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第二十一話「真・学園再生計画」

遅くなりました

 お城にきてからというもの、なんだかんだと色んな事があり滞りがちだったマンガ道。


 でもなんとか平穏というかヒマの多い日々となり、先日キリさんにインクを吸い取れるすげえペンとか新しい定規なんかも作ってもらい。


 紙とかはまだまだこれからだけど、ミルカもコツコツと頑張ってかなり絵が上達している。

 というか既に私の模倣を越え、独自の絵柄を築きつつある。ウチの子ってもしかして天才なんじゃ……


 という訳で、そろそろミルカと本格的にマンガを描こうと思い立った私です。

 次は合作で、学園の生徒さん達に向けたマンガを描きたいな。







 ■ ■ ■


 ミルカを呼び出し、バルコニーでユキちゃんをブラッシングしながら待つ事しばし。

 やってきたミルカと私のお茶を用意してもらい、向かい合って座る。

 私はいつもの師匠モードで、厳かに想いを伝えた。


「ミルカ、あなたは今まで本当によく頑張ってきました。私は知っていますよ、忙しい合間をぬってコツコツと絵を練習していたのを……この前ミルカがうたた寝してた時に気付いたけど、うっすらとペンダコまで出来始めちゃって……ミルカが寝てる間、余りの嬉しさにおねいちゃんはずっとミルカのペンダコをペロペロ舐め続けた程です」

「えっ、お姉様……?」

「モチロン冗談よ」


 あっれー?これアウトー?感動してくれると思ったんだけどな。


「ま、まあそういう訳で、本格的に一本マンガを描いてみたいと思うの!」

「はい!頑張ります!」

「それで前にもちょこっといったけど、せっかくミルカが学園に入るんだしさ、学園生徒向けに何か描きたいなって思ったんだけど、どうかな?」

「なるほどです!同じくらいの年の方々ですし、とてもいいと思います。それでどんな内容の物を?」

「そうね、候補は……」


 巷で人気のある伝記や戦記系もいいけど、やっぱり学園といえば青春物!

 学園×青春=恋愛!学園と青春ラブコメの組み合わせに失敗無し!


「ラ……ラブコメ?ですか?」

「簡単にいうと学園内での生徒同士の恋愛とか、恋心とかそういうのを楽しい感じにしたお話かな~」

「なるほど~?」


 うん。いってて私も思ったけど、私もミルカもまだ恋愛とかって正直いまいちピンと来ないのよね。

 そんなのよりユキちゃんとお昼寝したりミルカとお茶してる方が楽しいし。


 ……それなら私達も楽しいの分かるし、そういう友情とか愛情系がいいかな?


「じゃあこういうのは?貴族の子と平民の子の友情の物語。ほら、なんか貴族側と平民側で争って立っていってたじゃない。だからそういう関係の二人を主人公にしてさ、最初は反発しあうんだけど、何かのきっかけで友情が芽生えて……」

「それですお姉様!ではとある美しい貴族の方がマンガを描いてて、それを平民の方が見つけて……」

「それ私達の事じゃん。逆にしただけじゃん。いやまあそういうのでいんだけど、マンガってのは分からないだろうから……」


 どういった二人にするか、どういう関係にするか、どういうきっかけでで仲良くなって、どういうラストにするか。

 そんな話をあーだこーだと言い合う私達。


 途中で御爺がユキちゃんを撫でながら「最近クロエがあんまし相手してくれんのう……」とかぶつぶついいながらこっちをチラ見してたので、おいでおいでして御爺にも混ざってもらい、御爺の武勇伝や昔話なんかも聞かせてもらいながら設定を練りこんでいった。


 お昼を挟み、簡単な設定画なんかも描きつつ会議という名のお茶会は続いた。

 そしてとうとう三人が「これなら!」というお話のあらすじが決定した。


「やりましたねお姉様……」

「うん……これなら……!」

「ワフン」


 ちなみに御爺は途中で飽きて寝やがったです。

 ミルカ、ユキちゃん、お疲れ様!


 といってもまだ、設定が決まっただけ。

 マンガ自体はこれから描き始める訳で、しかも入学式までには間に合わせたいとなるとスケジュールは結構やばそうだ。

 正式な入学式の日程はまだ決まって無いらしいけど、早めに聞いて調整しなきゃなあ。


「主人公の絵は、このミルカのでいきましょ」

「え!?私のでいいんですか!」

「うん、この可愛さは私にはちょっと出せないよ。ほんとすごいねミルカ」

「あ、ありがとうございます……!」


 ミルカの上達は本当に早いのだ。

 でも私もまだまだ負けてはいられない。

 師匠ヅラし続ける為にも!


「クロエ様」

「ん?どしたのミトさん」

「陛下からの手紙が届いております」

「手紙?」


 盛り上がってた所へ水を差す、嬉しくない手紙。


 流石に読まない訳にも行かず、しぶしぶと封を開けた。

 封蝋かっけーとか密かに思ったのはナイショです。

 その手紙には、こんな事が書かれていた。




 ■ ■ ■ ■ ■


 クロエの学園の案、『生徒会』なる物の詳細を聞いた。

 委員会も非常によい案だと言っている。


 生徒会はミルカとクロエに任せる事とする。

 ついてはクロエも学園に入学し、ミルカと共に通うように。


 ■ ■ ■ ■ ■



 計画って、もしかしてシーダ先生にいってたアレ?

 いやそれはいいけど、それよりも……


「御爺!!」

「ふぉっ!?」


 ソファで気持ちよさそうに寝てた御爺は私の声で飛び起きた。

 ごめんね御爺、でもクロエちゃんの非常事態なのです。


「んん、どうしたんじゃクロエ」

「緊急会議です!取りあえずこれ読んで!」


 御爺とミルカにも読んでもらい、一緒に怒ってもらおうと思った。

 問題は、学園に行けと勝手に決められた事だ。

 こんなの横暴です!

 ストライキです!

 賃金の値上げを要求します!


 でもミルカに冷静にツッコミを入れられた。


「お父様は、お姉様が学園に行きたくない事を知らないんじゃないですか?」

「むむ……でもこれを伝えたのはシーダ先生でしょ?私が行きたくないっていってたのは知ってる筈だよ」

「それは……何か行き違いがあったのか、先生が忘れてたとかでしょうか……」

「じゃあ行きませんって返事すれば大丈夫かな」


 考えてみれば、年頃の娘が働きもせずに毎日だらだらやってるのだ。

 親にしてみれば「学校くらい行きなさい」っていうのは当然か。

 でも別に義務教育なんてないし、教師は御爺で十分だ。


 という事で私は「一身上の都合によりNOでございます」と返信の手紙を書く事にした。


 書いてる間、御爺はなんかずっと難しい顔をしていた。

 やっぱり御爺も、学校いけっていいたいのかな……


 そんな視線に気付いたのか、御爺は私に語り掛ける。


「……クロエ、これは考えようじゃぞ?」

「どういう事?」

「お前はマンガを世界に広めたい、マンガの街を作りたいと言っておったじゃろ?」

「……だから我慢して、いう事聞いて学校行けって事?」

「別に親にゴマをすれという訳ではないぞ?クロエは知らんじゃろうが……」


 この国には、大きく分けて王領と貴族領がある。

 その内の王領というのは、実は細かく分かれ、それぞれを王族の誰かが治めているらしい。


 その領主には、ある程度の功績を収めた王族が優先して選ばれるそうだ。

 そして今、丁度ゴーズ・グランタの領地であったゴーズ領が丸ごと王領となった。


「学園の運営を成功に導けば、グランタ領はクロエとミルカに与えられるじゃろう。あいつは最悪じゃったが、その土地は豊かで人口も多い。お前のいうマンガの街にうってつけじゃと思うぞ?」


 学園に行って生徒会をやれば、ご褒美に領地を上げましょう。

 新手の詐欺みたいだ。


「……そんな事で、もらえる訳ないよ」

「いえ、そんな事はありませんお姉様」


 横で静かに聞いていたミルカは、やんわりと否定した。


「御父様は本当に学園には苦労されていると聞いています。もし学園をお姉様の力で成功に導けば、領地をという話は間違いないと思います」

「ほんとにい?」

「なんなら確約を頂けばよろしいじゃないですか」


 なるほど、それで契約書みたいなのにちゃんと書いてもらえば大丈夫そう。

 万が一それが嘘でも、ミルカの通う学園がよくなるならまあそれだけで行く意味もあるし。

 そうなったら落ち着いた頃にバックレて、御爺と一緒に海辺の街でパン屋を開店だ!


 となると……


「ねえねえ、御爺の目から見て、学園って次は成功しそう?」


 前にシーダ先生と話した時は、成功したらいいねーくらいの軽い気持ちだった。

 でも、いざ本気で成功するかどうかを考えたら不安だらけだ。

 本当に私とミルカがいって、なんとか出来る問題なのだろうか。


「ん~そうじゃの……正直、今のままじゃと半々といった感じかのう」

「半々……」

「あの話じゃと、学園内で決まりを作ってみんな守りましょうって話じゃったよな?じゃがそんなんで守るくらいなら、そもそもみんな好き勝手に争ったりしなかったんじゃないかの?」


 決まりごとは守った方がみんなもいいじゃないか。

 お風呂の時間を守らないと、お湯は冷めるのですぞ?


「例えばクロエが家にいる時、儂が決めた決まりをちゃんと守っとったよな?それはなんでじゃ?」

「え、御爺が好きだから」

「お、おう……そう言ってくれるのは嬉しいがのう、単純に儂にゲンコツされるのが怖かったからというのもあるじゃろ?」

「確かに!暴力はよくないよ御爺!暴力についてとことん話し合うべきだよね!」

「話変わっとりゃせん……?」


 この前のお尻ペンペンとか、姉としての尊厳までボコボコだったんだからね!

 まあそれはいつか仕返しするとして、なんで決まりを守るかなんて考えた事なかったな。


 でも確かに気に入らない、めんどくさい決まりがあったとして、それを決めた人の事が好きでも怖くもなければ確かに聞かないかな……?

 そういえば私も、おっさんの決めた「学校に行きなさい」というのを守ろうとしなかった。


「やっぱ引っ越そうか御爺」

「まてまてまて、諦めるの早すぎじゃろ」


 そうはいっても、どうすればいいんだよぅ。

 魔眼を使っていいならいけるかもだけどダメに決まってるし、やれっていわれてもしたくもない。

 でも魔眼を使えたら……魔眼……


 その時ふと、とあるアニメの悲劇のヒロインが頭に浮かんだ。


「……これだ!」

「儂にゲンコツして回れとかいうのはダメじゃぞ……?」

「あ、それもいいね」

「よくないわい」


 いやそれも面白いけど、そうじゃないのだよ御爺。

 ふわっとした感じでしかないけど、いい方法を思いついたっていうかアニメでやってたのだ。いやあアニメってやっぱ素晴らしいよね!いつかこの世界にもアニメを実現したいっす。


「ん~でもちょっと考えただけでもきつそうなんだけどね」

「ふむ?まあ聞かせてみい」

「んっとね~……」


 マンガ会議はいつの間にか、学園再生会議へ移行していた。

 ミルカに感想を聞き、御爺に修正してもらい。

 更に次の日にコステロさんやシーダ先生を呼んでもらい、意見を聞き。


 そしてついに、『真・学園再生計画』は完成した。


 後日、私はおっさんへ手紙を出した。

 内容は、『学園再生の更なる具体案を考えました。これがあれば学園の成功はほぼ間違いないでしょう。成功した暁には私に領地を与えると約束して頂けるならこの案をお見せいたします』という物だ。


 我ながら酷い内容だ。

 成功するかなんて分かる訳もない。

 でも断られたら行かないだけだし、もしOKなら計画の大きな一歩だ。

 だからダメ元で送ってやった。


 返信はすぐに届いた。

 あのおっさん、実はひまなんだろうか。


 内容はざっくりいえば「詳しく聞きたいので直接来い」という物で、ちょっとビビりつつも私はおっさんの待つ執務室へと挑んだ。












 ■ ■ ■


「クロエです」

「入れ」


 重そうな扉を警備員の人に開けてもらい中に入ると、相変わらずしかめっ面のおっさんと、なぜかお母様がいた。


「まずは計画書を見せてみなさい」

「領地をお約束して頂ければお見せします」

「なに……!?」


 スパーンッ!


 いきなりおっさんの頭をしばいたのは、お母様だった。

 驚愕するおっさんと私。


「アナタ、何イキってるの!領地はどっちにしろ何か理由を付けてクロエちゃんとミルカちゃんに与えるって言ってたでしょ!」

「それはまだ内密に……」

「アナタがどうにもならないって言ってた学園をなんとかしようとしてくれてるのよ!まずはありがとうでしょう!!」


 なんだこの展開。

 お母様ってこんな人だったっけ?


「う、うむ……クロエ」

「は、はい」

「今聞いた通り、領地はいずれクロエとミルカが何か功績を上げた時に与えようと思っておった。もし学園を軌道に乗せれてくれればそれは十分すぎる程の功績となる。それは約束しよう」

「ありがとうございます……」

「よかったわね、クロエちゃん!」


 しかめっ面のままのおっさんと、満面の笑みのお母様。

 一体どういうやりとりがあったのか分かんないけど、まあいいか!


「では、これをご覧ください」


 用意していた計画書を渡し、おっさんとお母様に説明。

 すぐに委員会が招集され、そこでも説明させられた。


 それからは怒涛の展開で、なぜか私も委員会に組み込まれて準備に追われる日々が始まった。


 マンガを描く時間は全然なくなちゃったけど、こうなったら学園がはじまってからゆっくり描けばいいか、という事になった。


 そしてあっというまに時は過ぎ。

 忘れかけていた、私のお披露目会がやってきた。


 そしてそこが、学園計画の発表の場となった。




明日は13時頃に投稿予定です

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