四月十三日 「手」
四月十三日
新年度始まってからの学校はいつも通り。いつも通りって言うのは、つまり平和な日常だったということで、退屈だったということ。日記を書き始めてからだけど、日記に何を書こうか考えてる自分がいる。おもしろい事件起こらないかなぁ、なんて。
でも、そんなにホイホイと事件は起こることはなくて、いつも通りの日々の繰り返し。だから、あたしは昔の心霊体験を書いてしまうのかな。
でも、こういう退屈な日常が大切だということは、テストが近づくと身に染みてわかる。まだ、中間テストは先だけど、きっとテスト前は焦ってるんだろうな。いつものことだけど。だったら、今からコツコツやれって言ってくる自分がいる。
あ、でも今日は事件があった。事件というよりは、異常と言ったほうがいいかな。
下校するときに昇降口でばったり大川君に会っちゃった。ちょっとビックリ。野球部って放課後の清掃サボって、我先に部活に行ってるイメージあったから。
「急いで部活行かなくていいの?」て聞いてみたら、しばらく休んでるんだって。大川君、利き手の左肩を痛めてるらしいの。本人曰く、春休み中の大会で投げ過ぎて痛めて、今は練習に参加できないとのこと。
そう言われたら、なんだか大川君の左肩に違和感を覚えたの。なんだか変な気配。すぐにそれが左肩にあるのはわかった。でも、それの大半の部分は大川君の体で隠れて見えない。それでも何が乗ってるのかは、なんとなくわかった。でも、何が乗ってるのか確かめるために、大川君の背中をそのまま見送った。
「手」だった。手首から先の「手」が大川君の左肩を握ってた。しかも、不思議な「手」。指は五本あって、人の手の形をしていた。でも、指が変。親指が二本あった。小指がなくて、代わりに親指がある「手」。だからそれが右手なのか、左手なのかはわからない。どっちとも言えない「手」。それが肩の痛みの原因なのかな?
大川君に言ったほうがいいのかな?でも、こんなこと言っても信じてくれなさそう。それとなくお祓い薦めてみる?いや、そんなことしたら確実に変な宗教入ってるって思われそう。まともに話せる数少ない友人を失ってしまう。
でも、あたしはお祓いとか、除霊の仕方がわからないからそれしかできないし...うーん、もやもやする。
あの「手」は一体なんなんだろう。霊の「手」なのはたしか。あたしの勝手なイメージだけど、奇形の霊、生前の姿と大きくかけ離れた霊って悪霊が多い気がする。あたしのこと連れ去ろうとした女の霊も身長が異常だったしね。
「手」もそういう悪霊の類なのかな。どこで憑かれたのかわからないけど、「手」の正体がわかったところで、あたしにはどうすることもできない。
うーん、思い切って左肩に塩でもかけてみる?それは最終手段ね。「手」を取り除くことができたとしても、大川君との間には遺恨が残るわ、きっと。誰か相談に乗ってくれる人、いないかなぁ。あまり、周りにこういうオカルトに詳しそうな人いないのよね。明日、それとなく友達に聞いてみようかな。ミオはあたしの霊感知ってるから協力してくれそう。他の友達には怪談の話振ってみよう。
最近はyoutubeとかでも怪談の動画とかたくさんあるし、そういうの好きな人はいるかもしれない。別に怪談の話なら、変な子には見られないはず。