欲望の街ソドム③
ソドムの街を出てから、ウィルは一言も言葉を発すること無く歩き続けていた。
あの時少女のあげた悲鳴がいつまで経っても忘れられない。不思議なもので、思い出すたびにその映像は鮮明になり、「助けて」と叫ぶ声が聞こえるような気さえした。
あの時、何か自分にできたことがあったのではないか。
ウィルは後悔せずにはいられなかった。
「何故あなたが思いつめた顔をしているのですか?」
沈黙に耐えかねたのか、マリは軽くため息をつくと心底不思議そうな顔をして言うのだった。
「お前な、あんな小さい子まであんな目に遭って。あれが当然だって言うのか。あんな光景を見て、お前は何も感じないのか?」
ウィルはマリに詰め寄り、胸倉を掴んだ。
「報い、ですから」
そんなウィルにマリは動じることなくはっきりと言った。
「あの子が、いえ、あの街の者が裁かれたのは今までの行ないの報いです。
ウィル、あなたもあの街の人間を見たでしょう?
汗水垂らして何かを生み出すこともなく、実のないお金に目をくらませ、みだらな行為にふけり、肉欲を満たすことばかりを追い求めた。
あの人たちの一体どこに、生きる価値があるというのでしょう」
その言葉は脳裏に、死人のようにうずくまる若者や、でっぷりと肥え太った神官の姿を蘇らせ、ウィルは何も言えず手を離してしまった。
マリは、ぱっぱと服を払うと、気にした様子もなく前へ前へと進んでいく。
「……でも、あの子は違ったんじゃないか」
ウィルはぽつりとつぶやいたが、その声は誰の耳にも届かないほど小さなものだった。




