商人の街グリド②
2人が案内された宿屋は、それは酷いものだった。
街の中にある門を抜け、明らかにスラム街だと思われる一角にある宿の一室に、2人は押し込まれた。「問題があっては困るから」という理由で、扉の前には2人の兵士が立っている。ウィルは気が休まらず、何を食べたのかさえわからなかったほどだ。
こうなったら早く寝てしまおう。
そう思ったウィルだったが、体を綺麗にするための部屋を用意されることもなく、ただお湯とタオルを無造作に渡される。これにはウィルも開いた口がふさがらなかった。
「じゃ、じゃぁボクは外に出ているから、マリから先にどうぞ」
どきまぎしながら部屋を出るウィル。
「え、別にわざわざ出なくても」そんな恐ろしい台詞を聞いた気がしたが、ウィルは聞こえない振りをして慌てて部屋を出た。
クシュン。
ウィルは何でこんな目にと思いながら、警備の兵士がいる廊下の片隅で一人、急いで体を拭くのだった。
体を拭き終わってしばらくして、もうマリも終わっただろうというタイミングを見計らって、ウィルは部屋をノックした。
しかし返事はない。
代わりに中からは、いつものように祈りの言葉を口ずさむマリの声がした。
「マリ、入るよ」
ウィルが扉を開けると、そこには信じられない光景があった。
マリは手を組み一心不乱に祈りを捧げているように見える。しかしその手首からは血が溢れ、その血は手首から肘、そしてその下にあるワイン瓶へと注がれているのだった。
マリはこちらを一瞥することもなく作業を続けている。もうすでに粗方終わっていたのだろう。そこにはすでに赤黒い色をしたワインが4本できあがっていた。
「あぁウィル、見てしまったんですね」




