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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
16/61

16話 おでかけ② 服屋


 「うちの店の入り口の前でやられるのはちょーっと困っちゃうかなぁ」


 そう言って、苦笑しながら私たちを見下ろす女の人。


「え、えっと……」


 ハッと足元を見下ろして、自分の体がドアの邪魔をしていることに気づく。


「あ……! ごめんなさい! 邪魔ですね」


 慌てて腰を上げ、結を抱えて1歩後ろに下がる。


 ガラス戸が開いて、女の人が出てきた。


「ごめんねー。お話の途中に」

「いえ、明らかにこちらが邪魔だったので」


 とっさに答えて、しまった、と口を抑える。


 またそっけない言い方をしてしまった。

 感じ悪いよなぁ……。


 だけど女の人は特に気を悪くした風もなく、ニッと明るく笑いかけてきた。


「あはは、別に邪魔とまでは言ってないよ。あたしもお店にお客さん来なくてヒマだったところに、ちょうど子供の泣き声が聞こえてきて覗いてみただけだし」

「は、はぁ……」


 なんだか、今までに会ったことのない性格の人だなぁ。悪い人ではなさそうだけど。


「おみせってなにやさんー?」


 突然結が女の人を見上げて言った。

 女の人は、ちょっと体をかがめて、「よくぞ聞いてくれました」と。


「うちは服屋だよ。『CLOVER』って名前のね。あたしが店長」

「くろーばー? あのよつばのー?」

「そうそう。みんなが幸せになりますようにってね!」


 見てるこっちが自然と笑っちゃうような明るい笑顔。


 ……ん? 服屋?


「あの」

「ん?」


 女の人……店長さんがこっちを向く。


「なあに?」

「ここって、子供用の服、売ってたりします?」

「うん! 売ってるよ」

「見せてほしいんですけど」

「もちろん! いらっしゃいませ!」


 案内されて、私たちは店の中に入った。




「わぁぁ! かわいいふくいっぱい!」

「ここが子供服のエリア。お母さんとおそろいになれるのもあるよー」


 説明してくれながら、両手に服を持ち、私に見せてくれる。


 服屋、『CLOVER』は小さいけれどきれいなお店だった。というか、かわいらしい雰囲気だ。

 ロッジ風の店内に、たくさんの服が並んでいる。

 しかも、この服、よく見ると……


「同じ服が1つもない……?」


 いや、サイズや色が違うのはあるけど、同じサイズで同じデザイン、同じ色のものは1つもない。


「おっ、よくぞ気づいてくれました! ここの服、全部1からあたしが作ったんだよ!」

「全部!? 1から!? この刺繡もですか!?」


 私は近くにあったワンピースを手に取り、その細かい花の詩集を指さす。


「そうだよ! あたし、こういう手芸が得意でさー。大学卒業したら何になればいいのかわからなくて、それならもういっそ趣味を合わせた仕事をしよーってなったんだよね。頑張ってバイトしてお金貯めて、去年やっとオープンしたんだー」

「へぇー……すごいですね、この量をたった1人でなんて」

「まあね、時間はたくさんあったし……」


 そしてちょっと視線をそらし、


「そ、その……お客さん、全然来なかったし……」


 と、小声でもにょもにょ。


 え、じゃ、今までどうやって生活してきたんだろ。これって聞いてもいいのかな?


「しのぶ! このふくかわいい!」


 キラキラした目で店内を歩き回っていた結が、てててっと私のところにかけてきた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

投稿がかなり不定期になると思いますが、待って頂けると幸いです。

感想や誤字、脱字等あれば是非教えてください。

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