四月十七日 インターホンの翌日
四月十七日
昨日のこと、みおに聞いてきたよ。お兄さんとは電話がつながって、無事を確認できたみたい。よかった。
でも、気になる話も聞いた。お兄さん、大学の人間関係で悩んでいるらしい。仲の良い友人をうまく作れていないみたい。慣れない一人暮らしと知り合いのいない環境。想像するだけでも大変だってことはわかる。そのせいでホームシックになってたのかな。今度家族で旅行ついでにお兄さんの様子を見に行こうって話をしてるらしい。
みおが言った通り、魂?だけが帰ってきてたってことなのかな。それならみおや家族が怖い目にあうことはないよね。
結局、みおの言った通りだったてことだね。霊が見えないみおの思った通り。霊が見えてもあたしはあたふたしただけだったなぁ。
でも、そのことをみおに言うと、「きりこのおかげだよ」って言ってくれた。「きりこが兄貴が来てることを教えてくれたから、今回のことに気づくことができた」って。そう言われるとうれしい。みおの力になれてよかったって思える。
あたしの霊感が誰かの役に立ったのはこれが初めて。霊が見えることを誰かに話すのは怖かったし、恥ずかしかった。
どうして、あたしは見えるんだろう?血筋とか?お父さんはそんな感じじゃなさそうだし、お母さんの影響かな。そういえば、あたしお母さんの方の親戚のことよく知らないなぁ。お父さんの方の親戚には何回か会ったことはあるけど。
今日もあたしの霊感は絶好調だった。玄関開けると同時にあたしそっくりの幽霊がいつもの路地にいた。いつも通りこっちを見てた。そんなに自分と同じ顔した、生きている人間が珍しい?まあ、そうよね。あたしも、同じ顔した幽霊は珍しいと思うわ。
慣れてるせいか、やっぱり同じ顔の幽霊は怖くない。みおの家では心臓バクバクだったのに。
学校では、先週に引き続き大川くんの左肩に乗ってる手が気になった。先週より大きくなってない?金曜までは人の手ほどの大きさだったけど、今日は猫が肩に乗ってるように見えたよ。本当に猫だったらいいけど、よくみると親指が二本もある不気味な「手」だもんね。
つい、聞いちゃった。肩の具合。そしたら、悪化してるって。今週から練習には出ないで、安静にしてるそう。大川くん、ちょっと不機嫌そうだった。部活に参加できないのはつらいよね?でも、ケガだから仕方ないよ。仕方ない、のかな?
大川くんに「手」のことを伝えるのは正しいこと?
「大川くん、左肩に不気味な幽霊の手が乗ってるよ。それが痛みの原因じゃない?」
うーん、これじゃあたしが白い目で見られるだけね。絶対に信じてもらえない。信じてもらえても、肩の痛みが良くなるわけじゃないし。「手」のことを伝えても、それをどうすることもできないんじゃ、解決にならない。
お寺でお祓いするよう勧めてみる?いや、怪しいよ。変な宗教入ってると思われる。
ダメだ。いい解決方法が思いつかない。思い切って左肩に塩でもかけてみる?ふふ、それこそ頭がおかしくなったと思われそう。
でも、「手」が見えるのは正直気分が悪い。だから、大川くんのためじゃなくて、自分のためにできることはないかな?
「手」を祓うことができればそれが一番いいけど、現状が難しい。お祓いするとかじゃなくて、どうして大川くんに「手」が憑りついているのか調べようと思う。気が引けるけど、本人には内緒で。言ってもキモがられるだけだしね。
「手」をどうにかして、大川くんのケガを治すことはできない。でも、調べるくらいなら今のあたしにもできそう。人助けじゃない。あたしの好奇心を満足させるための探偵ごっこ。
まずは周りの人に大川くんのこと聞いてみようかな。