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きこりの青年、剣を振る。  作者: 神山 湊
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第二話:少女との出会い

 俺が次に目が覚めた時には辺りは暗くなっていた。


「目が覚めましたか?」


 鼓膜を響かせた声に俺は視線を向ける。


「運がいいですね。喉元を突かれたというのに未だ存命です」


 青白い光が俺を包む。

 死者の国にでもいるかのような気分だ。


「くぉごっ」


 声を出そうとしたが、それは上手く形にならなかった。


「あ!待って待って待って……!まだ完治できていません。しばらくじっとしていてください!」


 そい言う女は俺の顔を覗き込んできた。

 薄暗い中でもわかる青くて綺麗な瞳は重厚な二重の中に収まっていた。

 美しい金髪は高貴な印象を与えるが、身に待とうローブはボロボロで古びている。

 細すぎない骨格に綺麗な肉付きが加わって、美しく存在する。

 それからしばらく横になって青白い光に包まれた。


「……よし、そろそそ喋れると思いますよ」


 俺は体を起こして喉元に手をやる。

 傷口は塞がり触った感じだと後がわからない。

 俺は喉元から手を離し、女性の方へと顔を向けた。


「……あんたは、何もんだ」


 刹那の沈黙を挟んだ彼女は薄い唇を動かした。


「……通りすがりの治癒術師、だと思っててください」


 意味ありげな言い方をした彼女だったが、俺はそれ以上彼女を問い詰めることはしなかった。


「助かった。本当にありがとう」


 俺はあぐらをかいたまま頭を下げる。


「いいのいいの。気にしないでください。こんなのよくあることだから」


 俺はよくあることなのかと疑問に思ったが、それを問いただすことはしなかった。


「……そ、そうだっ!!ロバートさんは!!!」

「彼なら大丈夫ですよ。落ち着いてください」


 ゆっくりと俺を宥めた彼女は視線でロバートさんの方へ誘導した。


「彼はマルガルグルダの毒に犯されてるんです!」

「はい。そうみたいですね」


 あまりに落ち着いて口調の彼女に俺は少しばかり冷静さを失う。


「み、みたいですねって……。処置は何か施してくれましたか?!」

「落ち着いてください。彼なら大丈夫。毒は彼の血液ごと全部取り除いたので問題ないはずですよ」

「ちょ、ちょっと待ってください血液ごとってどう言う……?」

「だから言葉の通りです。血液ごと毒は抜いた。肉体に浸透してる毒も少しばかりありますけど——」


 俺は彼女の胸ぐらを掴んで殴りかかった。

 血液を全部抜いたってことは、ロバートさんは死んでいると言うことになるのではないか、そんなことからくる怒りだった。

 今まででここまで怒りがこみ上げたのは両親が盗賊に殺されたと知った時くらいだろう。

 俺は振り上げた拳を彼女に向かって放った。


「きゃぁ!!」


 しかし、攻撃を受けたのは彼女ではなく、俺の方だった。

 拳は宙で何かに衝突するような感覚を得て、その直後俺の体は背後へと飛んだ。


「くっは!!」


 背中にモロに直撃した幹は音を立てて倒れる。

 強い衝撃を受けたことで俺は呼吸ができない。


「ご、ごめんなさい!!!」


 彼女はひどく慌てた様子で俺の元に近づいてきた。


「命に別状はない、ですか?大丈夫?」


 ベタベタと放心状態の俺の体を触って大きな外傷がないか調べる。


「はぁあああ」


 大きく息を吸い込んで、体の痛みを確認する。


「大丈夫だ……ごっほっ。ちょっと、背中が痛いくらいだから……はぁ、はぁ」

「本当にごめんなさい」


 申し訳なさそうに頭を下げる彼女に俺も謝罪をする。


「いや、俺も悪かった。いきなり殴りかかろうとしたんだ。許してくれ」


 俺は頭を下げて土下座する彼女の肩を持って体を起こさせた。


「でも、きちんと説明してくれ。血液全部取り除いたって一体どういうことなんだ」

「本当にごめんなさい」


 過剰に謝罪をしてくる彼女を俺はただただ見つめる。


「俺は大丈夫だから」


 今にも泣き出しそうな彼女を俺は慰める。

 しばらくして彼女はゆっくりと説明を始めた。


「傷口は小さかったです」


 ぶつぶつと呟くように彼女は続ける。


「でも、毒自体は血液に溶け込んで完全に解毒することは不可能だと思いました。だから、時間をかけて体の血液を新しいものに交換しました」

「そんなことができるのか?」


 そんな治療の仕方を今まで聞いたことがない。

 新しい血を体に入れる?そんなことができるなら、今まで出血多量で死んでいった人たちはもっと助けかったのではないだろうか。


「わ、私なら……できます」


 涙を含んだ瞳は炊き上がる焚火の火を取り込んで力強く訴えた。


「私なら、ってどういうことだ……?他の人にはできないってことになるよな?」


 若干痛む背中をいたわりながら俺は彼女に質問した。


「特殊固有魔法です」

「特殊固有魔法?」


 初めて聞く名前だった。


「他人には真似のできない、個人が持つ特殊な魔法……」


 彼女は言葉を詰まらせながではあるが、その続きを言った。


「私の場合は……物質再生が……できます」


 それだけではイマイチ想像ができなかった。


「例えば、肉体でいうと細胞の複製ができるんです」

「細胞の複製……」


 俺は疑問に思ったその部分を復唱した。


「はい。先ほどマルクさんにやったのと同じようなことです」


 俺は喉元に手を持って行く。


「その人の細胞情報を私の中に取り込んで解読。そして同じものを精霊に転写して作成。そして最後に移植することで再生が完了します」

「そんなことができるのか……」


 俺は感心して大きく頷いた。

 しかし、


「ん?あれ、俺の名前、なんで知ってるの?」

「あわわわ!ごめんなさい!細胞情報を取り込む過程で、その人物の細胞記憶を読み取ってしまうんです……!」


 慌てて両手を振る彼女は顔を赤くして目線が定まらない。


「だから、そのごめんなさい!!!」

「全てってことは……」

「はい。ここで倒れていた理由もわかっています」

「そっか……」


俺はここにたどり着いた経緯を思い出し、涙腺が緩むのを感じた。


「……みんな死んじゃったんだよな。俺たちを助けるために……」


 頬を冷たい滴が垂れて行く。


「……何もできなかった。何か手伝えたかもしれないのに……何もできなかった!!」


 涙は大粒となってさらに溢れてくる。


「今まで、よくしてくれた人たちなのに…俺、逃げることしかできずに……ッ」

「そんなことないと思います!!!!」


 彼女は力強く言った。


「全然そんなことないと思います!!」

「……いや、だって——」

「そんなことないです!!!」


 彼女はさらに力強くそう言った。


「だって皆さんの願い、きちんと叶えたじゃないですか」


 彼女はロバートさんを指差した。


「皆さんはロバートさんを助けるために、あなたを信じて戦ったんです。何もできなかったなんて、そんなわけない!!」


 そして彼女は俺の双眼をまっすぐ見つめて——


「皆さんの願いを叶えたのはあなたです。一番大きな恩返しができたんじゃないですか?」

「それでも……!!」

「マルクさん!!今こうして生きていることを感謝しましょう?」


彼女は大きな瞳をさらに広げ俺の肩を揺すった。


「亡くなった人はは消えて無くなります。でも、その人は誰かの心の中で残り続けます。マルクさんは助けてもらった人を忘れないようにしてあげる。今、あなたが彼らのためにできることはそれだけです。彼らもきっとあなたのことを恨んでなんかいないはずです」


 彼女の言葉で少しだけ心が苦しくなった。無力な自分を殴り飛ばしてしまいたい。しかし、同時に少しだけ気持ちが楽になった気もする。

 俺は首を折ってだらしなく泣き喚く。

 どうしようもない怒りを泣くことで発散させる。

 彼女はそっと俺に抱きついた。

 初めてあった男にそこまで優しくできるのは、俺の記憶を知っているからだろうか。それとも彼女が極端に優しいからだろうか。

 どっちでもいい。

 彼女の優しさが俺の心を支えてくれてたことには変わりない。

 彼女の優しさに甘えて俺も彼女に抱きついた。

 柔らかく、暖かい。俺の疲労仕切った心を癒してくれるようだ。

 これもある種の魔法なのかもしれないな。

 次回:翌日18時投稿


 お忙しい中、私の作品に目を通してくださり、ありがとうございます。


 私自身、まだまだ勉強中なため、皆様のレビューが成長の糧になります。

 お手を煩わせて申し訳ありませんが、『星をつけて評価』よろしくお願いします。


 最後に、読んでくださった皆様に感謝を。ありがとう!

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