


「忍、荷物運んじゃうから、先に上がってくれ」

「あ、ごめん康。私も運ぶよ。どこに行けばいい?」


 康と並んで持ってきた荷物を部屋に運ぶ。


「変わってないだろ、うちの母親」

「うん。でも、なんかちょっと安心」


 クスッと笑うと、康は、もうちょっと落ち着いてくれても、と苦笑いだ。


 部屋に荷物を運びこむと、おばさんが顔を出した。


「康、忍ちゃん、結ちゃん、お昼ご飯できたから一緒に食べましょ。あ、その前にちゃんと手を洗ってきてね。みんな待ってるわよー」


 私たち3人は顔を見合わせた。

 そういえば、さっきはおばさんと話してたから気にならなかったけど、たしかにワイワイと盛り上がっている声が聞こえる。


「……急ごうか。待たせちゃうと悪いし」

「だな。結、ご飯だから、手、洗おうな」

「うん!」


 急ぎ足で洗面所に向かう。

 なんだかもう、すべてが懐かしくて、無意識のうちに笑みがこぼれていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

帰省編、長くなりそうです……!

どうぞお付き合いください。


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