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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
19/61

19話 おでかけ⑤ 家具屋


「……ぶ、しのぶっ」

「!」


 はっと我に返る。

 手をつないだ結が息を切らして私を見上げていた。


「しのぶ、あるくの、はやい」

「あ……ごめん」


 だめだ、ボーっとしてた。

 っていうか、何も考えてなかった。


 康があんなこと言うから……!


『か、かわいいと思うよ』


 思い出しただけで、顔が熱くなる。

 いつもはあんなこと言わないくせに、いつから康は軟派な人間になったんだろう。

 ああいうことは好きな人に言うべきものじゃないのだろうか。


 ……私も私で何考えてるんだろ。なにせ、あんな言葉を家族以外からもらったのは、初めてだから。


 ん? 待てよ、そもそも康は私の家族みたいなものよね。お父さんやお母さんよりも長い時間一緒にいるし。


 ……というか、冷静に考えて、さっきの康の言葉は社交辞令じゃない。あの流れで「似合ってない」って言うほうがどうかしてるわ。ただのお世辞じゃないの。


「しのぶ、こんどはうごかなくなった……」


 結がもう泣きそうな顔で私の手を揺らす。


 ……馬鹿馬鹿しい。結ほったらかして、何考えてんだろ。


「ごめんね、結。ボーっとしちゃってた。もう大丈夫だよ」


 笑顔を向けると、結はほっとしたように笑った。




「ひろーい!」

「結、大声で叫ぶのはやめなさい」


 初めて来たらしい大型の家具屋に、結は大興奮だ。


 目をキラキラ輝かせては、


「しのぶっ ベットふかふか!」

「つくえがいっぱい!」


 と、あっちこっちに動き回っている。


「結、あんまり離れないでね」


 私は私で、結のかわいらしさに注意する口元がゆるむ。


 ……は! ダメだ、しっかりしないと!


「えーと、まずは、タンスとか見に行こうか。買った服、収納する場所がいるからね」

「タンス?」

「うん。で、その次に机と寝具を見に行こう。結はお布団とベット、どっちがいい?」


 その問いかけに、結はキュッと私の手を握り、無邪気ににぱっと笑って見せた。


「おふとん! おふとんだったら、しのぶとならんでねれるでしょ?」

「……っ!」


 ズッキューン!

 と、撃ち抜かれた気がしたけど、なんだ今の。

 かわいすぎかっ!


 私はちょっと震え気味で、結の頭をなでる。

 な、なるほど、これがいわゆる「キュン死しそう」というやつか。


「しのぶ、さむい?」

「寒くないよ。ただ、結がかわいいだけ」

「……? えへへ」


 頭の上にはてなマークとばしつつも、結がてれっと笑う。


 ああ、なんかもう、それだけでいいや。

 初めて会った時、あんなに泣いてた結が、こんなにかわいらしく、うれしそうに笑ってくれるだけで、私はもう、幸せな気がする。


 なんだかちょっと、胸に熱いものがこみ上げてきた。


 大きく息を吸い、笑う。


「さ、結、行こっか」

「うん!」


 結のいい返事。

 やっぱりかわいいなぁ……。


 ……って、ちょっと待って。

 これって、親ばかというやつなのでは?

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

最近は忙しく、全然投稿していませんが、続いています。

気長に待って頂けると幸いです。

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