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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
12/61

12話 幼馴染の本音


 昼になって、忍が作ってくれていたチャーハンを食べると、結は速攻で寝てしまった。


 まあ、午前中、トランプに飽きて公園に行き、あれだけ遊びまくれば当然だろう。

 忍に『結は公園で遊ぶことが好きらしいから、することなかったら連れてってあげて』って言われてたけど、あそこまではしゃぐとは思わなかった。


 結構広い公園の遊具を遊びつくし、移動はすべて全力疾走。

 疲れないわけがない。というか、若干俺が疲れた。


 すやすやとよく眠る結の髪をなでながら、ふぅ、と息をつく。


 保育園の子供らもそうだけど、こんな小さな体のどこにあんなエネルギーがあるんだろうか。


 まあ、元気が何よりなんだけどな。




「康、康」


 ゆさゆさと揺さぶられて、重たいまぶたをこじ開ける。

 少しぼやけた視界の中で、忍が俺を覗き込んでいた。


「康、おはよ。って言ってもお昼の3時だけど」


 ……? なんで忍がうちに……


 と、思ったところですべてを思い出す。


 ちがう! ここ、俺ん家じゃない!


 俺は飛び起きて、忍を見た。


「ごめん、俺、寝ちまって……」

「あはは、よく寝てたね」


 うお、忍が笑った……じゃなくて!

 最低だ。子守頼まれてたのに、一緒に寝てしまった。


「忍、ごめん、任されてたのに……」

「大丈夫だよ。この通り、まだ結も寝てるし。むしろ、疲れてるのに任せちゃってごめんね。ありがとう」


 苦笑いで謝る忍に、ぶんぶん首を横に振る。


「あーっと、仕事、終わったのか? トラブルがあったみたいだったけど」

「うん。そっちも大丈夫。誠意をもって謝りに行ったら、許してくれたよ」

「そうか、よかったな」

「ほんと、安心したわ」


 ほっと息をつく忍。


「えと、おつかれ」

「ふふ、ありがと」


 声をかけると、笑顔を向けてくれた。


「そ、それにしても、なんか俺、頼りねぇよなー。忍はちゃんと自分の仕事してんのに、俺は寝ちまうし」


 会話を続けたくて、ポロッとこぼれた本音。


 ……あ、しまった。こんなこと言っても忍が困るだけだ。


 何か他の話題を探さなくては……!


「……そんなことないよ」


 少しの沈黙の後、忍が言った。


 俺は話題を探す思考を止め、忍を見る。


 忍は小さなほほえみを浮かべて、まっすぐに俺を見ていた。


 ドクン、と大きく心臓が鳴る。


「康が頼りないなんて、そんなことないよ。実際、今1番私が頼りにしてるのは康だし、それに、康は今日のこと、すぐにオッケーしてくれたじゃん。せっかくの休みなのにさ。誰にでもできることじゃないと思う」


 あと、と、忍は続ける。


「昔からさ、康だけだったんだよ? 私に毎日話しかけてくれたの。他のみんなは1度私としゃべったら、もう2度と話しかけてこなかったのに。自分でも愛想ないの自覚してるのに、康だけは変わらず話しかけてくれたんだよね。そんな相手が頼りにならないなんて……ありえないから」


 『ま、私にとっては、だけどね』なんて言いながら笑う忍。


 顔が熱くなっていくのがわかった。


「……そっか、サンキュ」

「言っとくけど、お世辞とかじゃないからね?」

「わかってるよ。お前普段こんなにしゃべんねぇだろ」

「うるさいな」


 軽口を言い合いながら、俺は火照った顔を横に向けて隠す。


 ただひたすらにうれしかった。


 ふと、忍を見ると、忍の頬も少し赤くなってる気がした。


「んー……」

「あ、結。ただいま」


 結がもぞもぞと動き、目を覚ます。

 忍が結を覗き込んだ。

 

「しのぶー?」

「うん、帰ってきたよ。結もそろそろ起きようか。夜、寝れなくなっちゃうからね」

「うーん」


 まだ眠そうに目をこする結を忍がくすぐる。

 すると結は笑い声をあげて転がり、若干フラフラしながらも立ち上がった。


「おはよう、結」

「しのぶ、おかえりー」


 ポスン、と忍の胸に結が飛び込む。

 忍はちょっと、いや、結構うれしそう。

 結の頭をニコニコしながらなでている。


「あのねーゆいね、こうとこうえんであそんだんだよー」

「へぇー、楽しかった?」

「うん! こうね、てつぼういっぱいまわれるんだよ!」

「そっかぁ、すごいね!」

「うん!」


 ……照れるな、ちょっと。


「忍、じゃ、俺そろそろ帰るわ」

「……え?」

「え?」


 目を丸くして固まる忍を、俺も目を見開いて見つめ返した。



 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

感想や誤字、脱字等あれば是非教えてください。

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