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きりこの怪談日記  作者: 石波
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四月十二日 クラス替え

四月十二日


 昨日は早速書き忘れちゃった。今日みおに「日記帳使ってる?」なんて聞かれて焦った。まだ一日休んだだけ。きちんと書いてるよ。


 新しいクラスになって一週間。基本的には去年一緒のクラスだったミオとアイリと手島さんとからむことが多いかな。帰宅部で部活のつながりがないから、クラス替えあると知らない人が多くなるなー。手島さんはバレー部のつながりがあるから、知り合いが多いみたい。クールなキャラだから意外。心なしか去年より口数が多いような気がする。

 一方であたしは借りてきた猫。人見知りしちゃう。去年もそうだった。クラスメイトと仲良くなるのにあたしは時間がかかる。特に男子。中学のときはそんなに気にならなかったのに、高校になってから変に壁作っちゃう。思春期ってやつ?


 でも、きちんと話せる男子もできたよ。あたしの前の席の大川君。ここ数日いろいろと話しかけてもらってる。さすが野球部のエース。あたしの人見知りの壁を難なく超えてくる。

 うちの野球部は強豪で、部員も多い。そこで三年生押しのけて二年生ながらエースの座にいるらしい。授業中はよく寝てるからあまりすごい人のようには見えないんだけどね。


 なんだかんだ言っても、クラス替えっていいよね。四月、五月の間中は緊張しまくりだけど、ちょっとずつ距離を縮めるのは楽しい。付き合いの長いミオとのコミュニケーションにはない新鮮さ。今年も頑張って気軽に話しかけられる人を増やしていこう。


 クラス替えと言えば、中学の同級生だった奥田君を思い出すなぁ。高校別になって、連絡とってないけど。


 あたしと奥田君が通ってた中学は一学年4クラスで、学年が上がるときにクラス替えがあった。あたしと奥田君は一年のクラスが同じで、最初の席が近かったこともあって、それなりに話をする仲だった。二年生に上がって迎えた始業式の日。そこで新しいクラスの発表があって、あたしと奥田君は別々のクラスになった。

 新しいクラスになってしばらくしてのこと。久しぶりに奥田君と話す機会があった。放課後、教室に残ってたときに声をかけられた。新しいクラスはどう?みたいな当たり障りのない会話してたら、こんなこと言ってきた。


 「小野寺のやつ、どこのクラスになったか知らない?いくら他のクラス探してもいないんだよな」 

 

 あたし、キョトンとしちゃった。いきなり知らない人の名前出されたから。あたしが知らない、奥田君の友達だと思ったから、「どのクラスになったんだろうね?」って適当に返してた。そのとき、新しい学年のクラス表を持ってたこと思い出して、渡してあげたの。「これ見ればわかるよ」って言いながら。

 それで二人して「小野寺君」を探したの。でも、どこにも名前がなかった。二人で何度も確認したけど、「小野寺君」はいなかった。

 あたしの新しいクラスにいた「小野君」と勘違いしているのだと思って、聞いてみたけど首を横に振られた。奥田君曰く、絶対に「小野寺くん」なんだって。「小野寺明人」っていう名前らしい。

 「転校したんじゃない?」って聞いてみた。もしかしたら、春休みの間に転校したのかもしれない。

 「そうかもなぁ。だったら転校すること、言ってくれればいいのに」て言いながら、奥田くんは頭を抱えた。


 「加賀は小野寺から何か聞いてない?」

 頭をあげた奥田くんはあたしの方を向いてそう言った。

 え?て思った。「あたし、小野寺くんとは知り合いじゃないよ」て言ったけど、奥田くんは引き下がらなかった。奥田君の話では、同じ一年二組だったらしい。最初の席が奥田、小野寺、加賀の順で、三人でよく会話してたって。でも、そんな男子の記憶はあたしにはなくて、ちょっと言い合いになった。怖かったのもあったと思う。普段はひょうきんでおバカキャラの奥田くんが怖く見えた。


 そのときはうやむやになって解散。あとで先生に「小野寺君」について聞いてみた。そしたら、やっぱりあたしの学年に「小野寺君」はいないって言われた。

 それから一年経って、三年生のクラス替え。そんなことがあったからクラス表は気にせずにいられなかった。いくら探しても「小野寺君」の名前はなかった。あのときの言い合い以来、あまり喋ってなかった、奥田くんに聞いてみた、「小野寺君」のこと。そしたらキョトンとしてた。一年前のあたしみたいに。奥田君はすっかり「小野寺君」のことは忘れたみたい。


 誰だったんだろう、「小野寺君」。奥田くんとはそれっきりで、疎遠になっちゃった。親が結婚か離婚して苗字が変わった?実は成績悪くて中一で留年して、二年のクラスにはいなかった、とか?うーん、それなら噂とかで流れてきそうだけど、そんなのも全然なかった。結局今でも「小野寺くん」のことはわからずじまい。友達だった奥田くんも中三になったら忘れてた。誰も知らない「小野寺明人」。あなたは誰?幽霊?イマジナリーフレンド?それともあたしの記憶から抜け落ちてるだけ?

 

 こんな風に思い出すと、また気になってくるなぁ。

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